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2011年10月14日

ミッション・トゥ・マーズ(2000)

- 学芸会を連想 -

火星探査に望むクルー達がパーティーを開いている。夫婦で乗り込む者、妻を失って残る者、さまざま。そして実際の火星探検。探査機は、不思議な構造物を発見するが、直後に事故が発生・・・

・・・良い話だったが、感動はしなかった。

出演者のメンツは最高。いずれも演技派として名高い。監督の名声も確固たるもの。CGの出来も悪くはない。テーマには友情、愛情、責任感、冒険心が盛り込まれ、こりゃあ大ヒット間違いなしってとこか。

でも、大ヒットではなかったようだ。この作品は、ビデオを手に取るまで知らなかった。2000年頃は病院勤務や子育てで体力の限界に近いくらいきつかったので、広告に気づかなかっただけか?テーマや筋書きは最高だったと思うが・・・

2001年宇宙の旅をイメージしていたように思う。もっと解りやすく、もっとドラマを持ち込んだらという意気込みのようなものを感じた。

監督については、まず人選を勘違いしていたのかもしれない。娯楽に徹して、ソツのないスピルバーグ監督に依頼するか、意表をついた作品を撮るリドリー・スコットに依頼するか、空前のヒットを狙ってキャメロン監督に依頼するか?しかし予算がどうなるか・・・悩むところ。

この映画は、セリフが浮いている印象。舞台で使うような話し方、セリフをCGの世界でやっていて、明らかに場違い。演出と演技がかみ合っていない。監督の作品は、思い起こしてみれば無言で恐怖が忍び寄るシーンは得意だったが、危機に瀕した人達が議論し、協力して戦うシーンもそうかというと、そうとは限らない。学芸会のような映画になっていた。

この作品は子供には良いかもしれない。歯が浮くようなセリフもあるので、大人には向かない。

CGの技術は素晴らしい。この作品の頃に開発されたらしい、微細な粒子が渦を巻いて迫ってくる映像は、どこかのプログラマーがスーパーコンピューターを使って開発したらしい。よく出来ていた。

無重力でダンスするシーンも美しい。コンピュータ制御で人を回転させるだけの撮影らしいが、フワフワ浮いているようにしか見えない。

砂場に足跡が残り、そのシーンがそのまま月探検から火星の足跡を連想させるというシーンの流れも良いアイディア。

スイッチを押そうとする瞬間に事故が起こる、そのタイミングと血が空間を漂う描写も素晴らしかった。

妻に引き返させるために夫がとる行動も、美しく怖い話。でも、顔が見えるくらいの距離なら、普通は助けに行くだろうって。実際には眼にも止まらない、会話すらできないほどの早さで全てが決してしまうはず。ドラマ自体が嘘っぽくなっていけない。

宇宙船から船外に出てやる作業は、学芸会風。皆が真面目にやっているのだが、リアルさには欠けている。煙などを使って、ぼやけた視界の中で作業するような、細かい演出が足りなかったのかも。

船に穴が開いた状態で大気圏に突入するって、ありえる話なんだろうか?大気の濃度や厚さにもよるとは思うが、火星にも結構な大気があるはずだから、弱い箇所があれば即、爆発すると思う。船を乗り換えない限り、突入は無理。リアルではなかった。

火星にある構造物の造形は良かった。人工的で美しく、芸術的なセンスを感じた。

優れたアイディアと技術があったのに、どうして傑作になっていないのだろうか?むしろ若手の血気盛んな役者達に演じさせたほうが、リアルさが増したのかも知れない。脚本にも徹底した怖さの演出、科学的な検証などが必要だったのかも知れない。

才能が充分に統合されないと、いかに優れた技術やアイディアも不完全な結論に陥るという見本かもしれない。

(日本の科学技術について)

原発の管理については、才能が統合されると予想する。信じる。

今回の事故で問題点が浮き彫りになったので、今後さすがに数段階は進んだ対応が採られると思う。事故の予防に関しては何も出来なかったが、同じような事故を繰り返す可能性は低いだろう。

日本の社会は基本的に保守的だから、新しいことよりも既に明らかなことを、やや遅れ気味に、しかし高度に対処することが多い。日本の技術は、問題点が明らかになった後で本領を発揮してきた伝統、実績がある。事前に対処する考え方はない。

事前に危機を管理するという考え方は、外国から導入された理屈。まだ価値を認めてもらっているとは言えない。お役所仕事で、事件が起こってから規制を設けて、妙な行為ができないようにする、そんな対処はするだろう。事前にやれば?という私の感覚は少数派の意見に過ぎない。

太平洋戦争の後、急激な経済成長を遂げたのは、戦争で物量、戦略の面で圧倒されたので、産業を大事にして本来の国力を上げる努力が必要と、意見が一致したからではないか。事前に充分分析されていたわけではない。

公害が目立って、色んな地域でひずみが明らかになると、排水や排ガスの規制を設けて、都市部でもきれいな川が見られるようになった。事前に排水に注意するような配慮は持っていなかったが、規制となると仕方ないので、ほとんどの業者が従ったようだ。この場合は学者や役人は本当に役立った。最初から公害の予防もしていたら、もっと良かったんだが・・・

車の安全性が問題になった時期があった。日本車は壊れやすく、ベンツのクラッシャブル構造には差をつけられた時期もあった。NHKで大きく取り上げられて、随分遅れているんだなあと憤ったことがあった。でも直ぐに改善し、今や逆に日本車のほうが構造的に優れているらしきものも多い。問題になる前の発想はなかったが、技術で乗り越えた。

石油ショックは本当に大きな危機だった。石油のない日本が経済的に埋没してもおかしくない状況だったが、たまたま開発途上国に今ほどの活力がなかったことや、もともと省エネ精神があったことから乗り越えることができた。時期が違ってショックが今起こっていたなら、深刻さは違っていたかも知れない。

資本の考えも関係する。資金を投与するのは無意味と考えたら、もう日本には誰も投資しない。技術力や、安定した貯蓄、あくなき労働意欲などが評価されて、金が動く土壌も必要だった。その面で、よき投資先だったから、何事もなせた面はある。

会社のCEOなどが巨額の利益を得ようとせず、会社や国家が対処しようとあがく姿勢が、かえって危機において安定した力を発揮できた歴史があるから、昨今の金融不安においては日本円に資金が流入する原因にもなっているようだ。そもそも貯蓄、外貨保有資産は安定感につながる。

もしかすると、原発の安全性を徹底的に高め、逆にこの分野で世界をリードできるかも知れない。今でも地震国特有の技術があるはずだが、さらに完璧を目指し、テロ攻撃や想定外の事態でも対処できる技術は日本にしかないという時代が来るかも知れない。事故を起こした国だが、逆転のきっかけになる可能性はある。

良いか悪いかはともかく、原発建設が日本の基幹産業になるかも。技術力で、危機をチャンスに変えるかも。期待できると思う。

 

 

 

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