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2009年10月20日

ジェネラル・ルージュの凱旋(2009)

- 深刻でない描き方が正解 -

ある大学病院の救急外来部長、速水先生のあだ名はジェネラル・ルージュ。断らない救急を目指して奮闘中だが、かなり独断的なので内外に敵が多い。ある日、病院の倫理委員長を務める田口医師の元に告発文が届く。速水部長は業者と癒着し、不正に利益を得ているという。さっそく捜査が開始されたが・・・

・・・海堂尊のベストセラー小説の映画化。ぼんやりした田口医師と、強引な白鳥との掛け合いが面白い。

この作品では血を見るシーンが結構多いので、小さい子には向かないかも知れないが、家族や恋人といっしょに観るのも可能な作品だと思う。特に前作を見た方にはおススメ。

速水部長にはモデルがいるらしい。どこの病院にも救急や脳外科、心臓外科には名物医者がたくさんいて頑張っている。断らない救急は、熊本市内の場合は熊本医療センターが有名だ。

映画よりもずっと狭い外来で、大事故が発生したら絶対に対応できないと思えるくらいの設備だが、病院全体のサポートが効いているのだろう、断られたことがない。

設備的にはもっと恵まれた病院もあるのだが、あっさり断られる。昨今は保険支払い側から入院制限を要求される関係か、金にならない患者は断られるケースも多い。保険側の浅はかな指導が医療崩壊の大きな原因になっている。良心的にやっていると赤字になり、批判される。

いっぽう、我々末端の診療所は、受け入れを拒否されると対応の仕様がない。救急隊員もそうだろう。骨盤骨折や脊髄損傷の患者が来たときは、本当に困る。自分が診ていても何もできないのに、受け入れを断られたら、どうするんだ?

拒否が多い根本的理由は、人員に余裕を持たせないという政策のせいだと思う。常にギリギリの人員でやっているから、事故が重なると断らざるを得ないのだ。

医療崩壊は、国民が支持した政府によってもたらされたものだ。言い換えれば国民の望みの結果なので、無茶をして現場で頑張る医者は無力感に襲われやすい。しわ寄せを一気に引き受けても、たいして評価されないのでは辛い。それに崩壊したといっても、外国と比べればマシだ。

この作品の救急外来の描き方は、ちょっとリアルさに欠けていた。「この患者、死ぬかも。」という恐怖、緊迫感が足りない。患者側も大人しすぎる。謎解きが中心の作品なので、救急外来の問題点を中心に描く必要はないが、怒鳴り声、罵声が足りなかった。「オレの親が死んだら、お前を殺すぞ!」などと言う家族は多いのだが、あっさりしていた。

婦長や部長が静かに部下の手際を見ているシーンがあったが、あれも不自然である。真っ先に患者の元に走るのが通常の姿である。余裕を持って眺められる人間がいるほど現場に人はいない。

速水部長を演じた堺雅人は、ミスキャストのように感じた。救急で独裁的にやれる人物は、ヤクザそのもののような迫力が必要だ。やさ男の堺ではイメージ的に合わない。

全体に深刻さが足りないような気がしたのは、自分の職業のせいか?白い巨塔のような怖さがない。でも本格サスペンスでは客を呼びにくいので、こんな雰囲気に止めたほうが正解だったのかも知れない。

 

 

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