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2011年2月13日

インセプション(2010)

- しかめっ面ばかり目立つ -

夢の世界に侵入して情報を得る仕事人である主人公は、仕事の失敗で企業から狙われ、妻の殺害容疑でも国際手配される。彼の新しい仕事、それは新しいアイディアを人に埋め込む「インセプション」だった・・・

・・・斬新な映像に感心した。ノーラン監督が長いこと暖めてきたアイディアが原案だそうだが、確かにセンスの良さにあふれ、一級品の映像作品という感じがした。

高解像度の画面でもCGと実写の区別がつかないような高度の画像を作る能力が凄い。今や、もうどんな映像魔術にもいっときの驚きしか感じない。

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宣伝にも使われていた街並みが折り曲げられてせり上がっていくシーン(上)や、荒廃したビルの廃墟が壊れていくシーン(下)などは美しく、驚いた。どうやって作ったのか興味を持った。

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銃撃戦は結構あるし、無重力状態での殴り合い(下)の迫力も凄い。誘拐や拷問めいたシーンなどもあるのだが、ギリギリで家族で鑑賞できる作品になっていると思う。恋人と観るのには向いている。単純すぎないし、映像美を味わえる。

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インセプションという言葉は造語かもしれない。コンセプションをインプラントする・・といった意味あいではないか?タイトルとしてはインパクトを感じるものの、最高の題名かどうかは解らない。

電脳の世界にはまり込んで内部で戦うのはマトリックスやトロン。ミクロの世界はミクロの決死圏やミクロキッズ、夢の世界で戦うのはインセプションの他にもあったような気はするが覚えていない。記憶の世界をさまよう話は多い。夢のまた夢を正面から扱ったのは始めてかも。

斬新さは一種の楽屋受け、オタクだけにしか評価されない危険性を孕んでいる。「アバター」は本当に特異な技術を前提とした映画だったが、自然破壊や侵略、文明などに関する深さを持っていたので、一般に受けた。この作品は、テーマが異なる点で不利。

夫婦の問題は大きいが、人類愛、文明への警鐘といった壮大な物語とは比較にならない。夢の世界を舞台とするのは、それこそ夢のあふれる話だが、所詮は頭の中でバーチャルなやりとりをやっているに過ぎないと考えれば、話のスケールに限界がある。もっとスケールを越える要素が欲しかった。

愛情を大きな要素として描くために、せっかく協力する女性に愛情めいた感情を抱くことはできなかったのか?一種の不倫になるのでマズイと判断したのか?信頼や友情でも良い。協力者達はよく働いていたが、友情の表現が足りなくはなかったか?

成功に対する喜びの表現も不足していなかっただろうか?ラストはなかなか洒落ていたが、慎ましい喜びの表現だった。「やったぜい!」という圧倒的な喜び、達成感、友人達と抱き合うこともなく、スカッとするような印象、そのようなものもなかった。「アバター」とは大きく違う。

妻の死に対する責任感、後悔の念を映画の中心に持ってきてはいけない。話が重く、暗くなり過ぎてしまうからだ。影のある人物が主人公になるのは必要だが、懸命にそれを払拭し、抜け出そうと努力する意志を中心に描いたほうが良い。

そのためには話の展開の順番も考えたほうが良い。主人公が手配されていること、妻の事故のトラウマから抜け出そうともがいていることは早い段階であっさりと観客に提示し、ともに努力する感覚を持ってもらったほうが断然楽しめたはずだ。

この作品で、謎解きの要素は重要ではない。途中で主人公のトラウマが解明されるよりも、ともに戦う共感を狙ったほうが良い。

どうもディカプリオの最近の映画は、ほとんどが内面に問題を抱え過ぎて抜け出せないような影の部分が強すぎる。始終、しかめっ面をしていた。表情に爽やかさを漂わせながらも不幸を背負う役柄の時代の彼のほうがずっと良かったのに、路線を間違えていないか?

 

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