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2009年6月26日

ステップフォード・ワイフ(2004)

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- 犠牲と開放 -

ニコール・キッドマンが演じるのは、テレビ局の有能なディレクター。得意の絶頂で新番組を紹介していた彼女だったが、思わぬ失敗で会社をクビになり、うつ病になってしまう。治療目的で引っ越した先は、ステップフォードという住宅地。豪邸が並び、スキのない美女の奥さん達が仲良く暮らす美しい町。でも何かがおかしい。奥さん達は完璧すぎる・・・・

・・・ステップフォード・ワイフという言葉があることを知らなかった。たぶん原作の小説がきっかけになって作られた言葉なんだろう。上の写真の中心の人物を除いて、皆が美しく、輝かんばかりだ。

この作品は面白かった。おそらく色気のつきだした小年少女、恋人同士、大人が観れば結構楽しめる作品であろう。しかし、後で述べる理由により、夫婦で見るのは差し控えたほうがいい。子供にも向かないかも知れない。

作品自体はまとまりがあって、結構なデキだった。適度の皮肉、ユーモアが感じられた。この作品の前に一度映画化されているそうだが、そちらはスリラーとして描かれていたらしい。この作品はコメディの要素が大きい。特にベット・ミドラーとオカマの友人の役割が大きかった。

美しく、あくまで整った家、絵のような奥さん達が並んでダンスを踊ったりするシーンはおかしくもあり、美しかった。絵のように楽しげだったが、異常ではあった。ティム・バートン監督の作品に出てくるパロディ調の50年代のアメリカの風景と似ているが、あれほどの毒々しさはなく、あくまで再現した感じであった。もっと毒を付けても良かったのでは?

せっかく再映画化するなら、毒々しいギャグを満載にしてバートン風を狙ってもよかったのではないか?もしくは、かってのように隠された陰謀を探る本格的サスペンスタッチを強調しても良かったかも知れない。それらを彩る美しい風景や、建物、懐かしい雰囲気があれば、かなりの盛り上がりが期待できる。

ニコール・キッドマンの演技に感心し、初めて女優としての魅力を感じた。ただし、彼女以外の人が演じたら、作品はもっと良くなっていたかも知れないと思った。例えばシャ-リーズ・セロンやキャメロン・ディアスではどうだったろうか?

ニコール・キッドマンは強い意思と激しい野心の持ち主であるはずだが、キャラクターとしてはクール・ビューティーが本来の姿である。冒頭の冷酷なディレクターには合うが、その後のシーンにはいっさい合っていなかったかもしれない。度胸でカバーしていただけだ。シャ-リーズ・セロンなら、夫を思いやる表情をしても絵になるし、少なくともトム・クルーズをステップ台にするような冷酷さは持っていないだろう。

この映画のステップフォードは、もともとはスッテプ・オン・トム・クルーズからきたと言われている・・・うそです。

私だけかもしれないが、彼女の役に対して同情を持つことはできなかった。冒頭での登場の仕方がギャグめいていたからか、彼女の雰囲気がそうさせるのかは知らないが、「かわいそう」という同情を得るキャラクターではないような気がする。皆が彼女の不幸を笑う映画にするなら、彼女は適役だ。「ワーキングガール」でシガニー・ウィーバーのやっていたキャラクターには向く。

でも、この作品のキャラクターは同情を狙っていたように思える。それなら、他の女優のほうがいい。もちろんキッドマンの美しさは、金髪の白人の奥さん達の中でもひときわ美しかったが・・・

歌手のフェイス・ヒルも出演していたが、こちらはより色気がある懐かしいタイプの美女だった。戦後の最も良い時期の美人の雰囲気を上手く再現していた。スーパーで会釈しながらすれ違う奥さん達の映像はなかなか良かった。

この作品の意味は、時代によって随分と違うと思う。ウーマンリブの時代には、女性の解放を謳うテーマがあった。現代だと、逆に昔の女性が良かったともとれるような、懐かしい感じがする。でも、ステップフォード・ワイフが素晴らしいとは思えない。無理を感じる。

いまさら女性達に、あのように暮らせとは言えない。彼女らにも自由に生きる権利があり、夫にかしづいて暮らすのは現代的ではない。ただ、あんまり自由に活動されると子供達にしわ寄せが来る。夫婦仲にも良い影響はないだろう。もし妻の自由のために夫婦喧嘩をやれば、子供の心を傷つける。離婚は精神面の負担が大きいし、ましてや子供には凄まじい影響を与えてしまう。

不景気の昨今では、奥さん達も汗水たらして働かなければ、ご主人の給料では子供の塾の費用も出ないこともありえる。家事に専念してはいられない。そんな面もある。

もしかするとステップフォード・ワイフ型の母親は、子供達には良ったかも知れない。少なくとも自分達が愛されていることを実感しやすい状況ではあったはずだ。家にいなけりゃ、もしかして母親は子供よりも自分の世界が大事なのか?子供の世話は嫌いなのか?と勘違いする子供もいるかもしれない。つまらない勘違いでも、結構影響はありえるのだ。

だからといって、奥さん達を家に閉じ込めるのは良くない。お前が全ての犠牲になれ、あんな機械のような妻になれ、母親になれとは言えない。そんな風に求める男性はいないだろう。昔から、そんなにはいなかったのではないか?

私の子供達は長男と末子で12歳も年が離れているので、家内は20年以上も子育てをするはめになっている。もともと要領が良いほうではないので随分と苦労しているようで気の毒だ。買い物や子供の世話については、かなり私が代わってやっているつもりだが、それでもいつも文句を聞かされている。夕方まで寝ているから起きてからは忙しいのよって教えてあげたいが、そう言うとケンカになる。

仮に私自身が母親なら、子供の成長を最優先し、自分の人生が台無しになっても全く構わないと思う。薄汚くしわがれていっても、子供の成長に期待できるなら、私は構わない。だが、そんな考え方を自分の奥さんに強制はできない。私の母親は、本当に身を粉にして働いていたので私はとても尊敬していたが、だからといって私の母のように働けとは言えない。彼女の能力で、やれる限りのことをして欲しいだけだ。

残念だが、子育てのやる気を欠いている親は多い。ステップフォード・ワイフそのままではいけないが、少しは参考にできる部分もないのかしら?・・・ってなことを言うと、きっとケンカになるんだろうね。・・・全部じゃない、少しは!って言ってるだろうが!人の話を聞けっ!ってなパターンで。

こういう話題を避けるためには、この映画を夫婦で観ることは避けたほうがいいかもしれない。離婚覚悟でいるなら、ぜひ観て欲しい。良いきっかけになるかもしれない。

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