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2009年4月28日

スウィート・ノーベンバー(2001)

- 彼女こそやり手 - 

やり手の広告屋のキアヌ・リーブスは、自動車免許の更新の時に偶然シャーリーズ・セロンと知り合う。彼女の申し出は、「1ヶ月間自分と暮らし、今までの世間との関係を絶つ」という無茶なものだった。

偶然が重なって、彼はこの申し出を受ける。同棲しながら、彼女の周りの人々と関わり、自分を見つめなおす。その中で、彼女に魅かれていく・・・

・・・やっぱ、たまにゃあラブストーリーも観ないと、生きていくうえでの潤いのようなものがないもんね、実生活で潤いが全くないので観賞。

シャーリーズ・セロンは大スターだと改めて感じた。

映画評論家の書いた古い本を読んでいて知ったことだが、最初はスターという存在はなかったのに、役者に注目が集まるようなシステムを作ったところ非常にヒットしたので、どんどんスターを作るようになったと書かれていた。観客の注目が集まり、同情してくれるように誘導すれば、自然とスターは出来上がり、作品もヒットして皆が満足するというわけだ。この作品のセロンは、まさにそんな存在だった。

この作品の中のシャーリーズ・セロンは、あふれんばかりの魅力がいっぱいで、まさに彼女のために、彼女を引き立たせるために作られたような作品だと感じた。輝かんばかりの笑顔、彼女の所作を追うカメラワークに乗せられて、我々はどうしても彼女に同情しないといけないようなふうに、うまく持って行かれる仕組みが出来ていた。昔から、映画はそんな風に作られているのだ。

現実世界では色んな人間がそれぞれの役割に応じて、いろんな動作や表情をしているのだが、例えば憧れの美少女にはついつい目が行ってしまう。若い頃は特にそうで、何のことはない、ちょっとした彼女の動作に誰でもドキッとした経験があるだろう。でも、やがてそんな女性にも飽きが来るのか、たいして感動しなくなるのだ。我々の視覚認識機構は、実に奥が深い。

シャーリーズ・セロンは、もともと非常にかわいらしい顔立ちとスレンダーボディの魅力的な女性であることに加えて、ガッツと演技力も凄いので、本当にスターになるための要素を兼ね備えている感じがする。客に受けるためには、きれいなお尻も見せる「サイダーハウスルール」し、醜いデブにも変身する「モンスター」し、クレバーな対処の仕方を感じるとともに、ガッツにも恐れ入る。

でもって、私はまんまと彼女の魅力にはまってしまった。本当に美しく、かわいらしい。ちょっと歯の出た表情で、まんまとキアヌ・リーブスの関心を得るのに成功したように、私のハートにも入り込んだのだ。彼女と、製作者達の仕掛けたワナに、本当にまんまとはまってしまったのだ。

うがって観れば、浜辺で犬とたわむれる彼女の仕草は、完全にカマトトぶった、カワイコぶりっ子(懐かしい言い方)のそれだ。いくらなんでも、あんな安っぽい仕草に騙されるような俺じゃないぞって思っていたが、気がつけば見事に騙されていた。騙されると解っていたのに・・・そうだ、思い起こせばオイラはいつも騙されていたんだ・・・

家内にもそうだった。こいつは喰わせもんだと思いつつ、まあ他に俺で満足してくれそうな人もいないし、しょうがないかと思ったのが運の尽き。

彼女は満足なんてことは露ほども考えておらず、冷静な計算をしていたようだ。私のような甘い考え「相手への思いやり、信義を忘れてはいけない」「人との関係を計算づくで考えてはいけない」では、スキあらばなんでもくすねてしまおうと狙っている連中には付けこまれる。それだけのことだったんだ。

かって、私は映画でも何度もスターの魅力と、スターに注目を集めさせる手腕にやられてきた。マリリン・モンローの映画は、ほとんどがそうだ。おかしいくらいぶりっ子で、あんなのに騙されちゃいけないんだが、やっぱ実にかわいらしい。「誰がために鐘は鳴る」のイングリッド・バーグマンも非常に古いんだが、魅力的だった。「ローマの休日」のヘップバーンもスターとして、この上ない。

最近だとアンジェリーナ・ジョリーの演出も凄い。さらに、大スターにはなり損ねたかも知れないが、「氷の微笑」のシャロン・ストーンなんか、アクの強い個性があった。シャーリーズ・セロンは、オーソドックスなタイプのスターだ。

スターシステムに乗っていることが、ちょっとアクドイような印象さえ受ける作品だし、テーマが陳腐と言えば陳腐に過ぎない。やり手の仕事人間が、小悪魔的な魅力の謎の女性と知り合い、やがて深く理解しあい、愛し合うってな話は多く、新鮮味はない。

でも、それでもシステムは有効だ。主役のキャラクターと、風変わりな申し出の意外性があれば、持ちこたえることができる。充分に美しいラブストーリーになっていた。

この作品は家族で観るのには向かないと思うが、子供でも多感な場合は涙してくれるだろうし、悪い影響はそれほどないと思う。恋人と観る映画としては最高に近い。重すぎず、長すぎず、適度に陳腐で、適度に新鮮。

音楽も、ちょっとアザトイ感じがする。美しい音楽なんだが、サンフランシスコを舞台にするのにケルト風のエンヤの曲では、多少無理はあった。

 

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