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2008年11月18日

用心棒(1961)

- シュールだが娯楽性充分 -

荒野にたたずむ素浪人の三船敏郎は、行く当てのない旅をしていたが、ある町に到着する。この町では、酒屋と女郎屋の二大勢力が、それぞれヤクザと連携して町の覇権を狙っている。

そのため町は殺し合いが絶えず、人間の手をくわえた犬がトコトコ走る有様。喜んでいるのは棺桶屋だけ。

酒屋の主人は、ある女を囲っていて、この女の子供と夫は彼女に会うことを禁じられている。子供の泣き声が響く。

この様を観ていた素浪人は、何を考えたか自分を用心棒として双方に売り込みに行く。チンピラを鮮やかな腕で切って見せて、自分を高く売り込むことに成功する。

双方が決戦をするように仕向け、一気に勝敗をつけようと画策したものの、役人が到着する知らせが入って、計画は失敗。さらに拳銃を持った仲代達也が登場して、事態はさらにやっかいなことになる。

三船は、囲われ女が襲われたように見せかけて、女の家族を脱出させることに成功するが、仲代に見破られ、刀を奪われてリンチされる。

かろうじて逃げ出した三船は墓場近くの小屋で体力の回復を待つが、その間に仲代達一味は敵に総攻撃をかけ、町を占拠する。もはや勝負あり。仲代達の天下である。

そこへ、三船がふらりと登場する。大勢のヤクザものが待ち構える中へ歩み寄る。銃を構える仲代の前にテクテク近づいていく。何を考えているのか?・・・・

この映画は、ほとんど覚えてしまうくらい何度も観た。私だけではないだろう。「荒野の用心棒」を始めとして、別の様々な映画で繰り返し真似されたことから解るように、設定が冴えている名作だからだ。

主役の三船のクールなキャラクターが秀逸だった。あの歩き方は、絶対に戦後のヤクザものをイメージしている。戦争の影響で、すさんだアプレゲール達のヤケクソじみた仕草を思わせる。でも、その中にヒーローの要素がある。母子を助けるからだ。

ただし、殺しを厭わない。大量殺人をあっさりやってしまう。もちろん相手はヤクザ者なんだが、彼らにも親や子供がいるだろうに・・・。

自分の行き先は、放り投げた木の枝で決める。最初も、そして最後も。目的を持って生きるなんて、全く考えてない。

そして、一匹狼である。ともに戦おうなんて、情けないことは言わない。正義がどうのこうの、法律がどうのこうのなんて気にしない。役人や警察にも期待しない。自らの能力に自信を持っている。いや~、カッコいい。

この主人公をモデルにした作品は多いが、三船が最もシュールであったと思う。

さらに仲代達也が良かった。三船のこれまでの相手役は、ちょっと迫力に欠ける人物が多かったが、この仲代は目が違った。とことん冷酷な油断ならない相手で、腕力より頭で勝負するタイプの、実にいやらしい敵の雰囲気をバッチリ出していた。

結果的に、ほとんどの登場人物が殺されてしまうというシュールな結末も良かった。製作者達のクールな視点が作品を単なるチャンバラ映画から、ほとんど娯楽のレベルを超えるまでに上げていた。

子供が喜ぶ映画では、主人公が仲間から賞賛されながら話が終わるはずである。誰も喜んでない中を去っていくなんて、絶対に良からぬ影響がありそうな展開である。自分勝手な人間を賞賛しているかのようだ。

母子を助けなければ、許しがたい殺し屋にすぎないんだが・・。でも、クール。

脚本家達が共同して、いろんな案を出し合って作ったのだろうが、アイディアだけでも凄いものだった。

カメラワークも、オタク達が練りに練って作っているから、いちいち手が込んでいた。

仲代が登場して拳銃を撃つ場面では、実際には弾を節約しないとおかしいのだが、何発も鐘を撃って力を誇示する。それを、「厄介なのが現れた。」と三船が苦々しく見ながら板窓を閉じていたが、観客も同じ思いを抱かざるを得ない演出だった。

なんで、同じような演出を、晩年にもやらなかったんだろうか?アイディアが枯渇したんだろうか? スタッフがアイディアを出しづらい雰囲気になったのだろうか? 大いなる謎である。

ユーモアも織り込まれていた。加藤大助のマヌケな会話、女郎屋の女達の化粧と踊り、女がそろってブサイクで三船がゲンナリする顔、名前は?「う~ん、そうだな桑畑~三十郎かな?」なんて、人を喰った話。

アイディアと、キャラクター設定、展開の仕方、強敵の登場、そして結末、去っていくシーンなど、全て完璧な出来。惜しむらくは、音声が聞きづらいことと、若干映像の解像度も落ちていることか?デジタル処理で音だけでも良くなればいいんだが・・。

作品の内容はともかく、出来が良いので家族と観ても良いと思う。ただし、オススメとは言い難い。教育上はマズイ。恋人と観るのは構わないが、音声が良い状況でないといけない。古いだけで敬遠する人には無理。

 

 

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