映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主

  • 乙女座 AB型 どの占いでも最悪の運勢 内科クリニックやってます。

Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« 乱(1985) | トップページ | 蜘蛛巣城(1957) »

2008年12月29日

ブラック・レイン(1989)

- 設定ミスあり? -

ニューヨークのデカのマイケル・ダグラスは、偶然立ち寄った店でヤクザの殺し合いのシーンに遭遇する。激しい銃撃と追跡の末、彼らはヤクザの松田優作を逮捕する。

ちょっと日本への旅行も兼ねて、松田を護送したはずのマイケル達だったが、偽刑事にだまされて、まんまと松田を逃がしてしまう。大阪府警に行った彼らは、バカにされて口惜しいかぎり。

彼らは日本の刑事、高倉健に監視されながら、捜査の端っこに置いてもらうことになった。そんな中で、あるクラブで抗争事件が起こる。そこから、松田達がニセドル札を作ろうとしていること、親分の若山富三郎と抗争していること、恋人は小野みゆきであることなどが解る。

ところが、町を歩くマイケル達は松田に襲われ、同僚のアンディ・ガルシアは殺されてしまう。

看視の目を盗んで若山親分を訪れたマイケルは、松田が現れるヤクザの手打ちの場を教えてもらい、こっそりと忍び込む。そこには同情した高倉健もライフルなんか持ってやってきている。規則違反だし、ライフルどっから持ってきたんだあ?

とにかく、手打ちが決裂してもめている最中に、マイケル達は乱入し、やくざどもを皆殺しにして、松田を追う。

この作品のスタッフは凄い。意気込みが凄かったことが解る。

監督はブレードランナーやエイリアンを撮った後のリドリー・スコット、主演は、ナイルの宝石の後のマイケル・ダグラス、共演はアンタッチャブルの後のアンディ・ガルシア、撮影も名手。ほとんどベストメンバーがそろっている。

かってない刑事の映画を作ろうとしたに違いない。

出来は非常に良かった。しかし、最高とは言い難かった。おそらくストーリーに問題があったのだろう。私なら、高倉健には死んでもらいます。主役のダグラスを引き立たせるためには、ぜひとも死んでもらう必要があった。

大阪市の許可を得るのが非常に大変だったらしい。夜中の商店街をバイクが暴走するシーンがあったが、普通の暴走族は商店街は走らないだろう。でも撮影できるのは、やはり閉ざされた商店街しかない。一般道では、許可が出ないし、撮影のメリハリが効かない。

ヤクザの手打ちの農園は、ハリウッド近郊で撮影されたらしい。日本人のエキストラ達も、大挙して行ったわけだ。懐かしい安岡力也や、ガッツ石松、内田裕也なんかも出演している。

そして、この作品は何と言っても松田優作の遺作である。

後年読んだところによると、当時の松田は膀胱がんのために血尿がひどくて死期を悟った状態だったらしい。

私達には、テレビでの彼の活躍のイメージがあるので、彼の演技には涙せざるを得ないが、外人にはどうだろうか?かえってビートたけしのほうが気味が悪くて迫力があるような感覚もあるのかも知れない。目をむいて凄むシーンでは、ちょっと彼らしくない印象も受けた。

もっと小柄な性格俳優でも良かったような気もする。外人ウケするのは、目がギョロっとした仲代達也などではないか?

役者には急逝する人が多い。たまたま目立つからなのか、何か無理をしているからか?確かに健康的な人では、見ても面白くない。

主役のマイケル・ダグラスの魅力は、ダイ・ハードの主役ほどはない。ワイルドで、金にも汚そうなタフなイメージを狙っていたようだが、例えば最近悪徳警官の役をやったデンゼル・ワシントンほどタフには見えない。

もっと悪役に近いほうが良かったのでは?ワルから暴力で金をむしりとるくらいの、ちょっと嫌悪感を抱かれるくらいのキャラクターでも良かったかも知れない。それくらいタフなら、頑張れるだろうという存在感も得られるのだ。

そして、もっと人情味も欲しかった。何かの優しいエピソードが欲しかった。

同僚は死なないといけない。犯人のワナにはまってか、誰かを救うために。そうしないと、話が盛り上らんでしょうが!したがって、ガルシアとともに、健さんにも死んでもらいます。

途中で出てくるケイト・キャプショーか健さんが人質に取られて、「さあ、俺を殺すか、こいつを殺すか?」なんて究極の選択を迫られる。また俺のせいで犠牲者が出るのか?・・悩むマイケル。すると健さんが自らを犠牲にして松田を倒す。健さんは苦しい息の下から、マイケルへの友情の言葉を最後に・・・なんて、涙が出そう。

その辺の設定の基本ができていなかった。でもアイディアは良かった。

爆撃の後の黒い雨が降った後には、目上の人に敬意を払わない連中が生まれてきた。あんたらの民主主義は、手に負えないなんてセリフは、確かにそうだなと思う。

ただ、そんなセリフがドラマには生きていない。セリフの謎かけが、ラストに明かされるようなシャレた演出もない。全体として、復讐の達成を目差すのか、ただ殺しまくるのか、逮捕するのか、流れを決めていなかったような気もする。

ラストで、松田優作が杭に貫かれて死ぬバージョンも撮影されたらしい。何かで見たことがある。はっきり決めてから撮影すべきだ。

この作品は、家族で観るのはいけない。残虐な犯罪者をカッコよくえがいているからだ。恋人と観るのは、多少は古いとしても、悪くないかも。

出来のいい作品だが、胸にしみるほどのドラマが欲しかった。

 

 

« 乱(1985) | トップページ | 蜘蛛巣城(1957) »