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2008年9月10日

キングダム(2007)

- 営業を考えるべき  -

某国の外国人居留地が爆破される。念の入ったことに、いったん居留地の運動場に侵入し、銃を乱射して怪我人を多数発生させ、警察や捜査員が集まったところで大きな爆弾を爆発させるという計画的な犯行。

捜査員の仲間は復讐を誓う。犯人グループは、この地区に潜むイスラム武装勢力と思われるが、正体が解らない。

国際紛争に発展するのを危惧する上層部を押し切って、ジェイミー・フォックス率いる捜査隊が現地に飛ぶ。ただし、捜査の主体は現地の警察という制限がつき、フォックスはイライラする。

優秀な現地警察官らの協力を得たフォックスらは、敵の武器製造所らしき建物を発見するが、仲間の捜査官が誘拐されてしまう。きっとビデオを撮られながら処刑される。

フォックスらは武装して乗り込む。激しい銃撃戦が始まる。敵の親玉を発見できるのか?

この作品の公開の頃は、まったくと言って良いほど話題にならなかったが、ビデオの予告編につられて観たところ、かなりの佳作だと思った。

まず良かったのは、イスラム武装勢力の指導者と、主人公が小声で話す言葉が同じセリフであったことだ。アメリカとイスラム過激派は実際にも、こんなやり取りをしているに違いない。いっぽうの視点で描かないというのは、営業面を考えるとマイナスだが、恐れずにやっていることに敬意を表したい。

銃撃戦もよくできていた。実際には上から狙われた主人公達のほうがやられていたはずだが、なぜかゲリラ達のほうが弱かった。このへんは出来過ぎだった。

サウジアラビアの警察官の扱いが、いつもに比べて高かった。もしかして、アラブ圏の有名俳優が演じていたのかも知れないが、アメリカの映画では異例のことだった。アラブ人は全部ヒトデナシの暗殺者みたいな描き方をすることが多いのに。

この作品は、金も相当かかっている。爆発のシーンは合成してあったと思うが、爆破現場の壊れたビルの残骸などのセットは相当大がかりで、エキストラの数も少なくはなかった。結構な大作であったはずだ。その割りに、あんまり宣伝していなかったような気がするが・・。

「ステルス」「マイアミ・バイス」など、今まではサブキャップ的な登場をしていたジェイミー・フォックスが、今回は完全に中心になって白人を従えて活躍していた。

黒人のタフな兵隊と言えば、体格から言ってウイル・スミスで決まりだったのに、最近はフォックスも進出してきている。でも動きの良さ、迫力などはイマイチという感じ。本来、彼はアクション・ヒーローではないはず。だれか、タフな白人を主人公にしたほうが無難だったかも知れない。

女捜査員は活躍していたが、ちょっと色気が足りなかった。スタイルは良かったが、顔もたくましかった。演技力は必要ないので、アクションができるセクシー女優の出番だったはずである。それこそ、ジェシカ・ビールなんか良かったろうに。

実際の捜査では、警察官が兵隊みたいに戦うことは、そんなにないと思う。敵の兵士がいる地域に入るには、警察ではなく兵隊でないと話にならない。この作品では捜査員が銃撃戦を戦っていたが、普通ならあっさりロケット弾で吹っ飛ばされていたはずである。武器の扱いに関しては、FBIや警察官よりも、敵のゲリラのほうが訓練しているに違いない。

冒頭で、欧米とアラブの石油をめぐる歴史が解説されていたが、普通なら映画であんな歴史の授業をするようなマネはしない。観客に笑われてしまうからだ。そういった姿勢が真面目すぎるところが、大ヒットしなかった理由じゃないか?

タイトルもいただけなかった。もっと訴えるようなのはなかったのか?

ゲリラがバラバラになるのに喝采をするアメリカ国民が多いのが現実であるので、憎たらしい敵を派手にやっつけるシーンが必要だったのかも知れない。老人を殺してもダメ。もっと憎憎しげな顔をしていないと。

どうせやるなら、敵の少年達が次々殺され、味方も次々殺され、信頼していた警察官には裏切られ、自爆テロでほとんどの出演者が消えてなくなるような、むなしいストーリーでも良かったかも知れない。少年が犠牲になる映画は、きっと悲惨さの極みが描かれることだろう。

営業優先で、ヒーローの活躍を描くか、もしくはリアルな殺し合いを描くか、どっちかにしぼるべきだったと思う。

 

 

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