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2008年9月 5日

ビフォア・サンセット(2003)

Photo_3 - リアルな会話の素晴らしさ  -

かって一晩かぎりのデートの後、半年後の再会を約束していた男女。結局、半年後には再会しなかったらしいが、なぜか?

そして後年、男のほうは想い出を本にして出版。その宣伝のために訪れたパリで、彼は問題の女性と再会する。

「なぜ、あの時来なかったの?」「その後どうしてる?付き合ってる人はいるの?」二人の会話が進む。

会話をしながらカフェに行く、ボートに乗る。その会話が、この映画の中心である。激しい乱闘や、泣き叫ぶ言い合いもない。本当にそれだけ。

前作のビフォア・サンライズは素晴らしく雰囲気の良い作品だった。すぐに続編を作る話もあったらしいが、監督、俳優達の意向もあって9年後に延びたらしい。これは正しい判断だったと思う。

すぐに2作目を作っていたら、きっと半年後に主役の二人が出会う場面から始めないといけないだろう。もしくは待ち合わせに現れなくて、どうしたのか?と探すストーリーになってしまう。すると、二人の会話が魅力の作品なので、その性格が変ってしまう。

今回のビフォア・サンセットも会話は相変らず素晴らしかった。カメラワークも良かった。前回と同じく、二人の移動に合わせて付かず離れずのアングルで延々と二人の表情を追っていた。

ラストが随分と変っていた。尻切れトンボの印象を受けた。どう終わるかについて、きっとスタッフで綿密に話しあったはずなのだが、女が変な踊りで悦にいるところで終わってしまった。さりげなさを演出できてはいたが、この作品では女性の観客が納得できるような終わり方、すなわち抱擁かキスが必要だったと思う。

それでも、この作品は30代以上の女性にはオススメ。子供には向かない。家族で観るのもダメ。恋人に見せるのはいいかも知れないが。あんまり若いカップルではどうか・・・?

解説によれば、女優さんも脚本を書いたらしい。そのためか、思いつきながらいろんなテーマを話していく話の移り変わりが実に自然だった。日本人のカップルも、そんなに変らない話をしているのではないか?

前作との違いは、女性のほうが恋愛の失敗を繰り返して、自分の人生に苛立っている部分が目立ったことだろうか?

彼女は会話の途中で、前作での二人の出会いがあまりにロマンティックであったために、その後の出会いが色あせてしまったことを半分怒っていた。今の自分の恋愛が上手くいかないのは、あなたのせいだ!ということを言う。確かに、そんな影響はありそうな気もする。

もしも映画のラストで、にこやかに話していた彼女が急に真剣な顔になって、「私が今の恋愛に満足できないのは、あの時の出会いが素晴らし過ぎたからよ!どう責任をとるのよ。出会わなければ良かったのに!」などと号泣していたら、盛り上がっていたかも知れない。作品の方向がちょっと変ってしまうが、二人の感情の交錯は、より深いものになったかも知れない。この会話は途中ではなく、ラストが良かったかも。

私の場合、若い頃の恋愛は片思いの連続で盛り上ることもなく、ロマンティックな思い出なんか皆目なく、故にこのような事態に陥る心配もなかった。だが、恋愛にあまり期待しないという意味では後遺症があったのかも知れない。

あまり考えずに今の女房といっしょになってしまったが、相手は周到な計算をしていたらしいのに対して、私は誰でもいいくらいの諦めの境地だった関係で、「私と結婚してくれるような有り難い人には親切にしなきゃ。」って、優しくしてしまった。これが今日の悲劇を生んでいる。

結婚は我慢なくしては成立しないと思うが、一方的に我慢するのにも疲れてきた・・。家内も自分はすごく我慢していると言うが、「じゃあ、何を我慢しているの?」と聞いてみると、海外旅行に行かないこと、ブランド品を買わないこと、外車に乗らないことなんだって。私は自分のパンツを買うのも我慢しているのに・・。

もし映画の二人が半年後に再会していたら、どうなったろうか?二人も話していたが、おそらく女のほうには未だやってみたいことがあって、すぐに恋人としていっしょに暮らす、あるいは早めに結婚するようなことは望まなかったのではないか?

そして、もし早く結婚したりしていたら、きっと倦怠期に入って後悔したりしている可能性もある。「もっと若いうちは、いろんなことをしておきたかった。」と、大抵の人は思いながら結婚していくと思う。

それはさておき、映画の中のイーサン・ホークの家庭も、あんまりうまくいってはいないようだった。結婚はしたものの、義務感で維持しているという状態で、なーんだ全く私と同じじゃないの。なんだか嬉しくなってきた。素晴らしくロマンティックな出会いができる男でも、結婚生活が順調とは限らないらしい。

とにかく、作品中の二人の会話が素晴らしかった。実に自然で、慣れ慣れし過ぎず、お互いに好意を抱きつつ、時には感情的になって相手を責めるが、長くは続かせない。会話の手本のような感じがした。

私が昔の彼女と話したら、けっしてこうはいかない。視線をそらされて、嫌悪感いっぱいの冷たい表情をされて、会話すらないだろう。その辺の違いが口惜しい。

イーサン・ホークの表情、目線を参考に、恋愛をする機会があれば、こんどこそは決めてみたい。そんなチャンスがあればね・・・。

 

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