映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主

  • 乙女座 AB型 どの占いでも最悪の運勢 内科クリニックやってます。

Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« デス・プルーフ(2007) | トップページ | 300(2007) »

2008年4月30日

エディット・ピアフ(2007)

Photo_3

- なぜかピアフ   -

愛の讃歌~エディット・ピアフとタイトルされていた。エディット・ピアフの映画は昔にもあった。テレビで観た記憶がある。下町の路地で歌うシーンは、やせた女の子が粗末な服を着た姿が悲しげでリアルだったことを思い出す。恋人ともタカリとも判別できないようなヤクザみたいな男達が彼女の才能に群がり、利用していた感じが分かる作品だった。実像に近いのは、たぶん昔の作品のほうではないか?

今回の2007年版は、ヤクザは出てこなかった。取り巻き連中は、みなが紳士として描かれていて、環境や人間関係についてはソフィスティケイティッドされた感じがした。両方ともイブ・モンタンなどの他の著名人は登場していなかった。なにか遺族に文句を言われる可能性もあったから削除されたのか?

ボクサーとの不倫にして純愛と言える話が中心であったが、純愛の姿がかわいらしかったので、話のレベルが上がる効果があった。ドロドロの別れ話や、恋愛遍歴は割愛して正解だった。本当がどうだったのかは知らないが、作品としては純愛が中心になったほうが盛り上るし、観客の印象も良くなったと思う。

大スターになってからのピアフは気まぐれで、ワガママな人物として表現されていたが、純愛のエピソードがあったために、なにかほほえましくさえ感じられた。ドロドロ話を除いた効果であろう。

今回のピアフは、よりリアルだった。小柄で、病的な姿を上手く表現できていた。主演の女優さんはマリオン・コティヤールという方だそうだが、アカデミー主演女優賞を取っていた。確かに価値のある演技ぶりだった。映像で見るときれいな女優さんで、映画とだいぶ違う。メーキャップも上手かったのだろう。

ボクサーの恋人との別れ話がクライマックスだったのかと思う。夢から覚めて、贈り物を探すシーンは、よく考えてあったが、唐突な印象も受けた。頭がおかしくなってから回想していくうちに夢と現実がごっちゃになっているという構成なら解るが、それまでと違う展開で、しかもこれっきりのでは、感心しない観客もいたかも。

技術の力のためか、歌声が実にクリアで、その場で歌っているかのように聞こえた。たぶん、過去の音源からシャープになるように音を処理していたのだろう。顔の向きや、役者の表情、手振りと一致するように、役者も技術者も根気良く作業したに違いない。

ピアフは日本の美空ひばりとオーバーラップするところが多い。国民的歌姫であり、家族関係、結婚などでは不幸であり、アルコールにおぼれて肝臓病が致命傷になったことなど、ほとんど同じ経過をたどっている。たぐい稀なる才能は、ストレスや精神的病気と同居する傾向があるのかも知れない。凡人にははかり知れない悩みがあったのかも。

愛の讃歌は、日本語で越地吹雪が歌った歌詞のほうが原曲より感動的だという話もある。原曲と表現内容が異なるらしい。いずれにせよ感動させる声、雰囲気を持つ曲である。

興味を持って代表曲集を聞いてみたことがあるが、「パリの空の下」など他の曲も良い雰囲気がある。アメリカ向けにリリー・マルレーンなんかを英語訳で歌っていたが、何か変な感じもあった。今ではあまりシャンソンは流行ではないが、訳のわからない一本調子の2流のラップミュージックよりは断然いいと思う。

なぜ、今ピアフを描こうと考えたのかが解らない。たまたま誰かが脚本を書いて、それが製作されただけなのだろうか?DVDには、そのへんの事情は書いてなかった。

デキの良い映画であったとは思うが、個人的には彼女がどうだったかには興味が薄いので、かってのシャンソン愛好家ほどには感動できなかった。対象が美空ひばりでも、たぶんそうである。尾崎豊なら、きっと違う。そういえば、尾崎の映画はありそうでないような気がする。

この映画は、家族で観ることは勧めない。たぶん、私と同じように子供が興味を示さないと思う。若い人達の多くも、たぶんそうかも知れないが、女の子には受けるかも。

« デス・プルーフ(2007) | トップページ | 300(2007) »