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2010年7月25日

イングロリアス・バスターズ(2009)

監督 クエンティン・タランティーノ

ドイツ占領下のフランスが舞台。ユダヤ人を執念深く探索するランダ大佐によって、あるユダヤの家族が殺される。一人生き残った少女は復讐を誓う。いっぽうで、ナチを惨殺するバスターズ部隊が召集され、ドイツ兵を次々と抹殺していく。そして、新しい計画に関わることに・・・

ナチの情報将校ランダ大佐が実質の主役だったような気がする。演じていたのはあまり迫力を感じさせる役者ではなかったが、体力で勝負するタイプの役柄ではないし、怖そうな人間だとかえって真実味がうすれるので、適度に弱そうな人がいい、その微妙なバランスが良かった。

この役者の力量も素晴らしかったが、脚本が良くないとああは演じられなかっただろう。セリフやカメラ、演出全体が素晴らしかった。せっかくだから、ランダ大佐を主役にして暴れまわって欲しかった。

ヒロインは大変に美しい女優だったが、内に秘めた激しい殺意を表現していたとは感じなかった。上手く演じていたとは思うが、シュールな映画なんで、もっと激しい殺意、復讐の喜びをセリフにして欲しかった。

「イヒヒ、皆殺しにしてやるう。」みたいな魔女的表情を浮かべて欲しかった。

ブラッド・ピットの出演理由、キャラクターとの相性にも疑問を持った。もっと野獣のような、人を殺して楽しむ本物の変態、敵役に合いそうな悪役が演じると良かったと思う。二枚目役者をキャスティングした理由が解らない。

全体としてブラック・ユーモアと、悪趣味なリンチ、強調された冷酷さなどマカロニウエスタンの演出のタッチで描かれており、クールめいた二流映画の手法でメジャー作品を撮るという監督の趣向が反映された感じ。

ある意味ではインディアンが白人に復讐している格好になっていたが、もしかして監督の血にはインディアン系が少し入っているのか?

二級品タッチなんで、あんまり細かいことは気にしないで、カッコづけた演技とアクションに酔いしれるべきなのかも。

ドイツ兵でありながらバスターズに加わった軍人役が、あっさり殺されていた。途中まではいかにも今後活躍しそうで、「裏切るのか?」などと期待させていたが、その期待を裏切るのが、いかにも二級品映画のパターンだ。思いつきでストーリーが進むような、独特のにおいのようなものが、この監督の作品の味。

でも、この作品でそれが良かったのかは不明。

家族と観る映画ではない。リンチを肯定してしまっている。恋人と観るのはいいかも知れないが、後味が良いとは思えない。基本的に残虐な作品。

しかし、反戦映画の手法のまま作品を作ったら、たぶん客の動員数はさらに低くなっていただろう。ある程度の演出、奇抜な手法は必要であり、そのために残虐なシーンを写すのは仕方なかったのかも知れない。

ヒロインの復讐劇を描くだけではいけない。従来の手法ならランダ大佐とヒロインの駆け引きをスリルたっぷりに描こうとすべきだろうが、妙な殺人集団が暴れる脇のストーリーを絡ませることで、やることは陰湿なんだが陽気という不思議な映画が成立している。だから、この作品はいちおう成功と言えるのかも。

魅力については、個人的にはよくは解らないが。もう一度ぜひ観たいとは感じなかった。

せっかくだから、レジスタンスのグループ各々が勝手に爆弾を仕掛けて、町中が爆発して皆が死んでしまうようなシュールな展開も面白くないか?

ナチもレジスタンスも、皆の肉片が一緒くたになって「オイ、棺おけに将校の頭と女の足がいっしょに入ってるぞ!」、「いいや、適当に混ぜとけ!」と、敵味方仲良くいっしょに葬られるなんてのはシュールではないか?皮をそぐのに使ったナイフと、ナチの将校の大事な品もいっしょに埋葬されるラストなんてどうか?

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