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2010年9月12日

スターリングラード(2000)

Sutarinn 

- 無茶な突撃がリアル -

スターリングラード攻防戦において活躍した実在のスナイパーの物語。彼をヒーローに仕立て上げ自分も出世した将校、三角関係になる恋人の絡みと、敵側の凄腕スナイパーとの戦いを軸に、戦いの実像にせまる作品。

途中の戦場の描写が素晴らしかった。

爆弾が飛んでくる中を渡河しようとして敵からも味方からも銃を向けられる兵士の姿は、非常にリアルに描かれていた。当時の軍備がどのようなものだったか知らないが、おそらく銃を二人に一つしか渡さないというのは、実情に近いのではないか?人口だけは多いロシアのような国は、当時は人海戦術で戦うしかなかったと思う。

ノモンハン戦では装備で日本軍を圧倒したソ連軍だったが、たぶんに宣伝戦略の効果もあったようで、確かに戦車の性能は日本軍より高いのだが、突撃隊による火炎瓶などで結構やられてしまう。そこを数で押し切る戦術だったらしい。結果的には、それで圧勝したようだ。おそらくレニングラードでも同じようにやっただろう。

歴史の本でクリミヤ戦争当時のイギリス軍の新聞報道を読んだことがあるが、ロシア兵は肉弾戦を挑んでくる野獣のような奴らが多く、戦術など無視した突撃に困ったと書いてあった。おそらく装備が足りなくて自然に肉弾戦になる伝統なんだろう。

ドイツ軍はなぜスターリングラードに固執したのだろうか?広大な国を管理し続けるのはマズイ戦略だと思う。数ヶ月で工場や線路や橋を片端から破壊し、機械の生産能力をたたいておいて、ソ連国内に進駐しないのが普通ではないか?それを半年毎に繰り返せば、少なくとも大量の兵力を常駐させる必要はなくなる。

鉄道から兵士が降りるという設定もおかしい。敵は鉄道を先に破壊しておくはずだ。たぶん、実際には徒歩で行進して来たのでは?

突撃シーンはリアルだった。撤退してきた味方を銃撃するなんて、考えられないような非人道的な扱いだが、昔は日本軍も含め、どこもそうだったらしいから、当時は普通のことだったんだろう。戦場で人命軽視は当たり前。

この作品は家族で楽しめるような映画ではない。基本的には大人限定。リンチや無慈悲な殺害のシーンもあるので、子供には見せたくない。恋人といっしょに観る作品として、あえて選びたいとは思えない。楽しくはないし、感涙も期待できないからだ。

戦争映画の限界かもしれない。万人が楽しむ戦争映画というのは考えにくい。「大脱走」などの特異なシチュエーションに限られるのでは?

でも作品のレベルは高いと思う。役者も良かったし、映像はリアルで、しかもエピソードのプロットの仕方が適切で、緊張感を保っていたからだ。

ただ敵のスナイパーと神経戦をやっていても盛り上がるはずがない。子供のスパイが絡み、互いに敵の情報を探り、しかも恋の三角関係までが絡み、そしてリアルな戦場が描かれれば、それで初めて高いレベルが見える。脚本家のアイディア、物語を構築する能力はたいしたもんだ。

ジュード・ロウは古風な映画が非常に似合う。眼力のある美男で、俳優になるために生まれてきたような印象。

古風な役柄が合うのだが、恋愛劇やSFでも活躍している。昔のスターと同じような匂いがする、スターらしいスターだ。今は、あまりに個性派すぎてオチャラケが目立つスターも多いが、彼は本格派と言えるのかも。共演のジョセフ・ファインズは、これもクセのある助演役にはピッタリの役者。うまく配役できていた。

ファインズがラスト近くで共産主義に対する批判めいたことを言うのは、さすがにアメリカ映画だからか。戦場においては、主義も理念も関係なく、ただ悲惨な現実があるだけだろう。ドイツ軍もアメリカ軍も同様だと思う。そのへんの描き方が良かった。

 

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