映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主

  • 乙女座 AB型 どの占いでも最悪の運勢 内科クリニックやってます。

Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« 宇宙ショーへようこそ(2010) | トップページ | ウエスタン(1968) »

2011年6月18日

レディ・キラーズ(2004)

監督 コーエン兄弟

南部の町に一人ぐらしをしている黒人の老女の家に、自称”大学教授”の男が間借りし、地下室で楽器を練習するという。しかし実は、この男は犯罪計画を進めていたのだ・・・

・・・完成度の高い作品。独特のブッラックユーモアとゆったりしたテンポ、怖ろしい殺意などがコーエン兄弟の作品に共通する特徴だが、この作品は南部の町を舞台にして、黒人の老女が主演的な立場で雰囲気を決定している関係で、特にテンポが素晴らしい。老女の歩みと同様、あくせくしていない点がいい。

タイトルから考えれば、当然老女は殺されることになる。話の流れからも、犯罪者達の結論は殺すしかないという結果だった。誰がどうやって殺すかが問題だが・・・というわけで、怖ろしい殺人が起こりそうで、なかなかはかどらない点が笑える。

この作品は古い英国映画のリメイクらしい。確かに舞台劇の匂いもする。原案、脚本が良いのだろう。どうせなら舞台の雰囲気をそのままに、仰々しいほど過剰で怪しい演出に徹しても良かったかも。

映画らしい映画と思う。凄いアクションでノンストップの興奮を味わうのも映画だが、テレビでは味わえないような丁寧な感触、ゆったりしたテンポで、よく練った流れのドラマが進むと、贅沢な時間を過ごした気になる。

黒人老女役をどこから見つけてきたのか感心した。足がO脚で、ゆっくりと町を歩いて保安官に申し立てる姿、そのゆったりした動作が素晴らしい。演技としてはオーバーなんだが、笑った時の顔がいかにも黒人の老女らしく、観客に好感を持たれる。

夫役の写真も効果的。オリジナルでも使われていたのかも。

教会のゴスペルのシーンは本来の筋書きから言えば省略してもいいくらいだが、雰囲気を出すためには実に効果的。教会以外のシーンのBGMとしても使われて、舞台の臨場感、霊的なイメージにつながっていた。

死体やゴミを運ぶ運搬船も実に効果的。ゆっくりしたスピード、その行く手には埋め立てるのであろう島が見えて、何か不気味な墓場のような雰囲気がする。

主人公と老女が話す詩の話も、やけに長く、くどく、くだらないウンチクと気取った話し方など、キャラクターの表現には有効だった。話の展開に関係ない場面がやたら多いのだが、それらが計算された通りの効果につながる仕組みが良かった。

トム・ハンクスのキャラクターと主人公は合っていなかったと思う。トム・ハンクスはボーッとした人間、純情、真面目な人柄を演じてスターになった役者である。偏執狂のような犯罪者を演じるなら、古いタイプの演じ方をする悪役が得意な役者が望ましい。殺意のこもった怖い顔を、笑顔で無理に隠しながら、礼儀正しく悪事を働くタイプの演じ方が望まれた。

でも、時々吹き出しながら笑う姿などは、いかにも腹にいちもつ持ちながら、慇懃に話している人をうまく演じていた。

犯罪者仲間のキャラクターは今ひとつの印象。体力を買って雇ったフットボーラーは、ボンヤリしすぎて不自然な印象。ボンヤリした人間は、ちゃんとしているように見せかける努力をすることが多い。一見すると頼りになりそうで返事は良いが、実際にやることはトンマという、その例でキャラクターを表現したほうが笑える。フットボールの試合のシーン等は不要で、無効。

同じく、IBSの持病を持つ男も、コマーシャル撮影現場で何をやっていたかなどは不要。犯罪計画の場面に突然現れて良いから、その場で表現させるべきだ。

東洋系の男も、自分の店で何をしたか等は意味が薄かった。会話や現場でのやり取りで表現させたほうがいい。地下室の穴倉で何をやるかを観客に見せて、舞台劇の雰囲気を保ったほうが観客の注意を引けると思う。

老女が少しは怖がってもよくないだろうか?スヤスヤ寝るのは不自然。殺されないように手を打ち、互いに騙しあいになるのが自然な展開。甘く見ていた犯罪者達が反撃されるという展開のほうが、むしろ自然だと思う。

犯罪がバレても家に留まることも不自然。不自然さが重要ではない作品と言っても、何か工夫をすべきだったのでは?

この作品は子供でも観れるかも。ただし犯罪者達の言葉は汚いので、好ましくはないと思う。恋人と観るのには最高かも。なかには気味悪がってしまう人もいるかも知れないが、ブラックユーモアが通じる人ならOK。

 

 

« 宇宙ショーへようこそ(2010) | トップページ | ウエスタン(1968) »