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2010年1月16日

アリスの恋(1974)

Photo1  

- 私に職探しをさせるなっ! -

アリスは少女の頃から歌手を夢見ていたが、結婚を機会に主婦業に専念し、ちょっと気難しくて無関心なダンナと暮らしていた。ある日、突然に、このダンナが死んでしまう。残された息子を養っていかないといけない。アリスは旅に出て、仕事を探すことになる・・・

・・・仕事なら、付き合いのある今の町で探せば良いのでは?でも、それじゃあ映画にならない。そこでロードムービーが誕生する。

でも、この作品は旅が中心ではない。モーテルで生活しながら、彼女はちゃんと仕事をして、そこで生活しようとする。ところが、言い寄ってきた男が曲者で、彼女は安心できない。その出会いが非常に劇的で、実によく設定されていた。嘘くさい感じが全くない。

俳優達の演技力や、監督の演出も的確だったのだろうが、最初の設定も不自然にならないように、よく考えてあったようだ。

助演者がそろっていた。ハーヴェイ・カイテルやジョディ・フォスターは監督が連れてきたのか知らないが、クリス・クリストファーソンも、当時の恋愛映画に良く出ていた俳優だった。トラックで暴走するだけの映画でもヒーローたりえるような、親しみやすいひっこんだ目が懐かしい。視野が制限されないのが不思議だ。

ジョディ・フォスターが大変な美少女だったことが解る。男のような声で話していたが、当時の彼女のマセたキャラクターが最も光っていたかもしれない。

主演のエレン・バースティンが解説で語っていたが、この作品の公開当時は、まだウーマン・リブの運動が活発だった頃だ。女性が一人で生きていくのは今なら普通だが、当時は未だ眉をひそめて見られる傾向があった。

今は身の回りにも一人親の家庭が非常に多い。女性が社会進出して、手に職を得るチャンスが増えたことや、社会全体の豊かさと風潮が重なって、昔よりも離婚が容易になった関係か?でも、子育てしながら生きていくのは、特に定職がない場合は辛いはずだ。

この作品の主人公は、手持ちの金がなくても実に前向きだ。時には涙を流してしまうが、何とかできるという自信と何とかするぞという気迫が感じられる。それがかっこいい。主人公の最大の魅力かも知れない。

もちろん多少の色気とユーモア、歌の上手さも必要だが、めそめそ泣いているヒロインでは観客の同情を得るに留まってしまう。拍手喝采を得ないと本当のヒロインにはなれない。アリスは皆の共感をえることができたようだ。

でも当時の風潮は良い影響をもたらしたのだろうか?

現代では、ともすれば家庭に収まる主婦をさげすむような風潮がないでもない。つまり彼女らは能力がないから家庭に収まっているんだみたいな感覚の人もいる。本当は能力的に差がないとしてもだ。

適度に社会に進出することは必要だが、主婦も大事だ。昔から耐え続けてきた女性たちの憤懣を和らげることは必要だったと思うが、程度を間違えると社会が成立できなくなる。

仕事で能力を発揮するのは良いことだが、社会に子供を与えてくれる貢献も重要なんで、3人生めた人が二人に、二人生めていた人が一人にといった具合に子供が減ってしまうと、今度は社会全体の活力が損なわれる結果につながりかねない。

もちろん女性は子供を生む機械ではないのだが、いかなる理由にせよ子供が減れば、その社会は地盤沈下することを覚悟しないといけない。正当な女性の権利を個々に主張することは正しいが、結果として社会が沈滞する覚悟も必要。

子供を生んだこともない私が言えることではないのだが、社会のために貢献することを期待してしまう。我々が生きているのは、ご先祖様が「こんな生活では、到底子育てなんてできないわ!」という状況で、どうにか子供を生み育ててくれたからだ。昔のように厳しい時代にたくさんの子供を生むのは勇気が要る。

もしかしたら、これからの理想の新アリス像は、ちゃんと仕事も得ながら、もしかしたら、もしかしたらだが、ハーヴェイ・カイテルとも、クリス・クリストファーソンとも、そしてバーの店主とも子供を作って、ラストまでに十人くらい出産し、だれが誰の子供だか自身も解らなくなるくらいの混乱のうちに映画が終わるような展開もありえるかもしれない。

もちろん冗談で、乱交しろと言ってるのではない。安心して子供を作って、育てられる状況が必要だと思うのだ。そのために母親がちゃんと生きていける社会保障制度が必要になる。子供を育ててくれるヒロインに職探しをさせるなんて可哀そうだ。社会が斡旋してあげる義務がある。

 

 

 

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