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2009年6月 4日

JUNO/ジュノ(2007)

- 新しい感覚 -

高校生のジュノは妊娠する。相手は同級生で、バンド仲間。最初ジュノは中絶を考えるが考えを改め、子供を欲している若い夫婦に養子縁組することになる。幸い親の了解を得ることもできて相手の夫婦とも仲良くなり、万事順調にいっていたはずだったが、思わぬ事態が発生・・・

感覚的に新しい映画。若い世代が見れば共感するだろうと思う。家族で観れる作品だと私は思うが、あまり一般的ではないかもしれない。恋人と一緒に観るのはお勧め。

ジュノはギリシア神話の女神ヘラのラテン読み(するとユーノーか?)らしい。結婚の神様、怖い奥さんを代表するキャラクターなので、この作品のテーマには向いているかもしれない。

一般に娘が妊娠したら、親は怒り、大騒ぎをすることが多いと思う。社会的責任をどうするかが子供の父親に求められるし、対処法を含めてたくさんのことを決定するまでに殴り合いくらいは発生してもおかしくない。ところが、この映画の家族はいたって平静である。責任のことなど全く会話にも出なかった。

最初から相手の同級生に責任能力がないと判っていたからということもあるかもしれない。でも、娘の親が子供の父親と話をしようとすらしないのは、いくらなんでもおかしくないか?アメリカであっても、これは特殊な状況だと思う。

登場人物は皆が自然な演技であった。主演の演技も、セリフも自然で、脚本のセリフには相当工夫したのだろう。ドタバタコメディにしてもいい題材だが、あえてそんな路線を避けたことが成功している。妊娠する娘が、妊娠して初めて恋心を理解することができることがよく分かった。実際に昔の見合い結婚などは、そんな感じだったのかも知れない。相手と深く関わることで初めて自分が相手に抱いていた感情を理解できるのだろう。

語り口がまた良かった。映像を絵に代えた導入部。時々挿入されるヘビメタやスプラッター映画などは、内容からかけ離れた分だけおかしい。

一種の胸キュン成長物語である。確かに主人公は学ぶものがあった様子。登場人物達が昔と違ったセリフをはき、泣きわめいたりしなかっただけだ。考えてみれば、昔は子供の妊娠に関して冷静さを欠いていた。不倫や未婚がからむと、周りが大騒ぎして悲劇を生むこともあった。子供のため、生まれてくる赤ん坊のためよりも、世間体を気にし過ぎていたと思う。

倫理と成長、権利と社会の安定、そういった多くの面で最善の選択は何かを考えるべきだが、考えが足りない人が多いのだ。自分もそうだろう。自分の娘が若くして妊娠したら、平静を保てるはずがない。

生まれてくる赤ん坊のためには、家庭が精神的にも経済的にも安定し、健全な成長を育む場所であることが望ましい。でも、実際のところ昔と比較にならないほど豊かで安定した現代でも、子供の皆が健全に成長しているとは言えない。多少はマシというだけだ。

それに、昨今の少子化は激しすぎる。まず生むことを優先し、後のことはまた考えるのが正しい選択だとも言える。「そんな無責任な」などと言っていては、やがて数的に社会が成り立たない面がある。倫理は、社会経済が成り立って始めて存在しうるのに・・・

最後に主人公と恋人がギターで歌うシーンは美しく、心温まる場面であったが、さすがに無理に作った感じは否めなかった。もっと時間をゆっくりとって、ゆっくり演奏を始めるべき場面であった。

それにしても生まれてくる子供に対しての責任は本当に何もないのか?金持ちの女性にあげたからいいじゃんって、本当にそれでいいの?私が赤ん坊の親なら絶対にそうは思わない。この映画は理解がありすぎるように思う。

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