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2008年8月 3日

激突!(1971)

- 本当にテレビ用   -

ある男が、なにげなく前を行くトレーラーを追い越した。本当になにげなく。ところが、そのトレーラーの運転手の機嫌を損ねてしまったようで、しつこく追跡されて、車をぶつけてこられる羽目になってしまう。主人公も機転を効かせて、ドライブインに逃げ込んだり、脇道に隠れたり、いろいろ工夫をするのだが、しつこく追ってくる顔の見えないトレーラーの運転手。主人公は、ある決意をする・・。

この映画は、なにげなくテレビで観た。相当に暇だったから観れたのだろう。特に何の意識もなく、退屈しのぎだけの意味だった。後年、スピルバーグ監督が次々と大作を作る監督になることを知ったが、観た時は「だから何が言いたいんだ?」というのが、正直な印象だった。

特別な傑作、優れた演出とは全然思わなかったが、確かにアラはないし、タンクローリーの運転手が最後までどんなヤツか解らないのは考えたなあと思った。しかし、それは珍しいことではない。当時、日本のマンガでも、結局何者か解らない悪役が襲ってくるストーリーはあった。何をもって監督が注目されたのか、よく解らない。

もともとのタイトルは、決闘とか勝負といった意味であるから、車に襲われる恐怖よりも、主人公が策を練る最後の勝負のほうが近い。でも、我々の感覚では、「ハイウェイの恐怖」「暴走トラック」といった表現のほうが、描かれた内容には近かった。ただし、こんなタイトルでは誰も見てくれないかも知れない。

緊迫感は確かにあった。そして、いかにも現実に起こりそうなことであった。

私でも危険運転をされた直後はカッと来て、クラクションを鳴らしたり、ライトを点灯させて注意したりすることはある。でも、ぶつけたりはできない。自分の車もそんなに丈夫ではないからだ。イジワルして仕返しでもされたら、車ごとふっとばされる。

トラックに乗ってるやつらは、頻繁に幅寄せして来るが、あれは非常に怖い。相手のほうが車が頑丈だから、たぶん偉くなったような感覚なんだろう。夜中に一本道で、90キロくらいのスピードでお尻をピッタリ追いかけられた時は、本当に死ぬかと思った。あの恐怖を映像化すればイケルと考えたのではないか?

実際、恐怖感をうまく演出していた。単調になりがちなカーチェイスの話を、様々なエピソードで色づけしてあった。実際は、ハイウェイから逃れることは簡単なはずだが、そうしていないことに違和感を感じにくくする、ちょっとした工夫を散らばせていた。

しかし、結局は暇な午後に見るための、何のテーマも内容もない乾いた感じの物語を、実験的に作ったという印象がする。テレビ映画として、この作品は色んなことが適切だったが、本来劇場向きではない。

予算も大して使っている様子はない。トラックを1台壊してしまったが、たぶん廃棄寸前のやつだろうから、テレビの予算で何とかなったのだろう。日本のドラマでも結構派手にやってるが、後の処理はどうしてるんだろうか?片付け費用が心配だが・・。

店に入って、犯人が誰なのかを探る場面があったが、あれもロケであろう。セットをわざわざ作るほどのことはない。そして、犯人と間違って別な車にいたずらをしてしまうエピソードも、いかにもありそうな話だった。他に金がかかりそうなシーンがあったろうか?

つまり、この時点では予算をかけずに、アラを出さずに緊迫感を出すことに徹するしかなかったのだろう。後年、高額の予算を使えるようになってから、本来の才能が表現できたわけだが、この作品で予算を使ってたら、「お前は二度と使わん!クビだ!」と、言われて映画界から干されてしまっていたかも知れない。

金の計算が、その後の活躍を決めたのだ。

本当の芸術家は、最初から芸術映画を目差して金のことは後回しになるので、製作者からそっぽを向かれるが、スピルバーグは計算もできるような気がする。最初からどう撮影するかが頭の中にイメージできるのかも知れない。すると、無駄なく適度に娯楽性を保った仕事ができる。

特別な表現、画期的な手法に比重を置かなければ、驚きも少ないが、失敗もない。考えてみれば、彼の作品はソツがないけど画期的とは言えないような気がする。クレバーすぎて、巨匠という雰囲気ではない。

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