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2009年4月22日

トロピック・サンダー(2008)

Benn

- 役者業に専念せよ -

落ち目のアクションスター、下品なだけの肥満体コメディアン、役に異常にはまり込む俳優、ラップミュージックスターを主演にした映画が撮影中だった。しかし撮影は役者達のまとまりがつかず、予算オーバー。プロデューサーは怒って監督を強迫する。監督は役者達をジャングルに置いてけぼりにして、必死の演技を撮影しようと考える。

ところが、そこは麻薬組織のテリトリーだった。撮影どころか地雷で吹っ飛ばされるやら、次々と人質になって身代金を要求される始末。しかし、製作者側は保険金での儲けを狙って、彼らを救出する意志は全くない。

役者達による本物の人質救出作戦が開始する・・・

・・・ベン・スティラーの構想による作品。子供には勧められない。恋人と「今日はくだらない映画を観ようね。」と断って観る分にはいい映画かも知れない。でも、作り手のセンスが違う気がする。

基本的な構想は良かったが、脚本に問題があった。主役らが勇敢すぎた。活躍することは必要なんだが、勇敢すぎると笑いを半減させる。逃げ惑うほうが、喜劇役者にふさわしい。恐怖の表情で笑わせることを原則にしないといけないのに、この作品では真面目にアクションをやっていた。それでは、観客がどういう視点で映画を観ればいいのか解らなくなってしまう。

生首を持ち上げるシーンでは、いくらなんでも本物と気がつかなければおかしい。人の頭は非常に重いので、高々と持ち上げるには相当な腕力が必要だ。質感で解る。それに死んだ人の顔をアップで写すのは、気味の悪い趣味である。肉食人種の子孫でないと理解できないギャグだし、欧米人でも嫌悪感を感じる人が多いのではないか?生首は後ろから写して、気がついていないドジな主人公を笑えるようにすべきだった。そして、気がついてビビル姿を笑わせるべきだった。

スター達が各々問題を抱えているという設定は理解できたが、この描き方が大事だった。上手く描けば同情することができて、最後の成功に生きてくるが、同情しようもない描き方では、最後の満足感は望めない。

したがって、出演者は一見スターでも、離婚寸前、破産寸前、ヤク中の末期などの問題に手を焼いていて、解決の糸口を見出せないで入ることを丁寧に描くべきだった。描くのは難しくない。情けなくて笑えるようにすればいいのだから。そのためには、例えばエージェントが出てくるシーンはカットして良い。あのエージェントは失敗だったと思う。

主に監督主演のベン・スティラーの問題だと思う。主役はドジこいて人を笑わせないといけない。パンダと戦うシーンがあったが、必要だったろうか?パンダが東南アジアに出現するのは、おかしくないか?パンだの格好も必要ない。

逆に必要なのは、ジャック・ブラックと皆がケンカするシーンだ。ジャック・ブラックのキャラクターが生きていない。彼が麻薬に対する行為は、ギャグにはなりにくい。麻薬はギャグにするにはシリアスすぎる。観客の中にも笑えない人が多かったと思う。例えば、彼がアル中だったなら比較的マシだったが・・・

役者がそろった場合に、当然出てくるライバル意識が表現できていなかった。くだらないことで競争する本能がでないとおかしい。もったいない感じがした。

ライバル意識が友情に変るようなエピソードでもあれば、後の印象がいい作品になれたかもしれないが、いきなり助けようと意見が一致するのはおかしいと感じた。助けなければ自分達が破綻するというような、切実な理由が欲しかった。

主役が捕まる必要があったかどうかも解らない。脱出するためにはヘリのパイロットが必要なので、パイロットを救出する作戦に出るというのなら納得がいく。武器を持たずに武装した連中を相手にしようというのだ、なぜ主役の俳優を救う必要がある?

仕掛けは良かった。「プラトーン」の名シーンが基調になって、最初と最後でパロディのシーンが2回繰り返される仕組みになっていたが、これは美しく撮影されていたし、意味があったと思う。そのほかにも有名な役者が何人もチョイ役で出演していて、笑わせる効果があった。

また、アクションや戦闘シーンの舞台設定や、小道具などに関しては完全にプロの仕事だった。本物の戦争映画と同じレベルの仕事をしていた。小道具さんたちは、この作品を観て満足してくれたろうか?

ベン・スティラーを始めとして、コメディアンから監督業までこなす人物は多いが、監督としても一流になるのは少ない。チャップリンは珍しい例であったようだ。ベンよ、役者業に専念すべし。

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