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2009年7月24日

レボリューショナリー・ロード(2008)

主演 ケイト・ウィンスレット

ニューヨーク郊外の一軒家を買った夫婦の物語。夫は長時間かけて会社に通勤し、面白くない仕事をこなし、ちょいと秘書とアバンチュールを楽しんだりする。妻は家事をこなすだけの毎日に魅力を感じられないでいた。 倦怠期のせいか、夫婦の間でも険悪な会話が繰り広げられる。 生きている実感が得られる生活を求めて、夫婦は思い切ってパリに移住することを計画する・・・・

・・・・前知識なしに観たら、意外な佳作だった。特に主演のケイト・ウィンスレットが素晴らしい。近年の彼女は悩む主婦の役が続いているが、この作品での彼女は今までで最高の存在感を示していた。それもそのはず、彼女は企画の段階から深く関わり、実際に製作の中心にさえなっていたらしいのだ。

若い頃の彼女は「タイタニック」のイメージが大きかったので、イメージに潰されてしまうのではないかと思っていたが、意外な実力者で、しっかりしたセンスを持つ女優だったようだ。夫が芸術肌の映画監督であることも良い方向に働いていると思うが、企画力、文芸への造詣、いろんなセンスを持ち合わせた人物であると思える。向こうのスターは、自分で自分を売り込み、企画に参加していく企業家のような人が多い。

昨年から彼女は、この映画でゴールデングローブ賞、次の映画でアカデミー賞の女優賞を取っているから、まさに絶好調の状態だ。それだけの力があると思う。

この作品では共演者がディカプリオだった。スターなので宣伝効果はあったが、ディカプリオの存在感はそれほど感じなかった。演技は非常に上手くて自然ではあったものの、この作品はあくまでウィンスレットが中心だったようだ。

ただし、ウィンスレットの演技はややオーバーだった。最初から狂気じみた不機嫌さを見せすぎていたような気もする。口げんかをしながら徐々に興奮して狂気じみていくような順序だった演出があれば、もっと自然だったのでは?いきなり演劇で失敗するシーンを出さないで、日常の仕事に嫌悪感を感じていることから描いておくべきではなかったか?

そして、仲が悪い夫婦は、客の前ではにこやかにしていることが多い。その辺の見かけ上の仲良さを見せるとリアルだったと思う。

さらに交際を始める若い日の映像は冒頭に持ってくるとおかしいと思う。途中で「あの頃は生きている実感があった。」と話す時に出せば効果的だ。過去の映像は現在と解消させるのが原則だから、明るい未来に期待を抱いていた表情と疲れきった現在の表情をかぶらせる時に使うべきだ。編集には難がある。

50年代の雰囲気を再現するために大変な工夫をしたようだ。車や通勤客の衣装はもちろん、家の構造、仕草や話し方まで綿密に検証しているらしい。その効果はある。重厚な感じが漂っている。

日本人からすれば戦後アメリカが最も光っていた時期で、アメリカ人は全員が自信に満ち、豊かさを満喫し、更なる繁栄に希望を持って生きている、要するに我々とは人種が違うんだと感じていたはずなんだが、実際は想像と違う面もあったようだ。今日では、この作品のような会話は珍しくない。聞きたければ、我が家に来れば簡単に聞ける。

私がクリニックを開業したのも、家内が脅迫めいた言動を取ったからだ。勤務医の妻で安定した状態だが、家事や子育てばかりの毎日に希望を見出せなかった妻が「生きてることを実感できる生活」=開業医の妻を望んだようだ。彼女は開業で盛り上がって、おかげで子供ができたことまで映画と似ている。

もしかしてウィンスレットは私のブログを読んでいるのか? 

開業しても夢のような人生が来るはずはないと私が言おうものなら、「意気地なし」「覇気がない」「夢がない」などと、ないない男呼ばわりするので、最低限のリスクに抑えてかろうじて現実的なレベルの開業に成功した。結果的には無計画の冒険ではなかった。

こうして私はディカプリオよりも魅力的な男になれた(反論は無視)。

ともかく、私の場合は妻が子供を産んでくれたので感謝している。冒険をする必要が出たら、やはりすべきなのかも知れない。たとえ勘違いが根底にあると解っていても、踏み切って悪くはない。ひどい目に会ったとしても、退屈はしないだろう。

映画で登場していた夫婦は、結局の行動は狂気じみてはいたが、一般的にはごく普通の夫婦と言える。貧しい国の人達から見ればバカな考え、何を悩んでいるのだ、何が不満なのだと言いたくなる状況だが、本人達は真剣に悩み、より良い生き方をしようともがいている向上心ある人達である。 

狂人の客がはっきり言葉に出して批判していたが、普通の安定した生き方は何かしらの我慢をし、冒険から逃げていることは間違いない。それに対して、どのように現状を分析し、どう対処するか? 感情的にならないようにはすべきなんだが、なかなかそうはいかない。そのへんの表現が、この作品では非常に上手かった。

原作が素晴らしかったのだろう。

この映画は結婚前に見て欲しいのだが、そうはいかないかも。子供には全く向かないので、家族で観る作品ではない。倦怠期の夫婦がみるべきかどうかは事情による。喧嘩の材料になる可能性もあるので、この作品について話す時は、よく状況を考えてからにしたほうがいい。

「レボリューショナリー・ロードどう思う?」と、奥さんが聞いてきたら用心すべし。今の安定した生活に飽きた、希望に満ちた生活を求めたいと喧嘩を吹っかけている可能性もある。

 

 

 

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