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2008年9月26日

プロヴァンスの贈り物(2006)

- 惜しい! -

イギリスの証券会社で辣腕を振るう主人公のラッセル・クロウは、かって少年時代に好きだった叔父さんとフランスのプロヴァンス地方で過ごしたことがある。叔父さんは名門ワインのシャトーを持ち、優雅に暮らしていたが突然亡くなってしまう。

遺産の処理のために休暇を取ってシャトーを訪れた主人公は、いつものキレモノらしくない失敗が続きシャトーを処分することに失敗し、しばらくシャトーで暮らさざるをえなくなる。その間に彼の生き方を変える出会いが待っていた。

この作品は大変な魅力を秘めているような印象を持った。結果としては名作にはなっていなかったようだが、おそらく作品のコンセプトを練り上げる時点で何かを間違ってしまったのではないかと考えた。

雰囲気は悪くなかった。

まず、風景が良かった。西ヨーロッパの国々を飛行機やバスの中から眺めると、国中が公園のような感じがするが、この映画の中の風景も非常に美しく、のどかであった。きっと欧米人が見ると、心の原風景のような効果をもたらすのではないか?と、想像する。

役者達も悪くなかった。特にマリオン・コティアールが魅力的だった。「ピアフ」を演じた女優と同一人物とはとても思えない。「ピアフ」では小柄で猫背の女のように見えたが、この作品ではスタイルのいい結構大柄の女性のように見える。演技とメイキャップで、こんなに印象が変るのには驚く。

気性が激しそうなキャラクター設定も良かった。あのような女性に、なぜか男は魅力を感じるのである。全く自我がないような、大人しい女性にも、それなりの強さや思慮深さがあるのだろうが、映画でそんな女性が出ても面白くない。

キスをしながらの表情が特に良かった。ただ、うっとりとしているのではなく、悲しげな表情を浮かべていた。きっと観客の印象を綿密に計算してキスしていたのだろう。計算高くて何か怖いけど、ただものではない。

ブドウ畠を管理する農夫夫妻も良かった。二人とも雰囲気が良かった。友人や同僚役も存在感があって良かった。

ただし、彼らのキャラクターは不自然だと思った。農夫の場合は、通常なら主人公と仲良くなる必要はない。終始不機嫌で、頑固に畠を管理しているほうがストーリーに合致している。仲良くテニスをするような体型でもない。せっかくテニスをするなら、体型に似合わず猛者で、主人公を一方的にやっつけてニコリともしないほうが面白かった。

さらに、主人公を家に招いて歓談するのはおかしい。しかめっ面を貫いて、女房からたしなめられるほうが自然である。

主人公とケンカし、意見をぶつけて、その結果で主人公が得るものがあったり、考えを変えたというのがオーソドックスな流れであったはずだが、この作品では違った味付けを狙っていたようだ。たぶん、ほんわかとユーモラスな路線であったのだろう。

軽いユーモアのあるシーンは多かった。ちょっぴりセクシーなシーンもサービスで付けてあった。どれも悪いシーンではなかったが、主人公のキャラクターには合っていなかった。

生き方を描く作品では、主人公には反省~挫折~後悔などのエピソードがないと真実味が薄れる。美しいマドモアゼルが登場しただけで生き方を変えるほどの情熱家ならコメディータッチも良いが、この作品の主人公はそうではなかった。キャラクターと展開がマッチしていなかった。

せっかくフランスを舞台にするなら、何か主人公が後悔し、叔父か農夫に謝るようなエピソードがあっても良かったのではないかと思った。また、叔父の娘役の出現にどんな意味があったのかも曖昧であった。

コメディ路線が狙いなら、主人公はもっと失敗を繰り返すべきではなかったか?トレードの専門家が農園生活をすれば、失敗のネタはたくさんありそうなものである。

さらに、主人公はラッセル・クロウで良かったのだろうか?キャラクターとしてマッチしていたのだろうか?こんな役はトム・クルーズの独壇場だと思っていたが・・。当時のラッセル・クロウは実生活のトラブルが報道されていたので、監督に頼んで挽回を狙ったのか?

スマートで冷徹と表現されるような俳優が、徐々に人間らしい表情に変るほうが自然だったと思う。ラッセル・クロウはタフなイメージがあるが、冷徹とは言えないような気がする。

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