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2010年5月 8日

セントアンナの奇跡(2008)

- 惜しい題材 -

ニューヨークの郵便局に勤める黒人男性が、突然殺人を犯す。事件の裏には数十年前のイタリアでのいきさつがあった・・・、

セントアンナで実際にあったらしい虐殺事件を題材にした原作をスパイク・リー監督が映画化した作品。題材は抜群に面白く、感動も確実に狙えると思う。しかし、この作品は名作にはなっていないような気がする。

とにかく題材は素晴らしい。少々頭の足りない大男の黒人、ちょっと精神異常をきたした様子の少年、個性豊かな仲間、恐怖のシチューエーション、迫害の歴史、村人との交流。すべてが名作につながりそうだ。

戦闘のシーンは結構迫力があった。特にラスト近くでドイツ軍が攻めてくる場面は、次々仲間や村人が殺されて、実にリアルだった。ただし、リアルではあったものの、悲惨さをいかに表現するかについては、ちょっとセンスの違いを感じた。

細かい演出を省略したのかもしれない。

虐殺される人達は、おそらく胸を撃たれれば声を出せないで喘鳴をヒューヒューしながらあがくが、腹なら呻き声を出す、手足なら転がって暴れ悲鳴を出すというふうに、千差万別の反応を示す。いっせいに倒れてくださいなどという指示を出してはいけない。

前半の戦闘シーンは結構金がかかっていたように思ったが、やや迫力不足だったと思う。爆弾が飛び交う場合には都合の良い場所ばっかりに落ちるのはおかしい。めちゃくちゃに落ちないと不自然だ。

爆発で火柱や水柱が高く上がるが、横に広がらないのも不自然だ。実際の爆弾は横に爆風が拡がる。そのままだとスタントマンが危ないので、CGなどで処理する必要があるが、爆発のリアルさには心配りが必要だったと思う。

役者達のキャラクターが役に合っていなかったのかも知れない。個性的なキャラクターを設定していたはずだが、演出が自然とは思えなかった。せっかくの題材が感動にまではつながっていない。

主役と言えそうな、郵便局員は、もっと老けているようなメーキャップも望まれた。いっそ、別の役者を使っても良かったのではないか?名前を呼ばれるシーンから過去を回想して・・・そして別な俳優が戦場に立っているといった演出で、自然に解説できると思う。

スローモーション、早送りのような単純な手法を使って、感動につながりそうな演出をするだけでも相当訴え方が変わっていたような気がするが、あんまり小手先の演出は嫌ったのか?

アメリカにおける迫害の表現が挿入されてたが、必要だったか解らない。ストーリーを複雑にするのは、よほどの必要がない限り控えるべきだと思う。場所は現在のアメリカと過去のイタリヤに絞るのが原則ではないか?

近くにドイツ軍が潜んでいることが明らかなのに、村の祭りの会場の入り口の警備を黒人兵がするのもおかしい。姿が見えたら終わりなんで、祭りは遠慮するのが普通ではないか?

村人を追い払うためにパルチザンが銃を連射するのもおかしい。連射銃を簡単に撃つほど装備に余裕があるものか?連射銃は、当時そんなに多くなかったのではないか?そもそも発砲すればドイツ軍が偵察に来るはずだ。危険で、とてもできない。

各シーンの間の間というか、編集もやや冗長すぎる感じがした。もっと単純化し、後は観客の想像に任せたほうが印象も良くなるし、作品の品位を上げると思う。

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