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2009年1月10日

ビッグフィッシュ(2003)

319263view008 ― 出来のよいファンタジー ー

これはできのいいファンタジーであった。

主人公はホラ話で有名な男だ。巨人と旅をし、サーカス団に所属し、夢のようなプロポーズをして結婚した話をする。皆が幸せに踊りまくる夢のような町で暮らさないかと誘われた話を披露する。

最近の彼は発作(肺癌?)が頻発し、命は長くはなさそう。そのため、長年断絶していた息子が妻を連れて訪れる。息子は父親のホラ話が嫌いである。もっと真実に基づいて真面目に話せと怒る。父親は、お前は理解力が足りないと答えて関係は平行線のまま。でも、息子の恋人は父親の話に興味を持つ。

そんなある日、息子は倉庫で書類を発見する。ある屋敷の権利証らしいが、何の目的で書類があるのか解らない。もしかすると父親の浮気に関係する書類か? 息子は、問題の屋敷を訪れてみることにする。

ティム・バートン監督の作品の中では、表現の手法がマトモというか、一般人に近い作り方をした印象。いつもの原色ギラギラの建築物はなかった。代わりに、変に傾いた屋敷やシャム双生児、巨人などの異形な要素は登場し、監督ならではの部分も残していた。でも、この作品は主題がいたってマトモだった関係か、手法も一般人に近づけてくれたのだろう。解り易い作品だった。

夢あふれる作品で、観終わった後、物悲しいが爽やかに近い気持ちになれた。監督自身も親子の断絶、無理解を経験しているらしいが、親子で常に理解し合えるのは難しい。思春期には、ほとんどの場合はいがみ合いか無視という関係に陥りやすい。世代が違えば考え方が違っても当然だし、成長の過程では意見が偏ってしまうのも当然である。でも、そんな中で理解できたと感じられると、非常にうれしい。

フィールド・オブ・ドリームズも親子の断絶がテーマのひとつになっていた。最後に理解し合えると、我々もほっとする展開になる。この作品も、最後にそんなシーンがあった。母親やちいさい子供達は、また見方が違うだろう。純粋にファンタジーとして観るかもしれない。

映画の面白さの中心は、主人公が経験する旅の奇想天外ぶりだ。

原作はダニエル・ウォレスという人が書いたベストセラー小説だそうだ。構想が良いと感じる。いかにも映画向きだ。

巨人の大きさは、単純なテクニックで巨大に見えるだけなんだが、周囲の風景の美しさや色彩の鮮やかさもあって、非常に美しい映像になっていた。迷い込む町で、皆が楽しげに踊るシーンは夢のようだ。大戦後の夢あふれ、健全な精神に満ちていた時代の雰囲気をうまく再現していた。

主人公の若い頃を演じたユアン・マクレガーは、私は好きになれなかった俳優だが、この作品での彼は素晴らしかった。どこか人の良さそうな、真面目そうな感じがする。普通なら毒のない役者としてすぐに消え去りそうな印象があるのだが、何か表現力に優れた点があるのだろう。大作映画に次々と主演している。

ただ、とぼけた表情のジョニー・デップがこの役を演じていたら、もっと大ヒットしたのではないかと思う。いかにもホラ話で人を煙に巻きそうな、ふざけた怪しげな雰囲気が今の彼にはある。

マリオン・コティアールが、なぜか息子嫁として出演しているが、ピアフの時とは体格が違う別人にしか見えない。嫁としては理想的な美しさと優しさ、理解力を表現していた。相当な演技力があるからできることだろう。

アルバート・フィニーが年老いた父親役をしていたが、彼はもともと外斜視の傾向があったのか? 目つきがあやしい話しぶりが非常に効果的だった。

ジェシカ・ラングが母親役を演じていたが、キングコングでヒロインをやっていた女優が、いつのまにかこんな良い役をすることになって、時代を感じた。かってのセックスシンボル的女優も、落ち着いたということか。

私は自分の父とは割に良い関係を続けてきた。でも、中学高校時代は始終イライラしていた関係か、口もあんまりきかない時期があった。実際に興味が違いすぎて話すこともないから話さないという面もあったが、「このように生きなければならない。」のような話になるのが嫌で避けていた面はあった。

仕事をするようになってからは、年に1-2回しか会えないし、特に会いたくもない時期が続いたが、だんだん父も年を取って体に不調を訴えるようになってからは頻繁に話すようになった。自分も父親になって、子育てがうまくいかない現状をよく話す。よき相談相手だ。父が長生きしてくれて本当に有難い。心から感謝している。これは幸せなことだ。なかには何かのきっかけで断絶したままという家庭もあると聞く。

意地を張らないならいいじゃないか、と傍からはこういった関係の家を批評してしまうが、実際にこじれた関係は簡単には修復できない。孫の誕生や病気などをきっかけに関係が戻る事がないと、そのまんまで終わることもありえる。そして、こんな関係は次の世代に持ち越される可能性も高い。今度は孫が自分の父親との関係がおかしくなり易いのだ。不思議だが。

断絶に対する恐怖感が誰にでもあるので、この映画の展開には皆がホッとする。この作品は誰にでも勧められる。

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