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2010年9月16日

生きてこそ(1993)

- 再現力 -

1972年に起こった航空機墜落事故からの生還を描く作品。主演はイーサン・ホーク。脇役では医学生役で、サッカー選手のメッシのそっくりさんも出演。墜落後、生き残った乗客たちが救出を求めて脱出を図るまで、またDVDには生還後の生存者達へのインタビューも含まれていた。

見ごたえある作品。娯楽作品としても、結構なレベル。

しかし、この映画を恋人といっしょに見てよいものだろうか?シビアな話なんで、その後の会話に困ることもありえる。真面目すぎる、重すぎるテーマ。観た後に笑い転げるなんてことは考えにくいから、楽しみとは別なものを期待して観るしかない。

家族といっしょに観るべき作品だろうか?小さな子供には良い影響があるのか解らない。一定の年齢にならないと、理解の仕方も解らない。

この作品は少なくとも小学校高学年以上の年齢、できれば高校生以上の年齢の人が、一人、もしくは友人といっしょに観るのには向いているということになるか?真面目に観れば、感動できる作品の仕上がりだと思う。

登場人物達の会話、表情が非常にリアルで、よくできた作品。舞台となったアンデス山中をロッキー山脈の中に再現したらしいが、再現力も素晴らしかった。題材も凄いが、演技と演出も素晴らしい。イーサン・ホークが目立ち、ちょっと元気すぎる気はするが、鼻をつくほどではない。

ラスト近くで、一瞬全滅か?と、思わせるような演出も可能だったかも知れない。もしくは、努力する主人公に何かのセリフで絶望から逃れようということへの賛歌を謳わせても良かったのでは?

そんな臭い演出はなかった。先にドキュメンタリー映画が作られていたから、比較されて品位を損なうと思ったのかも知れない。

どのように映画を作るか考えると、非常に難しく思える題材。変にヒーローを作るのも問題だし、涙だらけの作品では品位のようなものが保てない。

題材は有名な事件。高校生の頃に雑誌で読んだ記憶がある。彼らの選択した方法への賛否はあるだろうが、生きてこそという考えには共感する。「聖書にも人肉を喰ってはいけないとかかれていない。」というのはコジツケ気味の解説だが、生存可能な人の生存を最優先に考えるのは大前提だろう。法律、宗教以前の問題だ。

でも自分が同じ状況で同じ行動を取れるか、自信はない。吐き気を催して結局食べられず、餓死してしまうかもしれない。少なくとも自分以外の人には「食べなきゃ死ぬから食え」と勧められるが、自分はダメかもしれない。

もし一人だけ生き残った場合は、友人達のために生きる必要はないので、生きようという意欲さえ損なわれる。子供がいて責任が大きい場合は、簡単には諦められない。目の前に複数の人間がいる場合は、彼らを行き続けさせるのは自分の義務になる。少なくとも足を引っ張ることはできない。本心を隠してでも「食べるのが当然だぜ。」と、言うしかない。

過去に、例えば戦争で篭城せざるをえなくなった場合など、飢餓の極限状態に陥ったことは多いと思う。「相食む。」という状況は、昔なら珍しくない。たぶん仲間を殺して生き残った奴も多かったろう。それをやったからこそ、人類が生き延びてこられたとも思われる。原始時代には飢餓が普通の状態だったはずだから。

ドライに「必要だから互いに助け合う」=死んだものは食べられるという感覚は、昔なら当然であり、一種の義務みたいなものだったのかもしれない。今の時代は、人があふれているので意味も違っているだけかも知れない。倫理が発生する以前の状況では、普通のことだったのかも。

彼らは生還した後、出身地にほとんどのメンバーが残って、死んだ人達の家族といっしょに生活したという。どんな顔をして会ったらいいのだろうか?さすがに自分なら、別な場所で生活したいと思うだろうが・・・

彼らの捜索が非常に簡単に終わっているのが信じられない。飛行機の残骸くらいは見つけないと、軍や政府の能力不足が糾弾される。70日間の間には天気が良い日もあったらしいので、残骸くらいは探せるはずだ。

ウルグアイの財政がいかに厳しかろうと、ヘリの数台で一ヶ月探せば、大抵のものは探せたのでは?

事故に会ったら、基本的には現場を離れるのはマズイ。捜索が中止になったことを確認したら山を降りないといけないだろうが、基本は現場に止まることだろう。生存者達はトランクで十字架の形を目印にしていたらしいが、たなびかせる旗やSOSなどの印でないと見逃される。毎日、目印を目立たせることを日課にして、ひたすら体力の消耗を防ぐべきではないか?

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