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2008年9月28日

マルタの鷹(1941)

Photo_2 - タフガイ登場! -

もはや古典となった作品。監督ジョン・ヒューストンのデビュー作らしい。

主人公ハンフリー・ボガードの私立探偵事務所に、美女の客が訪れ、仕事を依頼する。自分の妹をさらった男を尾行して欲しいというもの。ところが、事務所のスタッフは殺され、尾行しようとしていた人物も遺体で発見される。当然、ボガードに嫌疑が回ってくる。

ボガードの周りに刑事や、怪しい見張りの男が出没し、彼の出歩くところを尾行してくる。ある日、彼の事務所に銃を突きつけて探しものをする人物が現れる。彼と、先の美女、そして妖しい尾行者は、どうやら太った黒幕の人物の一味であり、何かの品物を手に入れようとして仲たがいしたらしいと解る。

問題の品物はタカの置物らしい。

徐々に明らかになってくるストーリーを追うボガードだが、敵もなかなかのクセモノで、睡眠薬を使って眠らされている間に、また一人の犠牲者が出る。その男は問題のタカの像を持って探偵事務所に倒れこんで、そのまま息絶えてしまう。しかしボガードがブツを手に入れて、優位な立場に立ったわけである。

黒幕のデブと、尾行者、探し物の男、そして美女とボガードの面子がそろって、腹を探り合った交渉の後、ついに問題のブツが届く。また誰かうらぎるんじゃないかと心配しながら、置物の確認が始まる・・。

ウソをいかに暴いていくか、鮮やかなボガード探偵の振る舞いを描いて見事だった。ハードボイルドタッチの教科書になったというのも解る気がする。

この作品の主役のサム・スペードは、時々ニヤっと笑うタフガイスタイルの典型だった。にこりともしないゴルゴ13スタイルは、むしろ東洋的にクールなタフガイで、非典型例である。少なくとも最近までは、時には下品に歯を見せるほうがカッコよかった。

頭の回転が早く、手際が良いことがタフガイの条件である。ちゃんと早めに電話して段取りをすませるなど、一流の企業戦士ばりの活躍であった。

もちろん腕っ節も必要である。一発で相手を気絶させる圧倒的な腕力がないといけない。なぜいけないかと言うと、その間に相手の持ち物を探ったり、場面を代えないと映画の段取りに支障が出るからだ。実際には、それだけの腕力で殴ったら、簡単に意識がもどるはずはない。

ボクシングの試合を見ていると解るが、激しいパンチの後は意識朦朧となってしまうが、眼は開いてることが多い。完全に意識を失うほどの打撃を何回かやってれば、きっと頭蓋内出血で殺人になって、刑務所にいかないといけない。

妖しい訪問者の1号、謎の美女も良かった。しおらしい淑女から、ずる賢い悪女、時には妖艶な情婦まで演じ分けていた。やっぱ、女は状況に応じて表情を変えるから怖いんだよなと、心から思った。思ったが、もう遅い。せめて今度結婚する時は気をつけよう。

次の訪問者も怪しかった。小柄で、気味の悪い話し方をするところが実に妖しい。性格俳優の役割を充分に認識した役者だった。セリフの微妙な部分は解らなかったが、おそらく粘着気質みたいな独特の表現がされていたのではないだろうか?

そして、デブの登場である。

このデブ、頭が回ることが話し振りでよく解った。カサブランカでも黒幕役で登場していたが、話し方、仕草で抜け目のなさが解る上手い演技だった。日本には、あんな役者は少ない。顔の怖い悪役はたくさんいるが、愛嬌があって凄みを必要としない悪役は少ない。

苦労が無駄に終わった時に、ショックで倒れるのか?と思わせる仕草だった。あんな動きをされたら、見ている人は「あっ、きっと気を失うんだ。」と、勘違いして注目する。注目させるには最適の演技だった。

役者がそろった印象が強いが、おそらく各々の役者の比重の置き方が適切で、個性をうまく表現できているからだろう。これに対して、この作品より後に作られたハードボイルドタッチのテレビドラマの多くは、主人公のカッコづけや、犯人の個性の特殊さの表現に注意がいってしまって、バランス的に問題のある作品が多い。

・・・と、批評するのは簡単だが、撮影している時や編集の最中にバランスまで考えるのは容易なことではない。傑作を作った監督が、続いてよい作品を作り続けているとは限らないから、たぶん偶然の要素が大きいのかも知れない。

あまり頻繁に場面が変ると視聴者に嫌われることも多いが、この作品はそんな心配もなさそうである。登場人物が頻回に失神して、その度に場面がスピーディーに変る作品もあるが、加減をしないと効果が薄れる。そういった節度も、この作品はわきまえていた。

非常に画が古いので、子供にも若い人にも向かない作品だが、映画好きなら年齢に関係なく楽しめそう。恋人に見せるのは、あまり得策ではないと思う。その辺をわきまえないと、君もタフガイにはなれないよ・・・って、今はタフガイは流行らないんだけど・・。

 

 

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