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2011年6月 8日

明日への遺言(2007)

- 報復と処罰の違い -

太平洋戦争が終結し、米軍兵士を処刑した岡田司令官は戦犯として拘束される。裁判では米軍検察官から厳しく攻撃されるが、岡田は「法戦」と名を付けた戦いを展開する・・・

・・・岡田資氏のことは全く知らなかったが、藤田まこと主演という意外なキャスティングで注目されたので、そのうち見てみたいと思っていた。普通なら仲代達也主演で最初から決まっているような役柄であるが、藤田まことの演技も非常に渋い。

藤田まことといえば、子供の頃、お昼のお笑い番組に出ていた時代や、必殺仕事人のしょぼくれたサラリーマン武士のイメージが強いが、最近は「はぐれ刑事」シリーズの主人公の役柄で固定されていた。この映画の場合も、刑事と似た渋い雰囲気。

ストーリーは、おおむね事実に基づいているらしい。

自分の罪を軽減しようとせず、真っ向から敵の不法性を訴えるのは、誰にでもできるものではない。私が彼の立場なら、当時の日本の軍律から言って正当だったという論点しか考えないだろう。敗者たる自分が勝者たる相手の不当性を訴えるのは、どう考えても勝算が薄い。情けにすがるのが普通。

もしくは、同僚との連帯責任に持ち込もうとする。上官から指示されていた、または部下の進言を止めると自分の身が危うかったなどの言い訳が直ぐに思い浮かぶ。バカ正直に事実を述べ、客観的な態度で自分の責任を認めるなど、普通の人間にはできない。何といっても生死がかかっているのだから。

報復という言い方なら終身刑も望める、処罰という言い方なら死刑確定。そう言われたらどうするだろうか?「処罰であり、同時に報復であった。」などと、苦しい理屈を述べるのでは?私には両者の違いがよく解らないのだが。

米軍兵士は報復を許されていたというのが本当でも、「真珠湾の報復で原爆を落としました。」「報復に婦女子を爆撃で殺しました。」ってな理屈が成立するのはおかしい。戦闘の場で、独自の判断で殺しあうのに、報復も処罰もたいした違いはないように思う。

周りで岡田資のような人物には、あまり出会わない。本当にバカ正直な人間は多いが、知性と意志の強さと、揺るぎなき覚悟ができる人物はいない。戦時中に死滅してしまったのかも。私も揺るぎっぱなしの覚悟しか持てない始末。

戦犯から生き残った人物は多いが、姑息な手段を使った者もいたはず。そのまま諜報機関の手先になって、そのために有力者になりえた人物も多かったのかも。連合国側からすれば手先になる人物が絶対に必要。皆処罰してしまったら、自国の勢力を自らそぐことになる。

岡田資は強情だからスパイの対象外と認定し、転向しそうな人物に絞って交渉があったのでは?裏切ったら、お前の過去をばらすぞってな脅しは効く。なかったとしたら、その国の諜報部は無能と言える。絶対にやったはず。

国際法、軍律のことを知らないので、本当にどう判定すべきかは解らない。捕虜として収監するのが利口な対処法だろうが、明らかに大量殺人を犯した無法者なのに、生かしておけば戦況から考えて無罪放免にすることに他ならない・・・万単位の被災者に対する責任逃れでは?そんな考え方もありうる。

そもそも最高の重大犯罪である無差別爆撃の最中に、合法もへったくれもないというのが心情。

映画の描き方に好感を持った。今までの同様の作品なら、英雄みたいな軍人が堂々と敵を論破するシーンが出てきて、観ていて恥ずかしくなるはずだが、この作品は実に淡々としている。主人公が、どちらかと言えば老いぼれた退役寸前の人物で、とても偉い人に見えない点が良かったのか。

監督の作品は、どれも静かで風采の上がらない人物が主人公のことが多い。敵を圧倒するヒーロー物語ではなく、滅び行く種族~精神的なこだわりのようなものが中心の描き方。この種の映画では、通常は嫌われる作風だった。

家族が大仰に泣いていなかったのも良かった。今までの作品なら、泣き崩れる人ばかりだった。ただし、この作品は家族で観るべきとは思えない。大人限定。テーマから考えて、恋人と観るのにも不適と思う。

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