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2008年5月29日

パンズ・ラビリンス(2006)

Photo_2 - 芸術的価値が高い -

脚本が素晴らしかったのだろう。よく考えたものだと感心した。

ファシストとゲリラとの内戦の時代が背景になっていたのは、スペインならではの発想。その舞台と、ラビリンスの幻想を組み合わせるアイディアが、とにかくハイレベルであった。

日本でなら、空襲を逃れるための疎開先で、村の妖怪と仲良くなるという展開が可能だが、そういえば、そんな作品もあったような・・。母親の病気療養のために引っ越した親娘の物語なら、「となりのトトロ」もそうだったが。

現実と幻想が交互に展開し、幻想の世界の働きによって現実の展開が変化すると、不思議だなあという夢あふれる感覚にひたれる。

現実の場面が閉塞状況で不安感が強いほど、幻想の世界は華やかで、夢にあふれる。その対比が際立つという効果がある。この作品も狙い通り、非常に効果的だった。

現実は、母親が再婚する相手が将校で、村人を殺してまわる怖ろしい人物であるという耐え難い状況。ゲリラ達は追い詰められて、きっと全滅するだろうと思える。「なんとなく将来に対する不安」が覆った昭和初期のような閉塞感が基底にあって、それが少女の振る舞いによく出ていた。

将校が、実にあっさり村人を殺していく場面やリンチシーンがあるので、この作品は子供には見せないほうが良いと思う。家族で観たい幻想的なシーンもあるが、殺人のシーンも多いので、これは子供向きの映画ではなかった。恋人と観るのも、必ずしも勧められない。恋はテーマと関係ないようだから。

主人公の少女を案内する役割の精霊(?)の仕草が良かった。舞台芸によく見るような独特の雰囲気があった。仮面をつけて演技すると、自然とああなるのだろうか?例えば「ライオンキング」の舞台の役者達も、ほとんど手振りはおなじだったような気がする。

対照的な舞台が交互に展開されるのだが、その移り変わりが自然で、しかも互いに影響しあっている設定が素晴らしかった。また、各々の場面が不必要に長くならないようにまとめてあり、構成や編集のソツのなさを感じた。

将校役の俳優は、私の感覚では兵隊らしくなかった。兵隊は基本的には体力勝負なので、いかに上官といえども訓練の成果か、独特の動作の強さを持っているような気がするが、この将校は体がなまっていたような気がする。

音楽が印象に残らなかった。エンニオ・モリコーネか坂本龍一と交渉すべきだった。

結局のところ、スペイン内戦の勝者はフランコ派だったはずなので、この作品は例外的な展開になったことになる。史実に近いラストは、応援にかけつけた軍隊によってゲリラが全滅し、村人はみんな処刑されてしまって、少女も兵隊に蹴っ飛ばされて終わるという話になってしまうが、それではあまりに辛い。

映画的な、救いのあるラストだった。

 

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