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2009年9月 2日

ブラインドネス(2008)

- 意外性 -

突然ある男が視力を失う。彼は眼科を受診するが、そこの待合にいた人達や医者などが次々と同様の症状を呈する。原因不明の伝染病だったのだ。町中が視力を失った人達であふれ、政府は患者を収容所に閉じ込める。収容所の中では患者達が食料を奪い合い、殺人やレイプも横行する。主人公達は、これに立ち向かう・・・

・・・この作品は、あんまり宣伝を観た記憶がない。題材も目立たないので、俳優が目が見えないことを演じるつまらない作品だろうと考えてたが、盆休みにたまたま待ち時間が発生した関係で鑑賞したところ、結構まとまった作品だった。

日本からは木村佳乃が出演していた。なぜ日本人なのか、ちょっと気になった。麻疹の流行が日本人から始まったことに関係しているのか、それとなく人種的偏見があるのか?

ダニー・グローバーやジュリアン・ムーア、マーク・ラファロなどの一流どころも出演していたし、途中の荒廃した街並みの遠景、ストリートのシーンは、CGかもしれないが結構大がかりな撮影をやっていたように見える。意外に金をかけて作ってあった。

役者達の演技には満足できた。ついついオーバーすぎる演技が出そうだが、適度にに判りやすく、節度を保って盲目の状態を表現していた。

普通なら主人公の夫婦は険悪な関係で、日本人の夫婦は愛し合って対照的、苦難を乗り越えていく中で助け合うことを学ぶという話が多いはずだが、今回の主人公達は最初は理想的、途中もかなり努力していた。意外な設定。

テーマは単純で、「見えないことで見えてくる人間性」と、「容易に、それをも失うこと」か。セリフで売るタイプの作品ではない。恐怖感をいかにリアルに演出するかが決め手になる。眼が見えないことによって発生しそうな状態を上手く話として成立させていけるかが、作品の出来に関わる。

もっと別なテーマを考えても良かったのではないか?失われない愛や人間性が最後に勝利を生むことをメインに、様々な形での危機を乗り越えて旅をする物語のほうが面白いと思う。収容所に留まっていては限界がある。

第三病室の‘王’が暴走する話には無理があったかも知れない。まず第三病室が食料に最初に近づけるかどうか、銃を持った男のそばにいれば殺される可能性が最も高くなるので仲間になるかどうか、眼が見えない状態で誰かと戦おうと考えるかどうかなどが違和感があった。

収容施設の管理者達との戦いが中心で、中のいざこざはマイナーな対決にするのが自然だったかもしれない。自然でないと観客がしらけてしまう。

汚さや臭いの表現にも若干の問題を感じた。ハエがたかっていたら自然で、より気持ち悪い状況が表現できる。不衛生にしていたら、たかっていないはずはないし、衛生的状態を保つためには視力が必要なことが多い。

いっそのこと、究極のバイオレンス映画にするのも面白かったかもしれない。主人公の女性が敵のアジトに押し入って、次々と殺しまくる映画は凄いだろう。「お前らには私達の悲しみが見えないのだ!」が決めゼリフになる。「手前ら人間じゃねえ」でも良い。シャベルが武器だ。ああ怖ろしい。

さて、視力を失ったらどうすべきか?まず路上をうろうろしたりして体力を消耗することはすべきでない。転落でもしたら大怪我するからだ。スーパーに殺到して、中で手にいる物をあさることになるのでは?だから、スーパーの中はもっと混雑していないとおかしい。

おそらく銃を持った奴らが少数内部に立てこもり、周囲にはおこぼれを狙う多数の人達。そしてそこらじゅうに死体の山と食い散らかした袋があるのが自然だ。

皆が視力を失った状態で人間性を保つのは難しい。食料を独占したり誰かを支配しようとは思わないだろうが、絶望感に打ちひしがれるだろう。

 

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