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2009年12月12日

スラムドック$ミリオネア(2008)

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- パワーが大事 -

クイズショーに出演して次々と正解し、ついにラストの賞金がかかるまでに至った青年が逮捕された。容疑は不正に答えを得たというもの。無学な青年が解答できるなんておかしい。警察で聴取をされる容疑者の口から出てくるのは、スラムで育った過酷な少年期の記憶・・・

・・・この作品はアカデミー賞を取ったが、別な作品のほうがレベル的にはずっと上だったと思える。例えば「レボリューショナリー・ロード」「ベンジャミン・バトン」などは、完成度がもっと高いのではないか?

ただし、インパクトはあった。映画産業が盛んなインドを舞台にしたからか、経済発展中の国が持つ独特の、そこならではのパワーと混乱ぶりを感じた。さらにインディアン・ドリームというか、昨今の好景気ゆえの欲望渦巻く熱気を感じざるを得なかった。

完成度よりもインパクトが大事なのかも知れない。同じ監督の作品、クローバーフィールドも完成度はそれほどでもなかったが、アイディアが単純で、とにかく面白かった。

かってハリウッド映画が持っていた特徴を、今のアメリカ映画でやってしまうと観客はしらけてしまう。極貧家庭はアメリカにも多いはずだが、慣れてしまっているのか、現実感はない。サクセスストーリーにも飽きてしまう。でもインドが舞台では深刻さと喜びの度合いが違う。死体がごろごろしていても不思議ではないからだ。

貧困の現状などを告発しても、映画としては魅力を失う結果になってしまう。映画の魅力は大事だ。観客をシラケさせてはいけないのだ。

経済発展は、それだけでパワーを生む。かっての日本もそうだった。海外に出て行かざるを得ないような熱情が生まれる時期には、悩みなどを感じている暇もないので、その時代に成長できることは幸せだ。インドでは今がまさにそのような熱情が渦巻く時だ。

いっぽうで混乱も生む。混乱に乗じて犯罪組織も力をつけるので、映画にあるようなギャング達がはばを効かす場面は多くなる。この作品のギャングも存在感があった。ギャングが活躍できるような混乱がないと、映画の舞台にはなれないのかも。

だから、多少作り方が安易でも、ギャグめいた笑いのセンスが悪くても、かっての日活の映画のように許せる。日活の映画は、この作品の匂いと似ている感じがした。青臭い演出や演技も、思い込みの強さやカッコ付けに免じて許せてしまう。そんな時代なのだ。モーレツなのだ。

成功を夢見る人がたくさんいる場所は、それだけで絵になる。

主演の青年の演技が上手いとは思えなかった。ヒロインも同様で、非常に魅力的だとは思えない。観ただけで圧倒されるような美女はたくさんいると思うので、他の女優ではいけなかったのか?

狂おしいほどの熱情を表現して欲しかった。多少演技が臭くなっても、セリフを抑えて、ただ内に秘めた怒りや、恋心をひたすら描いて欲しかった。観客は笑ってしまうかも知れないが。

ラストのダンスシーンは面白かった。踊るマハラジャなどでも観たが、やたら大勢の俳優が踊るミュージカルタッチの映画がインドには多いらしい。それを真似ていたのだろう。

浴槽に札束をまくシーンがあったが、あれは香港映画でよく見かける。香港映画の要素も組み入れて、何でもありなのがインド映画の特徴らしいから、そのへんも踏襲しているのか。

私も裕福ではなかったので、多少の熱情は持っていた。もっと金持ちになりたい、立派な家に住みたいと思っていた。しかし、自分らより前の世代はもっと悲惨な時代を過ごしてきたので、もっと激しい。自分の夢のためには理不尽さに慣れているというか、考え方自体が単純だ。

正直、彼らほど熱意が続かない。今のままでも悪くないじゃん、豊か過ぎるのでは?などと思う。私の子供世代はもっとそうだろう。遊んで生きていたいと考えても不思議ではない。

映画の若者と、なんと違うことか。

 

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