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2009年2月 4日

ザ・マジックアワー(2008)

- 設定はバツグン  -

三谷幸喜監督の作品は、ほとんどがグランドホテル形式で、大勢の出演者達が、それぞれの個性をオーバーに演じながら、意外な結びつき、意外な展開をするところが魅力である。最近の作品は、ほとんどそうだった。今回はどうだったろうか?

「スカゴ」というふざけた名前の町に君臨する西田敏行親分は、かっての舎弟が急成長をしたため、最近やや落ち目であった。愛人の深津絵里は、若くハンサムな妻夫木聡とイチャイチャしている。しかし、この現場を子分達に見つかってしまう。妻夫木はきっと殺されてしまうだろう。

ところが苦しまぎれに妻夫木が考え出したのは、親分が会いたがっている殺し屋を引き合わせるから、自分の命は見逃して欲しいというアイディア。これで、なんとか生きのびることに成功した。しかし、問題の殺し屋は正体不明で、当然呼びようもない。そこで妻夫木は俳優をだまして殺し屋の役をさせることを思いつく。

かかった役者は佐藤浩市。売れない俳優なので、怪しい妻夫木の素行も気にしつつ、殺し屋役を演じる。妻夫木と、その仲間達は別な映画の撮影現場から資材を盗んだりして、ドタバタ劇を演じながら、なんとか佐藤と西田双方に気づかせないように努力する。しかし、徐々に言い訳にも限界が見えてきて・・・

この映画は、まあ家族で楽しめると思う。基本的には中年以降の観客が最も楽しめるはずだが、若い人が観てもまずまず。傑作とは言えないような気がするが、失敗作ではない。恋人と観るのも悪くないと思う。

設定には当然ながら無理があった。

①西田敏行親分には、震え上がらせるような迫力はなかった。病後の彼は迫力がなくなった。本当に怖そうな人物が必要だった。ビリーワイルダーの「お熱いのがお好き」ではスパッツを履いたギャングは最後までニヒルで本物の怖さがあった。

②省略できる部分が多かった関係で、話のテンポが遅め。

③前置きが長くなかったか?普通なら妻夫木が捕まってリンチに合う場面から始まると思うが、前置きは必要だったのか?

④ラストで出てくる殺し屋は必要だったのか?退場の仕方も爆笑モノと言えるほどおかしくはなかった。実は殺し屋は伊吹吾郎と期待していたのだが、残念だった。

⑤なぜ皆が逃げないのかを説明させる必要があった。つまり、代わりばんこに人質になるような設定もバカバカしくて、どんでん返しの効果も狙えて良かったのではないか?

面白さのために無理な設定も必要だが、できれば自然なほうが良い。あまりに無理がかさむと、観客がのめりこむ要素を失ってしまう。観客の経験に近いものがないとダメだ。

売れない役者が何かをやる話は、今までにも何度か観た記憶がある。売れないことのおかしさ、状況を飲み込めていないトンマな行動のおかしさなどが、いつも爆笑モノの場面を作っていたが、今回の設定はバツグンに良かったのではないか?

本当に怖い状況の中でギャグを飛ばすと、「このバカ!ギャグなんか飛ばしてる場合かよ!」という感覚が観客に浮かぶ。状況が深刻なほど、ギャングが怖いほど盛り上がる仕組みだ。役者が迫力たっぷりにコワモテを演じるほど笑える。

ギャグ、パロディの部分は良かった。カサブランカはともかく、メリー・ポピンズなどの映画は全然関係ないのだが、関係なく登場しているところが、また面白い。マジック・アワーという言葉自体の妖しさも良かった。

とにかくアイディアは素晴らしかった。私が資金担当者でも、「この企画はイケル!」と信じたに違いない。話の展開のスピード、無駄をはぶくことなどが適切だったら、もっと面白くなったのでは?

 

 

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