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2009年4月14日

レッドクリフ前編(2008)

- 企画の意図は? -

中国全土の覇権を目差す曹操に対して、劉備を中心とする軍団は敗走するしかない状況であったが、軍師の孔明のアイディアで呉の国との同盟を目差すことになる。

呉には将軍の周愈がいて、軍事訓練をやっていた。内部の反対派を押し切って同盟が成立し、戦いが始まる。曹操軍の見せ掛けを見破った周愈は、最初の陸上戦にカメの陣形を提案する。はて?カメとは? 

戦いが始まって、敵の将軍は、自分達がカメ型の陣形に誘いこまれたことに気がつく・・・

・・・三国志の大きな戦いである赤壁の戦いを中心に描いたアクション大作の前編。今(4月現在)は後編が公開されている。しかし、私はこの作品の意図を測りかねた。ジョン・ウー達は、どのような企画で製作を始めたのだろうか?

三国志関係の作品ならば、中国や日本ではある程度のヒットは確実に狙える。登場人物には知っている人も多いし、もともとの戦い自体が興味深いエピソードに満ちているからだ。さらに、それを新しいCG技術で作れるならば、きっと迫力の点で今までの映画を凌駕し、空前のヒットも狙える。そんな風に考えたのではないか?

この作品は駄作ではない。CGは細やかに作られていると思う。でも、香港のギャングと歴史上の人物とでは、描き方が違ってしかるべきである。全体の雰囲気をどのようにするかについて、個人的には不満を感じた。

家族で観るのは、悪くはないような気もする。剣を鮮やかに操っていて、ただのチャンバラよりは見ごたえがあると思う。ただし、ドラマが素晴らしいとは言えないので、恋人といっしょに観てもしらけるかも。もしかするとパート2では盛り上がるのかも知れないが、今のところはテレビドラマのレベルで観たほうがいいと思う。

私としては、別な作風を想像していた。

①全体的には乾いた作風、涙にくれる人々を覚めた目で見つめるパターン。徹底したリアリズム重視の、歴史叙事詩。どんどん人が傷つき、死んでいく。でも、めそめそしない。

②仲間や家族を殺されて復讐に燃えるねっとりした作風がひとつ。メロドラマ狙い。アップの映像のオンパレード。滅びる者の悲劇中心。日本人好みだ。

③叙情性を重視し、風景が動かないで人々が行き交う構図を中心とするパターン。残るのは、大河揚子江という絵巻物タイプ。オーケストラが鳴りっぱなし。

④歴史上の人物を、現代風にアレンジし、意外に繊細だったりする面を強調する。BGMにはロック。

前半部分では周愈がヒーローのようだが、彼の描き方が丁寧で、勇敢にして冷静で頭が切れるといった具合に、武将としての理想像で描かれている。彼と張飛、関羽のような有名な個性との描き方が非常に難しい。この作品を観た限り、少なくとも前半部分では中国のテレビ局が作った英雄物語のドラマ以上の表現はなく、要するに勇敢な英雄としか扱われていなかったようだ。

曹操の扱いは難しい。彼を悪のダースベイダーとして扱うか、極めて優秀な戦略家として扱うかによって、作品のレベルが違ってくる。最近の流れからいうと、曹操が圧倒的な能力を持つスーパーヒーローという作品のほうがレベル的に高い気がする。敵役が強く、したたかなほうが作品が盛り上がることは間違いないので、この作品での曹操の人物像には不満を感じた。

曹操は、おそらく実際にも織田信長のように頭の切れる人物だったはずだ。呂布や董卓のような殺気だった連中に伍して確実に自分の力をつけていったのは、無能な人物や荒武者にはできない芸当である。

劉備と孫権の描き方も、テレビドラマの延長のような感じがした。もちろん、今までと全く違った人物像で描く必要はないが、パターン化された表現は避けて欲しかった。全員が中国系アメリカ人や日本の役者で、しかも現代劇しか演じたことがないメンバーをそろえたら、ちょっと違った映画になったかも知れないが、それは冒険になるかも。

孫権の妹と周愈の妻の描き方、配役にも感心はしなかった。妹役は小柄すぎると思った。怒ると怖そうな姉御風の女優が最適だと思うが、ヤンキーの娘みたいな軽い感じがした。周愈の妻は美人だったが、熱情の持ち主のような印象は受けなかった。日本の女優には、もっと合う人がたくさんいると思う。

剣劇のシーンが最悪だった。スーパーヒーローが夢のような力で敵をバッタバッタとなぎ倒すのは見事だったが、あんまりやりすぎると現実感が薄れるし、荒唐無稽な娯楽時代劇の怪しい雰囲気が漂ってしまう。「あんなことできるわけないよな。」と、せせら笑う客が出たら、もう他の部分のデキに関係なく、作品のレベルが落ちてしまう。

敵のひとりを囲んで黙って見てないで、いっきに皆で刺し殺そうとするのが普通ではないかと思うのだが、香港映画のように並んでやられるのを待っていては笑ってしまう。チェーンを使ったアクションも、戦場以外でなら効果的だが、戦闘シーンではおかしい。スピードとリアルさを第一に考えるべきだった。

剣劇のシーンは短めに整理し、隊列、陣形、人馬のダイナミックな動き、風景などに時間をそぐべきだったと思う。特に、大勢の集団が正面衝突した場合には、勢いで圧死する兵隊も多かったと思うが、さすがにスタントマン達も圧死の表現はできなかったのか?

中国の客は剣劇が好きかもしれないから、彼ら用には別のバージョンが必要だろうが、日本にはアクロバット的な剣劇は向かない。

役者にも不満を感じたが、特に中心になる金城武とトニー・レオンは、私の感覚では軽すぎるし、見た目だけでヒーローたりえるような迫力はないと思う。トニー・レオンは特に顔が普通すぎる。見た目が大事なのだ。三船敏郎は見た目も尋常ではなかった。

パート2には期待するが、映画館には行かないでおこう。損したくないから。

 

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