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2008年12月27日

天国と地獄(1663)

- 再映画化して欲しい    -

天国・・・それは、庶民の家々を眺めるような高台に位置する金持ち三船敏郎の家である。三船は苦労して会社の重役になったが、時代遅れの社長を追い出して、自分が社長になるために資金を集めていた。

地獄・・・それは、うだるように暑い中で、風通しの悪い部屋でうごめく貧乏人の下宿である。ある男が、金持ちの子供の誘拐を計画した。

ところが、金持ちの子供と間違えて、その家の運転手の子供をさらってしまった。あはは、なんてドジなんだ。金なんか出さないよー、と言いたい金持ちだが、妻や運転手の姿を見て、ついに金を払う決心をする。そのために、自分が会社を乗っ取ろうとしていたことがバレて、クビになってしまう。当然ながら破産である。

犯人は、協力者を使って列車の窓から現金を回収し、その協力者を薬で殺すことによって、行方をくらますことに成功する。捜査は難航する。しかし、いつもは三船に切られる役だった仲代達也が、今度は三船のために頑張る。

捜査線上に、一人の男が浮かんでくる。刑事たちは彼を監視し、証拠を探すが、証人は死んでいる。そこで、仲代はある計略を考え出す・・・

題材は、小説「キングの身代金」だそうだが、黒澤映画らしく、だいぶ脚色してある。この脚色の具合が、かなり思い切ったことをしているので、面白さが倍増したと思う。

当時の列車の中で、車内に電話があるのは少なかったそうだが、さらに窓を開けられる場所が限られていること、そんな細かいところが、映画のリアリティを高めていた。今なら携帯電話を使う犯人が多いが、携帯は足が付きやすいようだ。

犯人をあぶりだすために、かばんに細工をして燃やした時の煙に色が付くようにしてあることも、今ならダイオキシンの心配がある関係で、遠い焼却所に集められてしまうので、どこから来たごみかを特定するのが難しくなっていることもありえる。それに、犯人もバカじゃないから、わざわざ遠い町に行ってカバンを捨てるくらいの知恵は働くだろう。そうなると、どうするのか?

おそらく、今なら携帯電話と同じように微妙な電波を発信するチップなどをカバンに入れるのではないか?

天国と地獄のアイディアは、どこから出てきたのか?おそらく当時のインタビューを調べれば、どんな事件を題材にし、どう脚色したかが書いてあると思うが、今まで読んだことがない。逆に、この映画が誘拐のアイディアになったことは有名だ。

当時のインターンや医学生というのが、どんな生活をしていたのか興味あるが、もちろんエアコンはなかっただろう。薄汚い下宿部屋で、せいぜい扇風機があるかな?という程度の生活だったに違いない。でも、昔は皆がそうだったので、高台にそびえる金持ちの家に敵愾心を抱く人は、そんなには多くなかったと思う。

なにしろ、空襲や徴兵の心配はないし、社会は確実に豊かになっていくことが疑いないような時代であるから、今がいかに苦しい時期でも、多くの人は希望を持っていたのではないか?

今なら、この作品のような事件は自然である。怖いことだが、IT長者や株のカリスマディーラーが億単位の収入で六本木ヒルズに住まいしているいっぽうで、ワーキングプアな青年には、全く未来の展望もない。解決が難しい問題を抱え、苦悩でいっぱいの若者は多い。

そんな若者が主人公なら、話の現実味がある。

今の研修医は給料が保証されているので、結構な生活ができる。まさか誘拐を計画するはずはない。それに基本的に時間に追われる人が多いから、金を使う暇もないはず。メシ喰って寝るだけの生活がほとんどだ。

私達の給料はひどかった。保険料を引かれて、封筒を開けるとチャリーンとコインが出てきただけのこともある。笑うしかない。

やはり、フリーターが犯人として望ましい。今こそ、この映画は再映画化して欲しい。2007年にテレビではあったらしいが、見ていない。ぜひ犯人には、もっと計画的でタフな人になって欲しい。失業したトレーダー?パソコンオタク?何か、善意に満ちた仕事についていたが、理不尽な理由で自分の力を発揮できない人間がいい。

警察のウラをかき、最後まで逃げとおすのもいい。・・・・いや、もちろん映画の中ではだが。

この作品の主役は、三船ではないと思う。やはり金持ちには皆が同情するはずがない。仲代が最も活躍するので、彼が主役と言えるかも。山崎努は意識的に顔を伏せているようで表情が読みにくいが、存在感はたっぷりあった。

この作品、今の若い人が見ると仕草がオーバーすぎて笑われてしまうかも知れない。子供達が見るには、麻薬で人を殺す場面があるので、あんまり好ましくないと思うが、今のテレビはもっと激しい殺人シーンを平気で放送しているから、別に構わないかも知れない。

作品としては、いろんなアイディアで脚色した冒険精神が感じられて、とても面白いと思う。しかし、煙に色を付けるなら、もうちょっと丁寧にできなかったのか?ひどすぎる。

家族で観ると、ちょっと問題がありそうな気もする。犯罪のアイディアを明かすような作品だからだ。恋人と観るのも、ちょっと古すぎて難しいかも。シリアスな場面で、「アハハ、古~い。」なんて笑うギャルもいるだろう。

間違って誘拐されなかった男の子は、フォーリーブスの江木俊夫だって知らなかったなあ。彼はマグマ大使には出ていたが、あんな小さい頃から芸能活動をしていたんだ。

 

 

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