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2010年6月18日

酒とバラの日々(1962)

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- リアル? -

広告代理店に勤める主人公は、倫理観に反する仕事に嫌気がさしていた。美人の奥さんと知り合って結婚するが、会社とのトラブルなどが引き金になってアルコール中毒になる・・・

・・・この作品のスタンスが解らなかった。アルコールの害を告発する目的の教育的な映画なのか、もしくはラヴロマンスとして作ろうとしたのか、その辺が解らない。子供の頃から、この映画のことは知っていたし、音楽が有名で、タイトルもアルコールに関する文章があるたびに目にしていたように思うが、今回DVDで初めて鑑賞。

この作品は子供には全く不向き。恋人といっしょに観ても雰囲気が悪くなりそう。家族で観れるような映画ではないし、おそらく当時でもそうだったはずだから、興行的な成功は最初から望めない、映画会社としては絶対に作りたくない作品だと思う。なぜ作られたのか興味がある。

ジャック・レモンが出演するから相当におかしい作品になると勘違いしたのか?

ジャック・レモンにしてみれば、喜劇役者から脱却して名優の地位を確実にするためには最高の企画だったはずだ。監督のブレイク・エドワースにしてみても「ティファニーで朝食を」の雰囲気に近いものがあり、後世に残る作品をイメージできる企画と考えたと想像できる。彼らが強硬に製作を望んだのか?

でも、自分が会社の重役なら絶対にOKは出したくない。別な企画とセットでないとダメだ。

映画の中の解説に従えば、「酒とバラの日々」という言葉は、誰か詩人の文句らしい。イメージから考えると、もしかしてアイルランド系の詩人か?映画の中でも何か語られていたが、文学の素養がないので理解不能。

ジャック・レモンの演技が気になった。特に、一度禁酒してから奥さんの実家で働き、克服したかに思えた時期に飲酒する時のきっかけが不明だった。普通なら何かのトラブルか、祝い事などがきっかけになると思うが、自発的に再発してたのは不自然だった。

さらにもう一度、妻を連れ戻しに行ったモーテルで、妻との仲を戻すために飲酒をする場面で、飲んだすぐ後に酒屋に行って酒を盗む場面があったが、久しぶりに飲んだ場合は、酒の効きが強くて満足することが多いような気がするし、アル中の多くは中毒を隠すことに執心するので、いきなり暴れることは少ない。見ず知らずの土地では、こっそり飲むくらいで過ごすのが普通ではないか?

花壇で酒を探して暴れるシーンは見せ所だったが、普通は実に慎重に、こっそりと探そうと苦心することが多い。自分がアル中であることを知られてはマズイから、自分なりに必死に隠そうとする。いきなり植木鉢を壊すほど暴れるのは珍しいと思う。

アル中を扱った映画として有名なのは「失われた週末」のほうだろう。この作品は、あそこまでの傑作とは思われていないのでは? スタンスに問題があったのかもしれない。ラストの展開に希望を持てなかったのも関係しているか?ラストで光がささないと、感動することは難しい。厳しい態度の主人公は正しかったかも知れないが、興行的にはマイナスだ。

自分自身はアルコール中毒ではないが、チョコレート中毒なので映画のヒロインと同じだ。年に一回くらい深酒をする。幸い普段は飲まないので効きが早く、焼酎数杯でフラフラになり量が少なくて済むが、学生時代はひどかった。 

患者さんでアル中の人には何度も遭遇したが、幸い暴れて話もできない程ではない人達だったので、命の危険を感じたことは少ない。物を投げられたりはしたが、何とかかわすことができた。やはり、日々の運動は欠かせない。本物の中毒者は縛り上げる必要がある。

結構用心深い人が多かった。こっそり飲酒し、酔って気が大きくなると態度が変わるので、態度で初めて飲酒が解るのがパターンだった。入院した病棟で上手に酒を隠し、酒臭いですよと指摘しても絶対に飲んでいないとシラを切るし、その言い訳に感心することも多かった(感心しちゃいけないんだが・・・)。

隠すことに関しては病的に知恵を出す。普段は大人しすぎるくらい大人しい人も多かった。ヤクザの下っ端のように、何かにつけて因縁をつけるクセのある人物も数割はいた。独特の論理で攻めてくるので困るが、結局は精神科などに回すしかないので、直接長期間にわたって関わった経験はない。できれば遠慮したいのが正直なところ。

基本的には飲酒を隠す場合が多く、普段は愛想笑いが目立ち、暴れる時は世間に対しての憤懣をぶつけるのが基本だと思う。会社に怒るなら、会社のことを延々と愚痴る。家庭の問題なら、夫や妻のことを徹底的にけなすのが普通だ。したがって、この作品の主人公はやや少数派のパターンではないか?

この種の映画では、登場人物はリアルでないといけない。少数派のパターンでは、観客はシラける。主人公がトンマな人物で失敗ばかり繰り返し、観客はそれを笑いながらもアル中の実態や、家族と友人の愛に感動するというのが受け狙いのパターンではなかったか?

また気になったのは、この時代の映画のほとんどはタバコを吸う際のマナーが悪い。人の前で平気で吸うし、吸殻もそこらにポイ捨てしている。特にアル中の場合は、アルコールを切らすとタバコに走っているので、激しいマナー違反をやっている。ちょっとの時代の違いで、マナーは随分変わるもんだ。

 

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