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2010年3月 1日

点と線(1958)

- よく考えついたもんだ -

福岡市の海岸の情死事件と、汚職事件の関係を疑う刑事達が捜査をする。容疑者として疑ったのは出入り業者の安田。しかし彼は事件当時北海道に出張しており、複数の人物、乗船記録などからもアリバイは完璧で、捜査は打ち切りになろうとしていた・・・

・・・松本清張の推理小説の代表作。この作品はちょっと作り方が独特で、前衛芸術かぶれ?のシーンが多少見られる。まず、死体の上をカニさんがノコノコ歩くシーン。赤い色をバックに、死体のモンタージュ映像が重なったり離れたりするシーン。印象を強調しようとしたようで、推理小説の映画化には珍しい手法かと思う。

監督の小林恒夫は初めて知った名前だったが、たくさんの作品を作っているようだ。でも芸術的な作品は多くないようだが・・・

手法によって映画の印象も結構変わってくると思う。人生の辛さ、犯罪の誘因となる辛い過去を暴く作品だと、重々しく、重厚な感じの作品になるので、今回のようなシーンはご法度だ。汚職、完全犯罪などの現代的なテーマを扱うなら、表現も多少ケバい感じが似合うかも。安保騒動の時代の作品だから、どことなく過激な感じがウケルのでは?

ビートたけしが主演したテレビ物もある。ビデオ屋のコーナーで、この作品の隣に並んでいた。今度見てみよう。

この作品は子供には向かない。基本的に殺人が頻発するし、言葉遣いが古い、画像は安っぽい、テンポも多少違和感があるなど、子供が退屈しそうな条件を持つ。大人でも、さすがに古すぎる印象を持つのでは?

原作は1957-1958年に雑誌に掲載され、58年には既に映画化されている。本と映画を同時に売り出すという営業戦略もあったかもしれないが、当時の人気が想像される。

高峰三枝子の存在感が素晴らしかった。あまり笑みを浮かべない、表情も乏しい、でもその辺をセリフなどで適切に解説して補いながら、同情の念を感じざるを得ないよう演出してたようだ。彼女が真の主役だった。名前は知っていたし、「フルムーン」のコマーシャルは覚えているが、映画で印象に残ったのは初めて。

彼女の描き方が良かったので、作品の価値が高まったと思う。単なる謎解きでは薄っぺらな作品になる。情念のようなものを大きく扱ったのは正解だった。

山形勲も存在感があった。彼は色んな映画に出演しているが、これが最も印象に残る。恰幅、声、表情、ファッションなど全てがいかにもという感じだった。他の役人、警察の幹部、主演の若い刑事役などには多少の疑問が残った。セリフの言い方が、いかにも芝居くさく、実感を持ちにくい。加藤嘉や志村喬がニヤっと笑うような自然さが欠けていた。

そもそものアイディアの中心である、ある一瞬だけホームが空いてよく見える時間帯があるという現象には誰が気づいたのだろう?原作者か?鉄道オタクの友人か?そこから小説の題材にするということが凄い。見過ごしそうな小さな現象を、複雑なトリックにまで仕立て上げたこと、それを暴こうとする刑事達が苦労する様、それらのプロットが素晴らしい。

あんまり素晴らしかったものでテレビドラマなどでは模倣した作品も多く、今となっては陳腐な印象を受けてしまうくらいだが、当時は画期的だったのでは?

凝った構成は松本清張オリジナルの作り方かは知らないが、センス、発想の凄さを感じる。

DVDで鑑賞したが、カラーの色彩はあまり鮮やかではなかった。宣伝文句には「総天然色!」などと書かれていたようだが、この言い方自体が妖しい。かろうじて色がついているというのが正直なところではないか?ハリウッド映画と比べるとしょぼい。

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