映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主

  • 乙女座 AB型 どの占いでも最悪の運勢 内科クリニックやってます。

Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« プラネット・テラー(2007) | トップページ | デス・プルーフ(2007) »

2008年4月26日

どですかでん(1970)

Photo_4 - さりげなさが・・  -

非常に前衛的な作品。演劇が好きな人にはたまらないほどの名作であろう。今見ても、斬新な点が多いように思う。したがって子供に見せるのは?恋人と見るのも?たぶん観ないほうがいい。

この作品は1970年、大阪万博の頃の公開で、確かに当時は太陽の塔のようなアナーキーな芸術が未来的なイメージで受け入れられていた時代。冒険も可能だった。

娯楽作品としては成立しえない性格の映画で、これを見て勇気が出る、またはスカッとするなーんてことは全く期待できない。したがって一回観れば、たいていの人は繰り返してまでは観ない。そんな作品は興行面を考えると、製作者なら遠慮したい。

この作品は「トラ・トラ・トラ」の後で、監督がピンチに時の作品だと聞いているが、なんでこの題材を選んだのか理解に苦しむ。娯楽時代劇を作るべきとは考えなかったのか?その感覚が、私のようなゲスと芸術家の違いかも。

登場人物が個性豊かで面白い。「どですかでん」と、言いながら電車の車掌になりきっているバカは最高だった。昔、近所に精神遅滞の人がいたが、彼を見るときに、からかいたくなるけど可哀そうという、あの感情を思い出してしまう。しかし、せっかくならもっと自然に演じてはどうだろうか。

乞食のくせに建てる家のことを延々と夢想し、相談している親子も非常に魅力的であった。悲劇的な結末を迎えるが、この父親役の表情は凄かった。

目をぎらっと見開いて放浪するかのように歩く姿は、黒澤監督の映画にはよく出てくる。「用心棒」でやられた店の店主、「影武者」で城から出てきた城主もそうだった。私としては、この映画の場合は演出過剰だと思う。この映画に限って言えば、もっとさりげない狂い方のほうが作品にマッチしたのではないか?芸術家としては、激しく訴えたかったのか?

能や歌舞伎の造詣が深いスタッフが作ると、どうしても演劇調で現実にはいないような人物像が出来上がるが、表現を重視するならそのほうがいいし、できればさりげないほうがいいが、意味がよく解らないままで終わる可能性もある。いずれが良いのかは、好みの問題だろう。

奈良岡朋子の演技にはマイッタ。彼女は最近までテレビドラマで同じような顔をして常に悩んでいた。当時から重荷をしょって演技していたとは!実にうまい悩み方、表情であった。彼女がはつらつとした娘であった時代を想像できない。

全体の色使いが激しかった。さすがにやりすぎではなかったか?カラー作品に慣れていなくて、遊びをしたかったのかも知れない。さりげなさが足りなかった。その意味で見方によっては、技術的に問題があったと言えるかも知れない。空の色は、監督自身が絵を塗ったと書かれていた。(図参照)

舞台が丘の上らしいところであったのは気になった。普通なら戦災で焼け野原になった下町を舞台に想定し、窪地にうごめく下層の人達を描くべきではないか?確かに高台にもスラムはありえるが、イメージとしては窪地のほうがゴミゴミしていてサマになる。

これだけの雑多な話をまとめ上げた手腕、脚本の練り方は凄い。テレビシリーズとして数十話できそうなくらい、たくさんの家族の、たくさんのドラマがあった。

 

« プラネット・テラー(2007) | トップページ | デス・プルーフ(2007) »