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2010年12月28日

シマロン(1931)

- 理想のヒーローの行く末は? -

オクラホマ州の歴史とともに、そこに移住した家族の物語。グレート・ランの描写が素晴らしいという批評家の文章を読んだことがあって記憶はしていたのだが、めったに観られない古い作品、普通の人は気にも留めないような映画なんで、ビデオ屋さんにあった時はリメイクかなと思ったほど。

アカデミー作品賞を取ったのも解るような壮大な話。町が出来る前の姿から、1930年代のビル群に発展するまで(新聞社が移転してオクラホマシティに移ったという設定かも知れないが)を描いているから、大河ドラマ並み。画像は、おそらくリマスタリングされていて、非常に鮮明。

撮影方法も金がかかっていて凄い。伝説の土地取り合戦をリアルに描いてあった。死者が出たんじゃないかと思えるほどの馬車の競争は迫力満点。今のCGがない時代には、実際にエキストラを大勢集めてやるしかなかったのだろうが、それにしても凄い。

町並みはセットで建てているようだが、これも相当に大掛かり。時代を追って町が発展していくから、かなりを建て替えているはず。それだけの収益が得られたのか心配になって調べたら、案の定、赤字だったらしい。

主演の俳優は、どう観ても役者風の役者で、荒野のガンマンという印象は全くない。気取った動作とセリフの言い方が鼻についた。撃ち合ったら、先に倒れる可能性が高そうな感じ。

キッドの愛称の強盗の男も、何となく存在感が薄い。もう一人、本物の悪党のガンマンは良い顔つきだったから、もう少ししつこく登場させて、悪行の限りをつくしてほしかった。簡単にやられ過ぎ。

奥さん役は当時の美人女優なんだと思うが、サイレント映画に出てきそうな化粧法が良くなかったのか、これも印象が今ひとつ。後半になって老女になった時はメイクが素晴らしくて、リアルな女企業家になっていたが、若い頃はメイクに問題ありかも。

共演者の一人、教養をひけらかす顔の長い女は面白かった。今もテレビドラマの脇役で非常に似た顔の女優がいるが、ご先祖か?気取った話し方、気に入らない人物に対する嫌悪感の表し方、そのくせ友人としては最高といえるキャラクターが素晴らしかった。

ユダヤ人で最初はならず者の餌食になっていた人物が、商売で成功して大金持ち、しかもどうやらヒロインにはホの字というのもキャラクターとしては最高。存在感があった。

どもりの職人の扱い方も素晴らしい。今でも通用するような演出がされていて、確かにアカデミー賞に値する作品。

映画の中でインディアンに対する言葉が凄い。まるで人間扱いしていない。それを、そのままセリフにしているし、話しているのが作品のヒロインなんだから呆れる。リアルな映画だ。インディアン達が受けた苦痛には同情する。

オクラホマは、まだ新しい国だったようだ。1800年代初めには既に入植者でいっぱいだったと思っていたら、インディアン居住地が多かったせいで、原野の部分が大半を占めていたらしい。そこに新たな白人のための町を作ろうなんて、身勝手もはなはだしい。

合法的に土地の収奪をやらかして、インディアン居住地に石油が出れば騙して利権を掠め取ろうなんて、それをキリスト教徒で民主主義者であるはずの州民がやってしまうなんて信じがたい。たちまち非難ごうごう、インディアンの権利が守られた!なんてことにならないのが情けない。

唯一、この作品のヒーロー氏がインディアンに好意的で、憲法精神を守っていたようだったが、彼のような人間は当然州知事にはなれなかったし、浮浪者に陥らざるを得なかったというのも、何だか解る様な気がする。理想のヒーローは現実に対して失望しがち。この作品は、利にさとい人間だけが平然と生きていけるのを皮肉っているのかも。

 

 

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