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2011年4月 8日

やさしい嘘と贈り物(2008)

- 美しい物語にするには -

一人暮らしの老人が近所の御婦人と恋に落ちる。緊張しながらデートを重ね、思いがけない幸せを味わうことができたが・・・

・・・筋書きは直ぐ解ったが、演技派の老人二人の演技は素晴らしく、退屈はしなかった。

ヒロインのエレン・バースティンは公開当時74歳?さすがに齢を取った。「アリスの恋」の頃はパワフルな若奥様の雰囲気だったのに。

主演のマーティン・ランドーという役者は知らなかった。晩年の西村晃と表情がそっくり。鏡を見るシーンでアップになると、病的なところが解る。でも、あんまり繰り返すと、あざとい演出になる。

ごく普通に行動しているように見えて、実は間違っていることに観客が徐々に気づくという流れのほうが良くなかったろうか?最初のアップの表情や、出ていく時にドアが開いていることで、直ぐ解ってしまい、話の流れも解ってしまう。

タイトルも、そう考えると解りにくいほうが良かったかも。ささいなエピソードから持ってくるか、もしくは最後まで観て解るような、しゃれたタイトルのほうが効果的。

病的なイメージを出させる妙な文様は、この作品の質をかえって落としていたかもしれない。のんびりした画面、静かで全く正常に見える主人公の動きが実は大きな間違いによっていた・・・そんな演出がオーソドックスな道だろうから、美しい風景や街並みを前面に写しても良かったのではないか?

この作品は子供には退屈だろう。家族で観たい気もするが、子供達から苦情が出そう。恋人といっしょに観る映画としては、観た後にしっとりした優しい気持ちになれる点ではお勧め。わくわくする娯楽の面では最悪。

認知症の表現をどのようにするかが難しい。認知障害を自覚するのは楽しいことではないはず。多くの人はスムーズにいかないことを悟って、うつ状態に近いような諦め、怒り、悲しみ、怖れが混在した精神状態になる。

役者は上手に演じる人も多いが、オーバーにやると白々しくなる。演出をいかに自然にやるかがカギ。この作品の流れから言えば、一人暮らしの生活でちゃんとやっているかのように最初は見せておくべきだった。

観客が徐々に最初の自分の理解が間違っていて、主人公がおかしな行動をとっていることに気がつき、なぜ彼がそのような行動に至らざるを得なかったのか理解するなら、そこで初めて深く同情することができる。それを狙うのが常道だろう。この作品では、少し流れが違っていたようだ。

「君に読む物語」は、ヒロインのボケぶりが凄かったので、この作品よりも悲しく美しい話になっていたと思う。衰えは悲しく、悲惨なものであるが、少しの救いがあると、それは非常に美しく写る。

もし自分が自分の家族さえ忘れていたことに気がつくとしたら、どのような感情が浮かぶだろうか?認知症の患者さんを見る限り、あまり反応を示さないか、ただ悲しそうな表情をするか、妙に不機嫌になることが多いような気がする。

あの不機嫌は、自分の間違いを指摘されて機嫌を悪くする子供と同じ反応かも知れない。子供を見ていると、何かの答えが当たると嬉しそうな、誇らしそうな顔をする。間違っているよと指摘すると、もうやる気を失くしそうになる。別な面白いことないかな?と視線を他に向ける。

だから、本当なら主人公が気がついた場面では、興奮した顔から急に表情を変えて席を外し、贈り物を取り出して遊び出すなどの、全く関係ないことを始めたりするのが正しいのかも。

最近、同窓会の誘いがあったが、かなりの同級生を忘れていることに気がついた。高校時代は部活動もしてなかったので、深い付き合いはない。休み時間に雑談するくらいが関の山。よく話した連中しか覚えていない。それを認識するのは悲しい。

 

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