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2010年2月16日

社長道中記(1961)

- 高い完成度 -

監督 松林宗恵 主演 森繁久弥

食品会社の社長 森繁はねっからの女好き。社長業の傍ら、バーのマダムとのお付き合いにも怠りない。大阪に出張する時にも、ばっちり逢引を手配する。列車の車中では美しい女性のお近づきになろうと細かい努力をする。しかし、賢い彼の奥さんは、お目付け役に真面目人間の小林桂樹をつける。女を遠ざけようとする小林と、社長の駆け引きが展開する・・・

・・・森繁と小林のやり取りが可笑しい。このシリーズは毎回のように会社が変わるらしいが、好きものの森繁、真面目な小林、お調子者の三木のり平などの役割分担だけは一貫しているそうだ。社長シリーズを観たのは初めて。この作品はレベルが高い。内容はくだらないのだが、作品としての完成度が高い。

くだらない内容。奇抜なギャグや、大きな冒険、戦いなどが全くないのに、観客が満足できるというのは凄いことだ。この作品ならもう一度観ようと思う。黒澤作品でも二度はいいと思うことが多いが、この作品はマンネリ具合が良くて、かえって新鮮だ。

森繁は私達の世代ではテレビの親子ドラマのイメージが強い。近年まで出演する作品をよく見ていた。この作品では彼がオーバーでないことが非常に良かったと思う。あの芸風はどこから出てきたのか知らないが、おそらく脇役として出演していた時代に自然に振舞いながらも可笑しいという芸風に皆が喝采を送って、自然と主役になっていった歴史があるのではないか?

いきなりスターになるためには激しいギャグが必要だが、森繁の場合は静かで、目立たないと言ってよいほど。ただ表情が適切で細かい演出が効いているので、クサクない。派手にやりすぎた演技は、後で観客をしらけさせてしまうと思う。消耗が早いのだ。

言葉遣いが可笑しい。奥さんに対しても「君」と呼ぶ紳士である。標準語に徹することは今は難しく、可笑しくすら感じる。関西弁がテレビを通じて我々の会話に入り込んで新しい標準語になっているからか?しかし、おそらく当時でも社長の口ぶりを可笑しく感じる人達が多かったのではないか。紳士面でありながら、しっかり色事に熱を入れるところがキャラクターとして可笑しいのかも。

三木のり平や小林桂樹のキャラクター設定も素晴らしかった。三木のり平のように器用なエンタテイナーは、なかなかいない。以前の堺正章や、今ならブッサンか?宴会でしか活躍できないような人物は、会社を舞台にすると面白い。

宴会で活躍する社員を描いたクレイジーキャッツの映画も、同じ東宝が作っていたはずだが、宴会の途中でスタジオに場面が変わるような無茶な演出はしないところが好感を持てる。

風景も可笑しい。まるで東南アジアみたいな街並み、ネオンが安っぽくて、まるで我が診療所の看板みたい。もっと金があれば当院もビジュアルに映えるものを作りたかったが、どうせ患者は来ないさと、ケチってしまった。

出張に特急列車を使うというのも凄いことだ。新幹線すらなかったわけだ。飛行艇で妻が駆けつけるというのも凄い。飛行艇は、おそらく今は自衛隊か観光目的以外にはないはずだが・・・

あんな時代に、出張先でゴルフをするくらいの余裕のある社長がいたのか?おそらく話から考えると雇われ社長でサラリーマンに過ぎないはずだから、もっと真面目に働いて、出張からも徹夜で帰って翌朝すぐ仕事するくらいモーレツでないと本当ではないはずだが・・・

でも、昔は確かにノンビリしていたのかも知れない。5時くらいに帰宅する社員も珍しくはなかったはずだし、今より将来に希望を持てたから、雰囲気として人を許せるような感じはあったのかも。今はミスをとことん糾弾し、相手の努力や気持ちなど微塵も考慮しないで権利を主張するスタイルが幅を利かしてる。

 

 

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