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2010年3月29日

キャデラック・レコード(2008)

- 高級車の意味を考えた -

ポーランド移民のチェスは、キャデラックに乗れるような成功を夢見てレコード会社を起こす。まず売り出したのはギタリストのマディ、ハーモニカのウォルター。ついでウルフ、チャック・ベリー、エタ・ジェイムズ。彼らのレコードは旋風を巻き起こし、自然に白人と黒人がいっしょに踊る現象を起こし、社会の壁を突き破ったが・・・

ミュージシャン達の寿命は短い。ポピュラー音楽の場合は、クラシック音楽のように円熟を第一とすることはないので、新しさ、若々しさが特に大事にされる。ストーンズのように長くやれるほうが珍しい。一世を風靡した大スターも、いつのまにかうらぶれてしまう。歌手の魅力には年齢も大きく関係しているようだ。

チャック・ベリーの活躍によって人種の壁の一部が破られたという解説があったが、確かに公民権運動だけではなく、目だったアーチストの活躍も影響していたように思う。その辺の表現の仕方もなかなか優れたものだった。

Photo

ヘアスタイルも当時の黒人の状況を推察させる。彼がロックを作ったようなものだろう。

この作品は、でも子供には面白くないだろう。アーチスト達の楽屋受けに近い性格がある作品だし、同世代で体感したことのない人と、体感した人とでは評価が全く違いそうな性格の映画だと思える。恋人と観るのには、特に悪いとは思えない。

アーチスト達の間のライバル意識や、黒人だから味わわざるを得ない苦痛などの表現が素晴らしかった。酒や麻薬におぼれざるを得ないほど劣悪な状況が伝わってきた。その辺の表現が実に優れていた。

でもキャスティングを含めた全体の出来は、必ずしも完璧とは思えない。

作品の中でエタ・ジェイムズを演じていたビヨンセはプロデューサーも兼ねているそうだが、熱の入れ方がうかがえる。ソロで歌うシーンも多い。でも、個人的には自分がでしゃばらずに、やや出番不足くらいに止めたほうが、かえって魅力的に写ったのではないかと思う。

本物のエタは大変な肥満体だったらしいので、本来なら「ドリーム・ガールズ」で肥満体女を演じていたジェニファー・ハドソンのほうが適役だった。歌の質からいっても、ハドソンの曲に近いのでは?でも、まさかビヨンセが役を譲るとは思えない。

エイドリアン・ブロディは戦場のピアニスト役にはぴったりだったが、今回の役には細すぎる印象がある。音楽業界の雄は、普通はギャングに近いかギャングそのものという印象が欲しい。今回はミスキャストではなかったか?

音楽業界は栄枯盛衰が激しく、チェス・レコードは結局15年くらいしか営業していない。作品の中で高級車を乗り回しながら金に苦労している姿が度々出ていたように、実際にも自転車操業に近い状況だったのかもしれない。派手そうに見えて、出て行くものも多かったのだろう。

訴訟沙汰も多い。作品のラストで、いろんな訴訟に勝ったというくだりが出てくる。彼らにとって訴訟で勝つことは、我々よりも大きな意味があるのだろう。何と言っても動く金が大きい。そして訴訟社会なんで、勝訴を勝ち取ることが生きがいのような、我々には理解できない感覚がある。

大きな成功を収めたら、キャデラックを乗り回して調子こいてもいいのじゃないか?私もこだわりはなかったが、今乗っているミニバンにはいい加減に飽きてきた。子供の自転車を乗せられるように、家族全員が乗れるようにと、実用性ばかり考えるのは嫌だ。無駄にハイパワーのスポーツカーでも乗ってみたい。

ただし、大きな車になると、うちの路地に入れないという問題があるが・・・

子供の頃、カッコいい車に乗っていた社長さんが、会社が思わしくなくなって自殺したことがある。車は何だったか知らないが、大きな外車だった。キャデラックかもしれない。その中で、彼は焼身自殺を遂げた。何となく気持ちが解るような気がする。車には独特の執念、感傷が伴うものらしい。

もし失敗して金がなくなったら軽自動車もいい。もしくは健康とエコに目覚めてと偽って、自転車もいい。一発当ててやろうという波乱万丈の人生も面白いと思う。そのへんの野望を上手く表現したタイトルが、この作品で最も素晴らしい点だ。

 

 

 

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