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2009年12月 4日

告発のとき(2007)

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- 良い仕事してます -

監督 ポール・ハギス

退役軍人の主人公は軍人一家に育ち、息子も軍人だった。ところがイラク戦争から帰ったはずの息子が行方不明。彼は息子を探しに基地を訪ねるが、息子は死体で発見され、死因には不可解な点が残る。彼は独自に捜査を開始する。息子はドクというあだ名だったらしいが、主人公には理由が解らない。麻薬に関わっていたという情報もある。麻薬がらみで殺されたのか?捜査が進む・・・

・・・監督のポール・ハギスは最近良い仕事を続ける売れっ子監督、脚本家。この作品も非常にレベルの高い仕事であった。

全体の構想が良かった。テーマを考えると、迫力ある現地の映像で観客を集めたいと考えるのが普通だが、派手な爆撃や凄惨な殺戮シーンは控えて、昔ながらの演出に徹している。その勇気に感心する。直接的な表現は、バラバラ死体の映像くらいか。サスペンスの要素を中心として親子の愛情が濃厚に感じられるような作りで、最近流行の映画とはレベルの違う、節度を保った作風であった。

したがって、悪く言えば迫力は足りない。サスペンス、推理のストーリーではあっても、恐怖におびえるような危機が主人公に襲いかかるわけではないのでハラハラはしない。軍から圧力が加わるようにするのは安易な演出だと考えたのか?軍人達も、事実を隠そうとはしていたが、脅そうとはしていなかった。たまたま主人公が退役軍人だったからか?

最近は似たようなテーマの作品が多い。主人公も過去の戦闘で心に何かの傷を負っているという設定が多いが、それが少々多すぎて食傷気味の感もある。適度に健康な主人公も自然である。

トミー・リー・ジョーンズの味が良い。近年の彼は渋さに磨きがかかって、映画のレベルを上げるまでの効果を持つ。本作でもタフさを持ち続ける軍人がぴったりはまっていた。いまだにきちんと身の回りを整頓するクセがおかしい。

シャーリーズ・セロンがなぜこの作品に出演してるのか理解できなかったが、美しすぎる彼女は化粧を制限していたようだ。真面目な女捜査官役をちゃんとこなしていた。でも、迫力のある陽気なデブ女でも良かったかも知れない。

出演していた若い軍人役の俳優達もなかなか自然で良かった。狂気の表現は少し不完全だったようにも思ったが、どぎつい演出にならないためには、そのほうが良かったかも。

この作品は家族でも観れないことはないと思うが、バラバラ死体が出演するので、小さな子供には向かない。恋人といっしょに観ることは可能だが、迫力やハラハラを期待する若いカップルには向かない。子供がいる夫婦には向く。子供の死を知った母親を演じるスーザン・サランドンが、軍人に向かって「あなたは子供がいないでしょう。」と鋭く指摘する時の目つきは凄かった。ギョロメが効果的だった。

イラク戦争については現地の情報もアメリカ軍からのものが中心になるので、よく判らない。面倒だから、こんな国は核爆弾でふっ飛ばしたいというセリフもあったが、正直な感想かも知れない。住民が戦士か一般人か判らない気味の悪い中で民主主義など通用するはずがない。

そんな国では兵士のモラルを維持するのは難しいだろう。女子供も戦士だから皆殺し、ついでに仲間をも殺すような人間でないと生き残れないのかも知れない。PTSDになる兵士が多いというのも解る気がする。

戦地では目の前にボール遊びの子供が来ても、絶対に止まってはいけない。自分だけならまだしも襲撃されれば仲間を殺すことになるから、可哀そうだが轢き殺すしかない。でも、その後に兵士が正気を保てるかは解らない。PTSDになる兵士は今後も多いだろう。

世界戦略のあり方も変わっているのか? 文明化されていない地域においては、現地の支配者を支配するほうが効率的だ。アフガニスタンも、最初は原則通りマスードのような現地の武装集団を援助していたようが、タリバンが相手ではアメリカ式の常識は通用しなかったようだ。ベトナム相手のような大兵力投入型に転換したようだが・・・・

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