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2010年9月 6日

第9地区(2009)

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- 前評判通り -

ヨハネスブルグの上空にUFOが停止した。中には難民とおぼしき昆虫型宇宙人がいる。南アフリカ政府は彼らを地上の第9地区に隔離したが、人間との間で摩擦が増え、新しいキャンプに移送されることになった・・・

・・・前評判どおりの傑作。

面食らったのは、DVDの最初に変なマークが出てきて、観る人が「人間」「昆虫型宇宙人」のいずれかを選ぶシステムだった。内容を良く知らないで観ていたら、DVDの故障と思ったかも知れない。

南アフリカ出身の無名のスタッフ達が、リアルでシリアスに演技している。明らかにアパルトヘイトをイメージさせる設定だが、声高にメッセージを訴えかけているわけではない。あくまでSF作品、娯楽性を失わないように注意している。そのセンスが良かった。

もともとは監督の小品のアイディアがあって、それを膨らませた形だそうだ。ロード・オブ・ザ・リングのスタッフが関与した関係で、CGは見事に仕上がり、結構なSF大作になっている。

宇宙人が難民というのは珍しい設定。蜂をイメージしたエイリアン社会、働き蜂達は宇宙船の運転法を知らないという設定も面白かった。スラムの住民をイメージさせて良くないと言えばそうだが、エイリアンの皆が地球侵略を企てる高等生物では面白くない。

ナイジェリア人ギャングの設定は理解できなかったが、もしかすると南アでは実際にもナイジェリア人のギャングがいるのか?ナミビアあたりの近隣からだけではなく、いろんな国から流入しているのかも知れない。

アフリカの犯罪組織は既に世界規模で活動している。日本車の良い車を希望するアフリカの富豪がいると、注文がアフリカのギャングを介してパキスタンのギャングに入って、日本や中国の業者を介して車を窃盗し、あっという間に解体して輸出され、現地で再度組み立てる仕組みらしい。

主役の俳優の情けないサラリーマン的行動が良かった。いかにも俗物的な表情で、形だけの同意書を得ようとしてエイリアン達を騙す行動は、嫌悪感を観客に抱かせるための適切な演出だった。

昆虫型エイリアンというと、徹底して凶暴なバグが暴れる「スターシップ・トゥルーパーズ」があったが、この作品はメッセージ性が全然違う。人類が難民や征服地でやってきた行為を連想させる。合法的だが、非人道的行為がいかに多かったかを回顧させる。

「ルールに基づきやった。」「仕方なかった。」とは、インタビュー形式の部分でよく使われた言葉だった。実際にもよく使われる。後で法廷に引き出された時のことを考えて、用語が決まってくるものらしい。下のような看板なんかは、いかにも作られそうだ。細部にこだわることでリアルになる。

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インタビュー形式をつなぐ編集も良かった。リアルさを出す効果は抜群だ。

この作品は、子ども達にも面白いだろうが、ちょっとアクが強すぎる印象。言葉も汚いし、教育的な効果があるとは思えない。恋人といっしょに観るのは悪くない。

エイリアンの中に優秀で、人間的な感情を持つ者がいるというのは無理のある設定だったかも知れない。親子のエイリアンの愛情のようなセリフ、人間との会話の仕方などにはもっと工夫があってよかったかも知れない。

監督の次回作に期待したいが、これ以上のアイディアがあるのだろうか?

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