映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主

  • 乙女座 AB型 どの占いでも最悪の運勢 内科クリニックやってます。

Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« あの日、欲望の大地で(2008) | トップページ | トリック劇場版(2002) »

2010年5月26日

フロスト×ニクソン(2008)

- ニクソンに存在感  -

若くして成功を収めた司会者のフロストは、ニクソン大統領へのインタビュー企画を思いつく。しかし、資金や協力者を揃えることに苦労し、破産の覚悟が要る。やっと会えたニクソンは極めて老獪で、インタビューにならない・・・

・・・主役はニクソンであった。若いインタビュアーに対し、いかに老獪に対処するかが、この映画の醍醐味であった。会談のほとんどはニクソンが有利な立場に立ち、うまく自分に有利な内容に持っていく、そのテクニックが素晴らしかった。実際のニクソンもタフなやり手だったらしいが、そこを上手く表現できていた。

もともとは舞台劇だったらしいが、いったいどんな劇だったのだろうか?舞台でやれるような内容とは思えないのだが・・・

この作品は恋人とみるタイプの作品ではないように思う。子供にもつまらなく写るだろう。でも40歳以上の大人なら、ある程度は興味深く観れるかも知れない。ノンポリの人には全く興味のない話かも知れない。大ヒットするタイプの映画ではない。最初からそうだ。

ニクソンのキャラクター設定が素晴らしかった。

実像はどうか知らないが、裕福ではあるものの大金持ちとは言えない家庭に育ち、セレブ達への反発心、負けん気の強さで這い上がってきたことへの自負をセリフで表現していたが、解りやすかった。実際には手の内を見せないために誰かに凄ごむようなことはしていないはずだが、それでは観客にニクソンのキャラクターが伝わらない。

ピアノを家族達の前で弾いてみせた後、長い沈黙をするシーンがあったが、あれで今後雲行きがかわることを観客はしっかり予感できた。あのへんの解りやすさも、この作品の良いところだと思う。あんまり芸術的表現に走られると解りにくくなる。

この作品では、関係者を擬似的にインタビューするシーンが挿入されている。実際の人物ではなく、今回演じていた役者達が話しているのだから、にせもののインタビューなんだが、違和感はそれほどない。ただし、効果的だったかは解らない。できれば本物達が話したほうが絶対に良いと思う。ドキュメンタリーにしたほうが、客は多いと思う。

多少は演出されたストーリーであるから、本物の出演は無理だったのかも知れない。インタビューする前には勝算がないといけない。何かの証拠は握っていたからインタビューを申し込んだと考えたほうが自然だ。最後の日の直前に調べて形勢を逆転させたなんて、実際にはどうか?

ニクソンは40歳前に副大統領候補になった人物である。運もあったのだろうが、相当な手腕の持ち主だったに違いない。でも朝鮮戦争やベトナム戦争などがなかったら、彼に支持が集まったかどうか解らない。ケネディが暗殺されなかったら、最初の大統領選で終わりだったはずだ。

若い頃のスキャンダルを乗り越えた手腕や度胸は本物だと思う。ガッツあふれる、ヤクザの若頭的なキャラクターの持ち主だったのかも知れない。テープに残された会話はヤクザ風で、あんまり上品な話し方ではなかったようだが、我々も飲み会の時などは似たようなものだ。上司の悪口のオンパレードだ。

実際のインタビューの時に、彼は本当に復権を狙っていたのだろうか?

引退後も各国首脳と会ったりはしていたらしいし、業績が再評価されたりはしたが、想像を絶するほどの前代未聞のスキャンダルにまみれた後では、普通なら完全な引退を決めると思う。でも、そこで復権を目指すくらいでないと、そもそも大統領にはなれないのかも知れない。普通のガッツではないのだろう。

ケネディだって選挙ではひどい違法行為をやっていたらしい。タフで、常識では測れないほどの熱情がないと大統領にはなれない。ウォーターゲート事件では実行犯がニクソンの想定外のマヌケだっただけで、警備員を殺して逃げていたら、大統領は今も大政治家として認知されていたかも知れない。

 

 

 

« あの日、欲望の大地で(2008) | トップページ | トリック劇場版(2002) »