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2011年3月18日

失われた週末(1945)

- 楽しくない作品 -

監督 ビリー・ワイルダー

アル中の主人公が兄、恋人、近所の人達と関わる姿を描写。始まりから再生をイメージさせるラストまで、楽しいシーンはほとんどない。

全然楽しくない作品なのに、なぜか名作に挙げられる。娯楽のレベルまで、うまく作り上げた構成の力ゆえか?とにかく、この作品を家族で楽しむのは無理。恋人といっしょに観ても、たぶん気が重くなるだけ。

主人公は当然ながら情けない人間で、酒のためにすべてを売り捨てる人物。自分に関わるなと恋人に別れを勧めるあたりは良心的だが、その人のコートを売ってしまうことも厭わないほど。

原作になった小説があるらしい。構成がよく考えてあって、回想して恋人との出会いを描き、現時点の時間進行で質屋を探して放浪する場面を流したりしている。たぶん入院して脱走したのも週末の出来事なのかなと思ったが、いろんな事がありすぎて、過去の出来事と現在のこととの区別がつかない。

あちらの週末は何日あるのか?週休3日?

仮に週末を金曜日とすると、金曜日の夕方に列車で出発するところをすっぽかし、その夜は酒場に行き、兄達が怒って帰ったのを見計らって部屋に戻る。翌土曜日は酒場で酒を恵んでもらって小説を書き始めるが直ぐ中断、どこかのレストランでバッグから金を盗もうとする。追い出されて女友達に金を恵んでもらって階段で転倒したのは夜か?病院に運ばれるのはたぶん日曜日の早朝。日曜日は禁断症状に苦しみ、日曜の午後か月曜日は質屋がお休みで放浪?

すると、質屋が開いて話が終わるのは最低でも月曜日以降。やはり、週末だけの話では日数が足りない。過去の記憶の場面と混同してしまったのか?実際、アル中は何度も後悔や懺悔を繰り返し、また元に戻ることを繰り返すものだ。週末で終わるはずはない。きっかけのひとつに過ぎない。

回顧シーンの挿入は古典的な手法で珍しいとは言えないが、特にこの作品では流れに滞りがない感じ。

DVDの映像はかなり古く、当時の物資の関係か?たまたまの保存状態の関係か不明ながら、「風とともに去りぬ」のような鮮やかな画面はなし。

主演のレイ・ミランドの演技はかなりオーバーだったが、昔の映画風で懐かしいと感じる人も多いかも。あまりに自然に演じようとすると、険しさ、異常さが目について、観ているのが辛くなるかも知れない。演技ということが感じられる程度に演じるのは正しいかも。

酔いながらシェークスピアのウンチクなどをベラベラしゃべる姿は名演だった。あんな客は確かにいる。誰も聞きたくない話ということに気がついていないのだ。酒を隠そうとして見せる動作や表情も、かなり計算してあったのだろうが、今のテレビドラマよりもずっとリアル。

ヒロインは、なぜキャスティングされたのか解らないような人だったが、絶世の美女だと雰囲気がおかしくなったかも知れない。あえて庶民的な感じの女優を選んだのか?

結婚前に自分の恋人がアル中だと気がついたら、普通は別れる娘が多いのではないか?結婚してからでは責任の度合いが違うし、その後の人生で苦労することは明白だから、よほど愛してない限り関係は終わるだろう。それで娘を責めたくない。

娘の人生が夫の介護と生計を立てることで台無しになりかねないから、私が娘の親でなくても別れることをお勧めする。ちなみに私のような人間に私の娘が結婚を考えているとしたら、私はどう考えたらいいのかと思うことがある。「あいつは将来性がないよ。貧乏医者になるだろう。」と、言ったりして・・・。

学生時代は自分で自分のことをアル中と思っていたが、この作品のような極度の依存症にはならなかった。将来の仕事を失う恐怖のほうが勝ったのか、衛生面や外見に多少気をつけていた関係か、軽症だったようだ。妙な幻覚に襲われた経験はない。

自分の場合は、普通のボトル一本では眠くなり、翌朝は気分が悪くなっていたが、白人の多くは二日酔いにはならないのでは?主人公は丸々一本も飲んでいないように見えた。本当はもっと激しく、大量に飲むはずだ。病院で隠れのみする患者達は2リットルくらいの大瓶を購入していた。あのビンは販売を止めて欲しい。

アル中患者は多数経験。救急外来でひどい目にあった。

怪我は覚悟しないといけないので、常に防御の体制を忘れてはいけない。あの時の患者の状態は、いったいどんな感じなんだろうか?自分を過剰に守ろうとしていたのか、自分を優位な立場に立たせようとしていたのか?

私の場合は、いかに酔っても人を傷つけたりしようとはしてなかったはず。人にからんだ記憶はない。道端の看板を壊したこともなかった・・・定かではない。看板が私を攻撃してきたことはあったかも・・・?

むしゃくしゃしながら飲むことはあったが、暴行や暴言には至らなかった。単に気が小さかったからか?飲んだら人が変わる飲兵衛は多いらしいが、脳の中で何が起こっているのか興味がある。人に怪我させるのは犯罪行為なんで、程度の差はあれ誰でも怖いと思うが、その抑制まで外れる理由は?

脳の活動の制御の仕方には、おそらくパターンが多数ある。

欲望や衝動を最後に高位の脳の機能で抑えている人の場合、最初にその抑制が外れてしまうと人が変わるのでは? それと別なパターンで、感情で抑制されている人の場合、高度な抑制が外れても理性的でなくなるだけ、支離滅裂になるだけといった具合か?アルコールが作用する神経細胞の膜の表面の蛋白にも、結構な違いがあるはずで、伝達物質がもろに影響する人、鈍くしか影響されない人など、いろいろあってもおかしくない。

我々の人格形成にも、いろんな道があるはず。子供の頃は騒がしくて落ち着きがなかった少年が、無口で無表情な青年になり、陽気なおじさんになるといった変化は、思考パターンの形成において、どのような順序で、どのように形成されるかのひとつのパターンだ。抑制が外れる時も、パターンがあっておかしくない。

自分の場合は、ただ眠くなるだけのことが多い。何だか幸せな気分になって直ぐ寝てしまう。攻撃的にはならない。あんたは幸せな人よ、とよく褒めて?もらえるが、確かに甘い考えに基づいていて、基本的にバカなのかも。

アル中の栄養管理については興味がある。ほとんど食事をしないで焼酎ばかり飲んでいる人は結構多いが、すぐには死なない。アルコールから酢酸、アセチルCoAなどは合成できるから、そこから栄養素の再合成はかなりできる。ビタミンを最小限摂れれば、とりあえずは生きていけるのか?

この作品の主人公も、画面に写るかぎりは食事を摂っていなかったようだが、結構元気に過ごしていた。人の体は本当に不思議。アル中で入院してくるおじさん達も家族に呆れられながらも数年は生きていけて、節制していた妻より長生きしたりするので、うまい代謝の補完があったんだろう。

 

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