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2008年10月 6日

ミスター・ロバーツ(1955)

- ジャックが主役  -

戦場から離れ、南海で補給のために停泊する輸送船が舞台。狭い甲板における人間模様が話の中心。

当然、敵は日本軍である。にっくきパールハーバーの仇に対して主人公のロバートを始めとして、戦意に燃える乗務員は多い。しかし、輸送船の船長は自分のキャリアを優先し、勝手な行動を認めない。船内には不満がつのっている。ウサ晴らしに船を下りたいが、艦長はそれを取引材料にする。

ロバート副官は、船長と対立しながら実質的に艦を切り盛りしている。軍の上層部に前線への転属願いを出しているが、艦長から邪魔されている。官僚的な手段でイジワルをしてくる。

船員の彼に対する同情は強くなる。そして、ついにロバートは戦地に配属されることになった。彼の後任は、情けないほどへこへこした男で、艦長の言いなり。乗務員達はガッカリし、後任の男も自分への皆の気持ちを感じ取っている。

ロバートから船員に手紙が届く。さあ、戦地での活躍はいかがなものか・・。

この映画の魅力を上げていたのは、ジャック・レモンだったような気がする。乗船以来、会わないように努力してきたため、「あれ?君は誰だっけ?」と艦長に言われるのも笑わせる。船の一室を泡だらけにして破壊してしまうエピソードも、いかにも彼らしい。彼がいないと寂しい、そんな気にさせる魅力的人物だった。

明らかに舞台劇を映画化したと解る設定。舞台ではジャック・レモンは出演していないはずなので、もっぱらヘンリー・フォンダの魅力によるヒットだったことになるが、そんなに魅力的なんだろうか?フォンダの魅力がかすむほど、ジャック・レモンはおかしい。

舞台の臭いが強すぎる。せっかくだから、映画式の臨場感を最大限に生かすため、横に登場人物が並ばないようにしても良かったかも。カメラの位置に問題があったかも知れない。例えば、看護婦の部屋を誰が覗くかでもめている時は、右往左往が解る頭の上からの視点も面白かったかも。

映画の題材になっていたのは組織における人間関係であった。会社でもそうだが、軍隊でも厳しい規則ゆえに人によって対立やへつらいなどの様々な反応が起こり、子供じみた様相を呈する。

強情を張る上司や、媚へつらい、主に人事異動の形をとった無茶な罰則が堂々と行われる。精神的に子供だからこそ恥ずかしげもなく、そんなことができるのである。

艦長は尊大で陰険な人物。このような人間は、軍隊に限らずよくいる。集団全体の利益より、自分が集団の中で優位な立場に立つことを優先するので、長期的には集団の利益を損なう傾向がある。自分の意見が通らずに「しめしが付かない」ことを恐れるので、駄々っ子のような言動をとる。

出世する人には、規律優先で危険を犯さないタイプの人物が多いが、規則が多い集団では規則を守れなければ排除されるので、当然そうなってくる。「規則はそうでも、実態がこうだから・・・」などと臨機応変に対応する人物は足元をすくわれる。

しかし、本当に臨機応変の対応が必要な場合には、規律を優先する人物が指揮する集団は危機に陥るのが当然である。

規律が必要ないと言っているわけでは、もちろんない。いかに団体が一致した行動をするかが優先される状況では、迷いなく規則に従わなければ危ない。

プロ野球チームの成績を見ていると面白いが、自主性に任せて良い成績をおさめるチームがあるかと思えば、管理野球で優勝するチームもあり、同じチームが数年後には成績が低迷し、フロントと現場の意見対立が取りざたされることも少なくない。

その時の対戦相手の戦力や戦術、自分のチームの故障者の割合、選手達の意識など、いろんな要素がうまく回転すればどんなチーム形態であっても良い成績につながるが、なかなか常勝の球団はないものである。

構成員の戦意は重要である。それを無視するような司令官は、上司の資格がない。この映画の艦長が、やしの木を大事に育てるのが趣味というのは笑えたが、あれは作者の艦長に対する軽蔑を表した象徴だろう。

部下に不当に厳しく、必要もないことで罰を申し渡し、規則で乗組員を縛るような手法は、自らの立場を優先する人物の常套手段だ。軍の全体や個々の兵隊の利益を優先させれば、自ずとロバート氏のような対応になっていくものだ。

喜劇を見ながら組織学を考えるなんて、俺はおかしいぜ。

正しくは、ジャック・レモンのトンチキな言動に笑い、ロバーツ氏に同情しながら楽しむことだ。ギャグは古く大人向きだが、家族とでも恋人とでも観れる。ただし、小さい子には向かないと思う。

 

 

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