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2008年11月26日

インサイドマン(2006)

- 才気におぼれた?-

ある銀行に強盗団が押し入る。彼らの要求は、脱出手段のジェット機を用意すること。人質が大勢囚われるが、彼らは携帯電話を奪われ、衣服を犯人達と区別がつかないものに替えさせられる。

銀行は警官隊に包囲され、犯人が出てこれる可能性はほとんどない状況のはず。だが、犯人は「自分は正面から出て行くだろう。」と自信を示す。この意味は?

犯人との交渉人は、デンゼル・ワシントン。タフでクール。徐々にではあるが犯人像を特定し、彼らの目的を探ろうとする。

銀行の創立者は、知らせを受けて弁護士を派遣する。貸し金庫に何か大事な物を隠していて、これを人目に見せたくないかららしい。弁護士ジョディ・フォスターは、勇敢にも銀行内に立ち入り、犯人と直接交渉するが、交渉は失敗する。

やがて警官隊が強行突入し、人質は無事に解放された。しかし、犯人が誰か解らない。全員マスクをして部屋ごとに分かれていたので、犯人と人質がごっちゃになっているのだ。

さて、デンゼル刑事の腕の見せ所だが・・・。

この作品は公開の時に大評判にはならなかったようだが、非常に面白かった。DVDで拝見。

きっと子供でも観れるとは思うが、やはり小さい子には向かない。犯罪者を悪者にはしていないから、大人しか観れないだろう。でも恋人といっしょに観るのは悪くないと思う。

途中で銀行内から出てきた犯人と人質を尋問するシーンが挿入されるので、一部の人には流れが解りにくいかもしれない。逆に一部の人には筋が解ってしまう。この挿入シーンは必要だったのか、効果的だったのか解らない。時間通りに事件の後で尋問しても良かったのではないか?

むしろ尋問のシーンを先にするのもいい。途中でお互いの話が食い違って、複雑になり誰も真相が解らなくなる、ちょうど「羅生門」スタイルの展開になって、当惑する刑事達の表情が単純に描かれても良かったような気がする。

あえて斬新な手法を取ったために、少し質を下げた可能性がある。

役者も一流どころ、監督もスパイク・リーで、相当な計算をして作った感じ。非常に細かい演出の工夫を感じた。冒頭のシーンの音楽やタイトルバックからして、随分と凝っていた。

たぶん脚本が素晴らしかったからだろう。傑作ができることを確信して作った意気込みが感じられる。才気のほとばしりを感じるが、何かインパクトに欠ける気がする。脚本は二人の人物が共同で書いたらしい。

クライブ・オーウェンは渋い役者である。この人と ヒュー・ジャックマンはキャラクターが多少かぶるところもある気がするが、オーウェンのほうがより暗い犯罪者的な感じが出る。冷静な犯人の人物像を上手く表現していた。

ジョディ・フォスターがキレモノ弁護士の役で出演していたが、ちょっと不自然だった。彼女はクールなインテリの役はあまりしたことがないような気がする。小柄なので、人間味にあふれた、どこか弱いけど頑張る役柄が合う。

デンゼル・ワシントンは今回もタフでクールな刑事役だった。いつもよりでしゃばらないように思った。この作品の主役はオーウェンであった。彼に皆が引きずられて初めて作品になる。だから、デンゼルが活躍しすぎてはいけなかったのだろう。

ウィレム・デフォーは脇役で、今回あまり大きな出番はなかった。この役は彼でなく、もっとゴリラみたいな役者でも良かったかも知れない。荒々しく突入するのが好きで、突入できないことを口惜しがると、冷静な犯人と対照的で面白かったのではないか?

でも、このままでも充分に楽しめる。

インパクトが足りないと感じた理由は、なぜオーウェインが犯行を決意したのかが伝わらなかったことだ。過去に、ぜひとも秘密を暴きたいと願う何かがないと、物語の重みが失せる。

死人が出なかったことで、悲劇になっていないことも影響しているかも知れない。この展開なら、絶対に誰かが何かを犠牲にして死ぬべきではないか?ラストで涙がないわけにはいかないのだ。

いくら才気があっても、涙を誘う単純な手管がないと話にならない。才気におぼれてはいけないってことさ。

 

 

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