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2009年7月18日

P.S.アイ・ラブ・ユー(2007)

- 助演が素晴らしい -

脳腫瘍の夫を亡くし、若くして未亡人になった主人公は、あまりの不幸に呆然として社会復帰できない。そんな彼女に、亡くなった夫から手紙が届く。生前に彼が手配していたらしい。手紙には、次には何をしなさいという指示が書かれていた。「p.s.アイ・ラブ・ユー」の文句と共に。

指示にしたがって、彼女はカラオケで歌い、アイルランドに旅行し、新しい趣味を始める。よく生活できるねって私は心配になったが、生命保険か何かの補償制度だあるんだろう。

彼女の友人達や母親らの暖かい援助もあって、主人公は徐々に自分を取り戻していく。夫の手配は、彼女が精神的に立ち直るべく、綿密に計画されたものだったのだ・・・

・・・この作品にはアイルランドの女性が書いた原作があって、ベストセラーだったそうだ。女性作家らしい、美しい話だった。

アイルランドの風景が素晴らしい。まるで公園の中にいるようだ。主演の二人が出会う場所は、実際の撮影場所も公園の中だったようだが、それ以外の普通の農村の風景も美しい。風をよけるためだと思うが、畑の周囲を固める石の壁が見事だ。

日本にも、田舎の方には段々畑を石段で作っている所がある。傍から見れば美しいが、作り上げるのにはどれくらいの労力が必要だったかと思うと、先人の苦労には敬意を表したい。そんなにして作り上げた畑が、今は後を担う若者もいないので、草ぼうぼうになっているのだが・・・

Ps2

夫役のジェラルド・バトラーの演技と、登場の仕方が良かった。主人公を怒らせて懸命に弁解する姿がいかに人間的に素晴らしいか、魅力的かを充分に表現していた。彼の表情がまた、いかにも気のいい人物という雰囲気で、男女を問わず好印象を抱かせそうなものだった。実に好演。

CGを上手く使えば、彼の存在を主人公が感じる具合をもっと上手く表現できたかも知れないと感じながら見ていたが、このままでも充分に女性の涙を誘うに違いない。奇をてらわない昔ながらの映像のほうが、安心して見ていられるのかもしれない。

主人公のヒラリー・スワンクも良かった。でも、とびきり魅力的に演じていたとは思えない。演技は多少下手でも、もう少しカワイイ女優のほうが印象を強くしたのではないか?

不幸に見舞われた時に、「あんなか弱い女性が耐えられるのか?」と心配になるか、もしくは「タフなボクサーあがりの女性だから、きっと試練を乗り越えるだろう。」と思われるのかは、過去の作品のイメージが関係する。演技の良さよりも、イメージがそうするのだ。したがって、彼女はミスキャストだったと断じたい。

彼女の日本版の声優も、少し声の出し方に問題がなかったか?

母親役のキャシー・ベイツは満点に近い。強さと、悲しさ、愛情を表現して、この上ない。

風変わりなバーテンダーを演じていたハリー・コニック・Jrの存在意義や、彼の演技ぶりについてはよく解らなかった。この作品は女性のための映画という性格を持つので、彼に女性がどのような感覚を持つのかが大事である。彼が心配りが効く人物だったら、直ぐに新しい恋が芽生えそうな感じがして、ただの恋愛ドラマになってしまうが、づけづけとモノを言う男であったので、そんな安易な関係にならないで済んだことは良かったと思う。

アイルランドのパブで出会うシンガーは、おじさん過ぎて引いてしまう女性もいるのではないんかい?と気になるほどだったが、どうせ私には女性の感覚は解らない。あんなオヤジは、きっと汗臭くて、シラミか何か持ってそうだぜと忠告しておこう。

勤務医時代に経験した、腹痛でやってきたイギリスの旅行者は臭かった。ちゃんとした人で、確か大学教授か何かの偉い人だったのだが、肥満体で毛むくじゃらで、エコー検査では所見が見えなくて苦労した。やっとこさ胆石らしいと判断できたが、「こんなゴリラなみの体型に、通常量の薬で効くのだろうか?」と心配になるほどだった。

外来には消化器科のドクターもいたのだが、彼らは上手に敬遠して、損な役割は下っ端の私のほうに必ず回ってくるのだ。内服薬を処方してみたものの、果たして家まで堪えきれたろうか?・・・とにかく欧米人だからきれいとは限らない。

パートナーに死なれると、ショックは大変なものだ。

最近亡くなられた患者さんは、夫が旅行先で急死した方だった。夫の同僚から夫の急を知らせる電話がかかってきたが、彼が何を言っているのか、冗談なのか本当なのか、よく解らなかったと話していた。

夫の葬式や子供の仕送りのお金があるのか、預金の残高や、それを自分が引き出せるか解らないので、節約のために葬式は止めようかなどと考えたそうだ。夫婦は運命共同体なので、依存度の高い女性は回復に時間がかかるだろう。

救急外来で急死するのは、ほとんどは年配者だが、時々若い人への説明が必要になることがある。妊婦さんが亡くなった時などは、喜びから不幸に急降下するので、話すのも辛い。彼らがその後、どんな状態になるのかを良く知らないのだが、うつ病にならないほうがおかしいと思う。

残る人のために、心配りをする余裕があればいいが、大抵は自分自身が参ってしまって、相手のことにまで気が回らない。この作品は、夢物語に近い。

この作品は、家族で観る作品ではない。女性専用、特に独身の女専用に近いと思う。恋人といっしょに観るのにも向いている。男性の観客には解らない部分で、女性は納得し、共感してくれそうな気がする。子供には向かないだろう。

 

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