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2009年9月10日

オーストラリア(2008)

- 驚きの映画 -

主演 ニコール・キッドマン ヒュー・ジャックマン

戦争の直前、イギリスから美しい婦人がオーストラリア内陸の牧場にやってくる。帰ってこない夫を追ってきたのだが、夫は現地で殺されていた。婦人は牧場に残る決心をするが、ライバルの牧場から妨害を受ける。頼りになるのは、ならず者のヒュー・ジャックマン、それとアボリジニの少年。婦人は様々な敵、困難と戦い抜いていく・・・

・・・・違和感を感じた。「風とともに去りぬ」風の叙事詩を期待していたのだが、CGを使って部分的には漫画風とも言えるような雰囲気にしていた。同じ監督の「ムーラン・ルージュ」では違和感がない演出だが、この映画のテーマにはふさわしくない。地球儀を持ち出して解説してはいけない。観客を子ども扱いしたいなら別だが。

良かった点はアボリジニの少年を肯定的に描いていたこと。ヒュー・ジャックマンの生き方に対して、「お前は空っぽだ。」とアボリジニが批判するシーンなど。

最悪だったのはニコール・キッドマンをキャスティングしたこと、もしくは彼女のキャラクター設定。彼女こそ、スカーレット・オハラ以上にタフでクールな女性を演じられる女優だと思う。彼女に合わせて、作品のテーマを変えてもよかったのでは。彼女なら、敵も味方も日本軍も、アボリジニもコックもカウボーイもまとめて皆殺しにして、ひとり大地にたたずむことができそうだ。

牛を追って砂漠を旅するのは命がけの仕事だが、彼女には悲壮感が感じられなかった。残酷な現実、厳しい環境に対して人間が感じる感情をそのまま表現すれば、この作品の質も随分違ったのではないかと思うが、彼女のキャラクターは、そんな旧式の叙情性とは違ったものなのか?

日本軍が、あれほど大規模に爆撃できたのか?当時の戦力では、停泊中の軍艦を沈めるのが関の山で、民間の施設を爆破するほどの火力は持っていなかったような気がするが、私の思い過ごしかもしれない。広大な大地の国の街並みに爆弾を落とすなんて、どんな戦略的必要性があったのかも判らない。

- (9月10日16:30)訂正。検索できた範囲では、主に港湾内の連合軍が攻撃対象だったように記載されているが、飛行場や兵舎などにも攻撃があったはずなので、街中にも被害が出た可能性は高い -

アボリジニの描き方には驚いた。

妖しげなポーズで神秘性を表すのは悪いことではないが、彼らの本質を尊敬して描いていたのか判らない。ただ、怪しげなだけではいけない。彼らが尊ぶものをテーマにしろとは言わないが、敬意を表すべきである。

歴史的に考えれば、ほとんどの期間は一方的にアボリジニは殺され、収容所に入れられていたはずである。教会でさえ布教の一環として白豪主義の片棒を担いでいたのが事実だと思う。この作品のように好意的な人物達が皆無とは言わないが、極めて少数派であったはずである。嘘くさい内容を堂々と演出できるのは、戦争当時のハリウッド映画のようだ。

本当なら、悪業の数々を正直に見せるべきだ。銃の練習でアボリジニを殺す、気の向くままレイプや人狩りをする様を描いてから、それに反発する少数派の主人公達を描くべきだ。日本兵がアボリジニを殺すなんて、あったかも知れないが、大量殺戮者の子孫が堂々と描けることではない。もちろん我々も殺戮者の子孫なんだが、描き方がひどい。日本兵だけが悪人になってる。

いくら何でも、その辺に無理があるので、戦時中ならともかく、この作品は人には勧められない。子供にはいいかもしれないが、恋人といっしょに見るのは厳しい。まったくアーパーな若者なら感動することもできるかもしれないが、普通は無理だろう。おそらくオーストラリアでも笑われたのではないか?この映画は、アーパーな人以外には勧められない。

映像は非常に美しかった。カメラマンの腕も良かったのだろう。アメリカ西部のモニュメントバレーそっくりの風景や、あきれるほど広い砂漠など、風景を見るだけでも充分に意味がありそうだった。

あんなに広い大地をみたら、原住民を殺して放牧をしないと損する気持ちになるのだろうか?殺しても、どうせ誰も見てないという感覚が生まれるのかも知れない。

 

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