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2010年9月 4日

インビクタス/負けざる者たち(2009)

- バランスとパワー -

この作品は、原作の映画化権をモーガン・フリーマンが買い、クリント・イーストウッドに監督を依頼したらしい。主演のフリーマンは存在感、思慮深さをうまく表現し、アカデミー賞を取らないことなどありえないほどの演技ぶりだった。

マット・デイモンはラグビー選手にしては小柄だが、体重を増やしていたのか、走り方などもトレーニングしているのだろう、動きが運動選手のレベルに近い自然さだった。しかもオーバーな表現を控え、いかにもスポーツマンのような表情、そのような考え方をしているなと納得させるような目線まで表現していた。

この作品は、家族、恋人、友人など相手を問わず鑑賞できるし、誰にもある程度の感動をもたらす作品。昔の名画を観るような感じ。かなりの感動作であることは確か。とにかくテーマからしてして健全すぎるくらい健全。健全な名画を意図して作っているような感じ。

大向こう受けを狙っている嫌いはあるので、オシャレな感じはしない。涙を誘う映画という印象は受けなかった。清々しい気分にはなったが、真に共感できたとは言えない。

ラグビーの大学対抗戦などでは入場前に泣くのは珍しいことではない。厳しい練習やチーム内部の対立と連帯感などを強調し、緊張や感動を、もっと表現しようと思えばできたはずだが・・・

それと気になったのは、ぶつかり合いの迫力が不足していたことだ。さすがに本物のパワーは表現できていなかった。大柄の役者達、本物の選手達も出演はしていたはずだが、表現の方法に問題があったように感じた。イーストウッドはスポーツ映画として、ミリオンダラー・ベイビーを撮っているので、迫力の演出は得意と思っていたが、集団でぶつかり合う場合とボクシングでは勝手が違っていたのか?

たぶん、音やスローモーションだけではダメで、今のカンフー映画、アクション映画の手法を応用して多少のCGも加えないと、観客に長い時間格闘を見せると必ず失敗すると思う。パワーを受けた相手が吹っ飛ばされる力学的変化を再現しないといけない。

敵の強力な選手に、味方が次々と吹っ飛ばされて、懸命に食い下がる姿を見せないと感動はできない。多少の演出を使って、懸命さを表現して欲しかった。

その地道な工夫が、迫力につながると思う。せっかくの、他にない題材、そのままでも感動せざるを得ないようなシチュエーション、役者達の渾身の演技の数々が、スポーツの迫力が不足しただけで、ただの芝居に成り下がってしまう。

ボディガード達の比重が結構大きかったが、それに意味があったのか解らない。白人と黒人のスタッ達が協力して仕事をこなしたことは確かだが、大きな事件があったわけではなく、ある意味では退屈な仕事をしただけになる。もう少し出番を減らしてもよくなかったか?どのように扱うのかが、曖昧なままという印象。

バランス的に、何か別のエピソードが欲しかった。マンデラの人柄が強調され、周囲の人々の感情が解るような、そんなプロットに何かバランスを欠いていた印象。

オールブラックスが負けたニュースは知っていた。でも普通の人はラグビーのことは気にしていないので、意味すら感じなかったのでは?当時はカーワン選手が抜けた後くらいか?まさかという印象。しかも相手が南アフリカとは!

南アフリカは、その後も良い成績を出しているからまぐれではなく、実力もあったことは確か。国際試合をしていなかったから知らなかっただけで、実は凄い強豪国だったんだと理解したが、この映画を観るとそれだけではなかったのかも。とにかく、南アフリカにとっては大変な事件だったはず。

マンデラ大統領が、どのようにチームに関与していたのか本当のところは知らないが、チームの面々の意欲に関係していたことは確かにありえる。国としての誇り、存在意義、団結などに関係していただろう。

ネルソン・マンデラ。今生きている人物では最高の尊敬を集める。獄中に30年近く閉じ込められながら、意志を貫き通す精神力には脱帽せざるをえない。現実的な手法で国を守ったと言えるだろう。その考え方を、この映画では描いていた。

家族で見れる映画だと思う。恋人と見る時には、感動作を欲している場合にはOK。娯楽作品を欲しているならダメ。

 

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