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2009年12月22日

地上より永遠に(1953)

- 意外性で勝負? -

ハワイの部隊に転属してきた主人公は、かってボクシングで仲間を失明させている。新しい連隊では連隊長がボクシングをさせたがるが、主人公は頑固に拒否。すると激しいイビリを受ける結果となる。仲間はイタリア系の同僚のシナトラ君のみ。しかし彼もイビリの対象となる。

ある日、そのシナトラ君が殺される。怒りに燃えた主人公は復讐を計るが、自分も傷ついてしまう。部隊に戻れば裁判、営巣送りは免れない。そして、そんな時に真珠湾攻撃が始まる・・・

・・・この作品で驚くのは役者のイメージを変えた配役であった。フランク・シナトラといえばショー・ビジネス界の大物で、映画でもほとんどはミュージカル、せめてコメディにしか出ていなかったはずだ。それが全く歌わない作品で見事にはまっている。

ドナ・リードも良妻賢母の代表選手のようなイメージがある。まさか酒場の女役とは。当時は特に今よりも彼らの知名度が高かったはずだから、驚きがあったはずだ。今ならディカプリオがオースティン・パワーズ役でダンスするくらいのインパクトか?

彼らが本当に自分から望んで取った役なのか、それともスタッフ側からの希望だったのかは解らないが、シナトラに関しては自分から売り込んだと言われている。「ゴッドファーザー」の中で、マフィアと関係する歌手のフォンティーンが役を得るくだりがあるが、あれはこの映画をイメージしたのではないかという噂がある。

結果的には配役の意外性は効果的だったようだ。

テーマにも驚く。アメリカの軍隊を扱っていながら、賛美をしない作品は本当に少ない。たぶん軍からの圧力、軍人会などからの嫌がらせがあったはずだ。あちらの嫌がらせはすぐに銃撃につながるから、本当はこんなテーマは怖ろしくて敬遠したいと考える人が多いはず。

しかも赤狩りの時代の直後か最中の頃のはずである。右翼に睨まれそうな作品を、よく映画化できたものだ。裏工作~ギャング的な工作もあったのではないか?

印象的なシーンは多い。浜辺でバート・ランカスターとデボラ・カーがやらかすラブ・シーン、主演のモンゴメリー・クリフトがラッパを吹くシーン、シナトラが殺されるシーンなど。だけど、自分としてはこの作品はアカデミー賞に相当するようには思えない。意外性はあって皆が上手く演じていて、印象的なシーンの連続ではあるのだが、感動する点では今ひとつではないか?

告発を題材としているので、そもそも感動を狙うことは難しい。役者がいかに上手く演じようと、演出が素晴らしかろうとだ。不思議に思う。同年のアカデミー賞候補には「ローマの休日」がある。私としては断然ローマの休日のほうが楽しいし、全体の印象もいい。娯楽性は断然上だと思う。賞レースには政治的な工作があったのでは?

テーマも展開も子供には向かない作品。家族で観ても悪くはないかも知れないが。ローマの休日のような反応は期待できない。恋人といっしょに今この作品を見るのは頭がどうかしていると思われても仕方ない。でも名画ファンには最高の映画。

軍隊内でのイビリは日本だけの専売特許ではない。民主的で合理的なはずのアメリカでもあったはずだ。「フルメタル・ジャケット」などでも狂気を呼ぶような訓練が描かれていたが、人を殺す訓練をしていれば、当然ながら非人間的なことも行われるはずだ。勝ったから問題視されにくかっただけだ。

軍隊に限らず目的と手段を勘違いした連中は多い。学生時代の部活動では非人間的シゴキが繰り広げられていたが、何を考えてやっていたのか解らない。部の規律を守るため?戦力を上げるため?でも厳しいクラブでも、たいして強くもなく、連帯感も強くない弱い組織が少なくなかった。ただ考え無しに伝統でやっていたに過ぎない。

組織には独特の論理が働くので、よほど注意しないと目標から外れた理由で内部の出世が決まってしまう。仲間の心理を優先しすぎれば、わがままで依存心の強い人間が内部にはびこることも多い。目的に忠実な人間は逆にはじかれる可能性が高い。

そんな心配はないと皆が確信を持てたら、個々の力の限界まで発揮できて、最高に強い集団ができる。旧来のような伝統、内部の人間関係の恐怖で力を引き出そうとしても、それは長続きはしない。この辺を理解できていない連中がいまだに多い。一流企業でもそうだ。

この映画の視点は正しいと思う。勇敢で良き軍人は軍内部の人間関係ではじかれやすい。まともな兵士ほど死ぬ危険が高いと想像がつく。

 

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