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2011年6月20日

ウエスタン(1968)

- 焦点が違うのでは?-

駅に降り立つ人物を待ち受ける3人組。やがて列車は通り過ぎたが、誰も降りる客はいなかった。ところが・・・

・・・から始まるマカロニウエスタン。列車を待つ時間の長さに呆れる。でも、それが良い味になっている。格好付けた演出、マトリックスを連想する長いマント、ハーモニカなどの小道具。いかにも古いイメージが漂うが、それが格好良い。

ハエが顔にとまって、それを息で掃おうとするだけで数分間もつぶしている。この男がどんな人間か解るし、当然彼が狙う人間はヒーローだろうと予想がつき、何か期待感につながる。

現れた男は潰れたような顔で、知らない観客が観たら悪役かヒーローか判断に困るというのも面白い。今の若い観客はブロンソンを知らないのでは?

その関係で、この作品は観客の年齢によって感じ方も違うかも。家族と見るような映画ではないが、恋人と観るのは結構面白いかも。

Photo  

ブロンソンのような俳優が、そもそも俳優になろうと考え、しかも主演してヒーローになり、美しい女優と恋仲になるなんてのが信じられない奇跡だった。クラウディア・カルディナーレのような超お色気ねえちゃんは、潰れた顔のブロンソンなど鼻にもかけないと思っていたが、ちゃんと会話をしていた。

カルディナーレの化粧も凄い。まさか当時の西部で、あのような睫毛をつけた女性はいなかったと想像するが、いかがだろうか?上のような水着姿にならなかったのは確実だが・・・

ヘンリー・フォンダが悪役で登場している。とことん悪い。ここまで悪役なのに、スターなのが面白い。ヒーローとしてもよく主演しているから、タフなイメージが共通していれば観客は理解したということだろう。当時63歳のはずだが、動きは悪くない。軽い拳銃を使っていたのか?

ロケ地にはモニュメントバレーが登場していたから、アメリカで撮影されたはず。映像は美しく、セットには相当な金がかかっていた様子で、線路を引く工事の映像なども本物としか思えないほどリアル。

68年頃は既に映画業界は発展の時期を過ぎてテレビに地位を奪われつつあった時代だと思う。西部劇は特にそうだろう。監督が世界的に人気なのと、ヘンリー・フォンダの威光などもあって、たまたま資金が潤沢だったのかもしれない。

セットがリアルだったので、映画も大作という感じがにじみ出ている。そこにマカロニ風の演出。やや場違いで、焦点がぼやける弊害があったかもしれない。

過ぎ去っていく栄光の日々という寂寥感、自分が鉄道のために暗躍しているんだが、鉄道が引かれて町が発展していったら、たぶん真っ先に用済みで居場所がなくなるだろうという認識、そんなものがセリフからもにじんでいた。

道路が新しくできると、土地を売った農家が大きな屋敷をそばに建てることが多い。場違いなほどの豪邸で、たぶん大金をそのまま相続させると税金で取られるから、それくらいなら家に金をかけようという判断があるからと思う。でも家はやがて古ぼけてしまう。常に補修をしないと幽霊屋敷みたいな豪邸が残るだけ。子供に仕事先がないと、結局は家族が町に移転して、古い屋敷は住む人もいないままになる。そんな家は多い。

あの屋敷と、暗躍するガンマンには共通するものがある。最も目立って誰にも負けないような時期は、既に衰退の域に足を踏み入れているのだろう。映画もポイントを変えて、いかにヘンリー・フォンダが大暴れし、悪の限りをつくし、裏切りにも耐えて生き残り、最後に悲惨な終わり方をするかに徹すれば良かったかも。

友情、愛情といった要素がない。復讐、金への執着などの要素が人物の行動を決めている。そのへんも、やや品格を下げる点かも知れない。荒野で激しい戦いを繰り広げても、その奥底にはしっかりした愛情があったとなれば心に残る物語になるはずだが、なぜそこを狙わなかったのか?

愛情や友情の要素があって、寂寥感を感じるストーリーなら、必ず良い物語になると思う。

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