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2009年8月26日

ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2009)

- 実験的手法 -

ベンジャミン・バトンは老人のような姿で生まれたために捨て子にされ、施設の管理人の女によって育てられる。徐々に体が若返り、成長していく中で、死に行く老人達、幼なじみのデイジー、初恋の女、ボートの船長らと出会い、別れを繰り返す。デイジーの記憶と、彼の日記の中で彼の人生が語られる・・・

原題では数奇なケース(症例)という言い方になる。奥が深、く味わいのある作品。ストーリーは単純で、もともとの原作がフィッツジェラルドの短編小説だからか。それに色々な味付けをして映画化したようだ。時代背景からのノスタルジー、様々な不幸、出会い、恋愛などなど。

この作品で驚くのは、顔と体の映像をくっつける映像技術。ブラッド・ピットの顔を特殊メイクで年寄りにして、アンバランスな体とくっつけてあるはずなんだが、あまり不自然さが感じられない。普通なら顔と体の向きが微妙に食い違うところをCG処理している。

Photo

挿入されるエピソードの中には、ストーリーとは関係が少ないものもあるようなのだが、それらがあることで話に奥行きが出ているように思う。雷に打たれる男の映像は、ちょっと観客を笑わせる効果と、悲しさ、哀れさなどをかもし出す。

映画の冒頭で述べられる逆回転時計の話も、作品全体の悲しい雰囲気作りに効果的だった。ハリケーンカトリーナの悲しい記憶も効果的。うまく盛り込んだことで、映画の高級感がかもし出された。

途中、特に面白いシーンがあった。デイジーがけがをするくだりだが、色んな偶然が重なって事故にあうことを、くどいほど解説していた。あのシーンは人生の偶然さを解説する目的で挿入されたのだろうが、他のシーンとは調子が異なる部分だった。あれで良かったのか判らない。

ブラッド・ピットも映画のコンセプトに合わせているようで、非常に表情が少ない演技だった。泣くのは船長が戦死した時くらいか?別れの時には悲しげな表情を少し浮かべるだけ。それが適切だったのかも判らない。

人生を描く作品ならば、淡々と描くスタイル、ほんわかとするスタイル、悲しさが全編を被うスタイルなど、コンセプトの設定が大事だ。一般的に成功しているのはチャップリン映画や「フォレスト・ガンプ」のような喜劇スタイルであるから、この題材の場合も喜劇スタイルを選ぶべきではなかったか?

老いや若さがもたらす滑稽なエピソードを挿入すれば、笑いながら共感する人は確実に増えたと思う。悲しいテーマこそ、おかしなエピソードで彩るべきだ。

悲しい別れがあっても人と自分の人生を愛し、懸命に生きろという単純なテーマを、特異な設定、様々なエピソードで語る実験的な手法。かなり成功していると思う。でも、心にしみいる悲しさや、爽やかさを伴うような味わいまでは至っていないような気がする。

我々はついつい後ろ向きに考えてしまう。後悔や非難にばかり熱中して自分の拠り所を確保しようと、いじましい強がりを繰り返すのだ。私は特に後ろ向きに加えて「下向き」とさえ言えそうだ。

家族で観る映画ではないような気がする。大人限定だろう。恋人と観るのはおススメ。

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