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2008年6月18日

ベオウルフ(2007)

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- パフォーマンス・キャプチャーの使い方 ー

宣伝を見た時点では実写だと思っていたのに、作品冒頭のロビン・ライト・ペンの表情を見て、始めて合成画像であることに気がついた。なんという手間のかかることをしたんだろうか!

パフォーマンス・キャプチャー(動作補足、とでも言うべきか)という技法を用いて、役者の動作をCG映像化してあって、実に自然な動きながら実はマンガ的であるという、込み入った工程で作ってあったが、その技法により、実写で難しいアクションも簡単に表現できていた。

その反面、顔の表情には難点があった。したがって、現時点で、この技術を使うなら、動きが少ない場面では実写、動きが目にも止まらないくらいになる時はCGで、というのが現実的であり、ほとんどの映画ではそうやっている。

そうすべきだったと思う。

悲しむ王妃の顔は判読できたものの、やはり訴えかける力は実写ほどのレベルに達していない。そのうち実写を超えるようになる日も近いと思うが、まだ現時点では差がある。表情は大事だから、表情の表現が必要な場面では、実写でやるべきだろう。

逆に、マスクやマントなどで口を隠して、目だけで表現すれば観客が勝手に登場人物の気持ちを想像してくれるので、CGでも満足できる結果もありえる。隠すことも考えるべきだった。

この作品は人気がなかった。欧米では日本よりも客が多かったはずだが、それでも大ヒットにはならなかったらしい。原作は古い伝説みたいな話らしく、それを修道士達が詩にまとめたと書かれてあった。近年の映画では、有史以前の物語を設定することが多いが、この話は西暦500年くらい?だとかで、古代の話に比べて多少ロマンスに欠ける。そのへんも影響しているのか?特に日本人にとっては、特別親近感を持てる時代設定ではない。

ベオウルフが王になってから年を取るまでが省略されていたが、自分の呪いの重さや力の限界を知るためには、もうちょっとエピソードがあったほうが良くはなかったか?例えば、王子が何人か生まれるが、原因不明のまま次々と急死する。戦いに勝っても、次々と挑戦者が襲ってくる。王妃から疎まれる。繰り返し悪夢にうなされる等、いくらでもあるはずだ。それが主人公の苦しみを説明してくれると思う。

主人公の顔にも問題があった。いかにもタフそうではあったが、細目ではいけない。やはり目の力が必要であった。

いっそのこと、シュワルツネッガー知事にご登場いただいていたら、どうだったろうか?もちろん実際に演技する必要はなく、代役がアクションをして、キャラクターだけを借りるのである。そうしたらきっとヒットしていただろう。いくら大柄でも、ヒーローにはヒーローらしい顔が必要である。

バケモノの母親のアンジェリーナ・ジョリーが登場してくる場面は、とてもセクシーで良かった。素晴らしいシーンだと思う。シッポの動き方や誘惑することに注目すると、おそらくは悪魔をイメージしていた。あのシーンを最高に生かすためには、カメラの位置設定を、もうちょっと変化させるべきだったと思う。要するに、ポルノ映画のように撮影する感覚でいいのであるが、監督は一流の人なのでポルノ的な感覚が足りなかったのかも知れない。

ヘビのようにしなやかな身のこなしで主人公を誘惑し、度々夢の中に現れてくれれば、その魅力と怖さをさらに印象付けることができるはず。そういった段取りが不足していたのではないか?

キリスト教が拡がっていく途中の時代を設定してあったが、物語は宗教的なことを直接には訴えていなかった。強いて言えば、悪魔をイメージしたバケモノと契約した王に、王妃が嫌悪感を示していること、そして王達が自滅していくことが、反悪魔的なもの=宗教的なものであったとは言える。

悪魔やバケモノが、勇敢なヒーローの心のうちから生まれるというのは、確かにその通りであり、いたって真面目なテーマであった。教訓として、人は、あんまり英雄を目差してはいけないのである。

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